おもしろかったよ、小室さん

 おもしろかったですよ、とっても。小室等さん。

 ぼくにとっての小室さんといえば、まずは六文銭を率いて上条恒彦さんと「旅立ちの歌」を歌い、世界歌謡祭でグランプリを取ったフォーク・シンガー。そしていちばん印象に残っている歌は、NHKの「みんなの歌」でも繰り返し放映された「雨が空から降れば」。

 『人生を肯定するもの、それが音楽』(岩波新書)は、そんな小室さんによる「体験的音楽論」で、登場する人たちも多士済々。あっという間に読み進み、読み終えるのがもったいなくてわざと終章を翌日にとっておいたほどです。

 山形県人としてうれしかったのが、お隣・酒田市の鳥海小学校校歌の話と、白鷹町の音楽祭の話でした。

 はじめて知りました。鳥海小学校の校歌は谷川俊太郎+小室等コンビの作品だったんですね。豪華だけれど、これは依頼した方もエラい。普通の校歌になんてなるはずないのに、よくもまぁ……。

 楽譜まで掲載されてすっかり有名(?)になってしまったこの校歌。何ともうらやましいのは、歌詞の3番・4番が自前であること。谷川さんが書いたのは2番までの歌詞。その後は、谷川さん、〈めんどくさいから、みんなで勝手に作ってよ〉だって。で、「一九九八年四月に開校された、この鳥海小学校の校歌は、『作詞者が谷川俊太郎および先生と子供たち』という、ほかに例をみないユニークなものになったわけです」。やったネ。

 白鷹町で開かれた「アジア音楽祭 in 白鷹」でのエピソードもすばらしい。モンゴルのミュージシャンが農家の台所で奏でる馬頭琴の音色と、それをふすま越しに聴く「じいさん」が流す涙。その光景を思い描き、胸を熱くしない読者がいるでしょうか。(2004.05.04)

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