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がんと『運』その4

抗がん剤では治すことが難しい進行がんの状態でも、僕の体感では数百人に一人くらいの割合で、がんが治ってしまう方がおります。
抗がん剤治療を受けずに治った方には残念ながらまだお目にかかったことはございませんので、進行がんが治癒した方は抗がん剤治療が非常に良く効いたということになるかと思います。一方、残念ながら抗がん剤の効果が全く現れない方も時々いらっしゃいます。これら抗がん剤の効き方に、『運』の要素が大きく関与するのであれば、『運』を良くするためにできることは何かを複数回に分けて考えてきました。
4回目となる今回もどうぞよろしくお願いいたします。

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▼おさらい
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前回から少し間が開いてしまいましたため、忘れてしまった方も多いと思いますので
再度おさらいです。
『運』の方程式とは
幸運=(行動×多様+察知)×回復
とのことでした。
変数は、「行動」「多様」「察知」「回復」の4つです。
前回、「察知」だけで終わってしまいましたので、今回は4つめの「回復」について考えていきたいと思います。
では、どうぞよろしくお願いいたします。
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▼回復
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「回復」とは、失敗から立ち直る能力のことです。
挫折の痛みから速やかに抜け出し、再び新たなチャレンジに挑めるメンタリティと本文中には記載されています。
数式をみておわかりの通り、「回復」はとっても重要です。
何せこれまでみてきた「行動」「多様」「察知」全てにかけ算で作用するわけですから、回復が「2」になれば2倍、「3」になれば3倍、「100」になれば100倍になります。
逆に「回復」が「0」だと、どれだけ「行動」「多様」「察知」の値を増やしても、「0」になってしまいます。
一つの失敗でめげていたら、行動や多様を増やすこともできません。
失敗や挫折を経験しない人生とは、何もチャレンジしなかった人生ではないでしょうか?
つまりチャレンジには挫折がつきもの。
ですので、失敗・挫折を覚悟の上、その時にいかに素早く回復するか、「回復力」をつけておくのが「運」を引き寄せるコツになるようです。
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▼抗がん剤治療における「回復」
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進行がんに対する抗がん剤治療は、やってみないと効果が出るかどうかはわかりません。
いったん効果がでた(がんが小さくなった)としても、多くの場合そのうち耐性化してしまい、小さくなった「がん」が再び大きくなってしまいます。
この耐性化を含めて、「がん」が大きくなることをその抗がん剤治療の失敗と捉えると、大多数の人が抗がん剤治療が失敗することになります(抗がん剤治療が成功した人とは途中で「がん」が治った人のみになるため)。
昔の担当患者さんの話しですが、一度目のCT検査ではかなり「がん」が小さくなっていたのですが、2度目のCT(約3ヶ月後)で「がん」が大きくなってしまっており、その結果をお伝えしたところ
「効果がないのであれば、抗がん剤治療には意味がない!」「もうしない!」といって辞めてしまった方がおりました。
残念ながら多くの進行がんの治癒率は数百分の一くらいです。
ではなぜ抗がん剤治療をするのか?
それは「延命」するためです。
手術や放射線治療では「延命」することも難しいので、抗がん剤で「延命」を目標に治療をするのです。
実際に、抗がん剤治療の効果を検証する第3相臨床試験では、「全生存期間」が主要な評価ポイントになることが多いです。つまり、どれだけ「延命」できたかで評価されているということです。
もし一次治療の効果がなくても、二次治療が効くかもしれないし、三次治療でようやく効果がでるかもしれない。
私の担当患者さんの中にも、三次治療で治癒して、しばらくは抗がん剤治療を継続しておりましたが、数年経ってもがんが出てくる気配がないので、抗がん剤治療を中止しましたが、その後も再発なく経過されました。抗がん剤治療終了後5年経過されたため、先日ご卒業されていきました(おめでとうございます)。
そのようにいくつかある治療方法を順次実施していった結果、最終目標である「延命」につながり、その中のわずかな方が治癒するわけです。
つまり、抗がん剤治療における「回復」とは、先ほど例に挙げた人のように、「がん」が大きくなってしまったから治療自体を辞めてしまうのではなく、そのショックから速やかに抜け出し、次の治療にチャレンジすることと言えます。
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▼「回復力」を養う方法
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抗がん剤治療においても、「回復力」が重要なことはご理解いただけたかと思います。
もともと回復する力が強い方は良いでしょうが、そのような人ばかりではありません。
というか、中々回復することができない方のほうが多いと思います。
では、どのようにして「回復力」を養えば良いのでしょうか?
本書には、3つの方法が紹介されています。
①科学者マインドセット
②侵襲アクセプタンス
③自己認識クエスチョン


他の二つに関しては本書を読んでいただくとして、ここでは①科学者マインドセットについて少し紹介させていただきます。
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▼科学者マインドセット
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科学の実験においては、成功する方法を模索するためにあらゆるパターン(仮説)を検証します。
つまり失敗することが前提で、失敗(仮説→検証)を繰り返しながら、一つ一つパターンをつぶしていき、最終的に成功にたどり着くわけです。エジソンが電球フィラメントを作成する中で、2000種類以上の素材を検証したことは有名です。科学者マインドセットとは、このような思考を持つ人という意味で、失敗というよりはただのデータとして扱う、たくさんの仮説のうちの一つが消去できた、「一歩前進だ!」と捉えることです。
抗がん剤の効果が得られなかった場合、「自分の何が悪かったから効果が出なかったのだろう?」と質問される方が多いですが、このような方は、「失敗」イコール「自分は欠陥品である」かのような気持ちを持っているのだと思いますし、そのような「無能感」が強ければ気持ちが落ち込んでしまい、回復に時間がかかってしまいかねません。
一方、科学者マインドセットを持っていれば、単に「この抗がん剤は自分のがんにはあわないみたいだ」と捉え、「別の抗がん剤を使用してみよう」と速やかに切り替えることが可能となりそうです。
このように仮説→検証を繰り返すことは、抗がん剤の副作用対策においても重要です。特に薬で対処が難しく、個人差が大きい「味覚障害」のような副作用においては、患者さん自身で仮説→検証を繰り返してもらうのが本当は一番よいと考えています。色々な種類の食べ物を食べてみて、食べられるものを選択するわけです。とはいえ、一度見つければそれで完了というわけではなく、また日が変わったり、体調が変わったりすると食べられたものが食べられなくなってしまったりしてしまうため、何度も仮説→検証を繰り返し行う必要があります。食わず嫌いをしていた食べ物が、食べてみたら結構いけてたという話しもチラホラ聞きますので、そのような食べ物も含めて検証できるとなお良いと思います。
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▼まとめ
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本書からの引用ですが、
「人生にリセットボタンはない コンティニューはある(『街へいこうよ 動物の森』より)」

一見、無理ゲーと思われるようなことであっても、何度もチャレンジ(コンティニュー)できれば、何かしら突破口が見いだせる(と信じて)、仮説・検証を繰り返していきましょう。

さてさて、4回にわたり『運の方程式』を参考書に、がん治療への応用を考えてきました。
皆様のがん治療の成功に少しでもお役に立ちそうであれば幸いです。

『運の方程式』に関して、もっと詳しく知りたいという方やご興味をもたれた方がおりましたら、下にリンクを貼っておきますので、現物をご購入の上ご一読いただけますと嬉しいです。

『運の方程式』 鈴木祐著、出版:アスコム
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今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
また次回もどうぞよろしくお願いいたします。

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