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コーチング脳で『がん医療』を考える①

ここ数年、『がん医療』にコーチングを応用することで、よりよい『がん治療』が行えるのではないだろうか?と考えておりました。
色々と試行錯誤を繰り返して、それでもまだまだ満足いく形にはほど遠い状態ではありますが、少し見えてきたものもありますため、情報の共有と願わくば志に賛同してくれる方が増え、考えが拡がっていってくれればと考え、これまで書いてきた「がんと●●」シリーズと並行して、“コーチング脳で『がん医療』を考える”というシリーズを書いていきたいと思っています。

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▼コーチング脳
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日本で最も多くのプロコーチを育てた『プロコーチ養成スクール』の講師である宮越大樹さんの著書『人生を変える!「コーチング脳」のつくり方』(ぱる出版)を教科書として、そこに書いてある内容一つ一つを『がん医療』に応用していったら『がん医療』はどう変わるだろうか?という思考実験を
20数年間、腫瘍内科医として、がん医療の中でもより進行度の高いがん患者さんと共に歩んできた経験をベースに考えていきたいと思っています。
あの時知らず知らずコーチング脳的に関われたから良い結果になったようだ
逆に、あの時『コーチング脳』をもっていればこうできたのではないか?
良い経験も良くない経験も、経験しっぱなしでは、次に同じようなことが起きたとき、改善することはできません。
一方、コーチング脳を持って検証を行っておけば、良い経験を生かしてより良い結果を出すこと、また良くない経験を今度は良い結果に変えていくことができるようになります。
僕は、“コーチング脳で『がん医療』を考える”ことが、未来の『がん医療』の標準となると信じています!

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▼自分の未来を選び直す
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「このままいくとどうなってしまうのだろう?」
がん患者さんの多く、もしかしたらほぼ全員が、この疑問を抱えながら過ごしているのではないでしょうか?
そして、多くの方は『いい未来』ではなく、『悪い未来』をイメージしていると思います。
「このままでは嫌だ!」「何とかならないか?」「何か良い方法はないか?」
『悪い未来』を避け、『良い未来』に到達するために色々と行動してみる方も多くいらっしゃいますが、何をしたらいいかわからず行動に移せない人も少なくないのではないかと考えています。
行動してみている方、行動に移せない方、どちらの方にとってもコーチングは有効です。
『行動してみている方』でも、望んだ成果を出せていない人は少なくないはずです。
「この方法であっているのだろうか?」
「もっと他に良い方法があるのではないか?」
行動はしているけど、うまく行っている自信がなく、常に不安を感じている方は多いと思います。

『行動に移せない方』には、まず一歩踏み出してみる勇気が必要だと思います。
そう言われても・・・
「そもそも何をしたらいいの?わからないよ!」
「何かをする気になれないんです・・・」
「がん治療が大変で、他に何かをする余裕がないんです」
何かした方がいいのはわかっていても、行動に移せない。そういう方が大半ではないでしょうか?

つまりどちらの方も、このままでは想像通りの『悪い未来』に到達してしまいそうというイメージのままで、『良い未来』に行き着くイメージがないわけです。

『コーチング脳』を持ったがん治療医であれば、「このままいくとどうなってしまうのだろう?」という不安を抱えたがん患者さんのお手伝いができるのではないかと考えています(具体的にどのようなお手伝いができるかは、おいおい明らかにしていければと思います)。

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▼アドラー心理学をベースにしたコーチング
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一言でコーチングといっても、その流派はたくさんあるようです(後から知りました!)。たくさんとというのがどのくらいか、正確な所は不明ですが、100~200ほどあるらしいというお話しを聴いたことがあります。
それはさておき、私自身がコーチングというものを知ったきっかけは、職場の雰囲気が悪いのはコミュニケーションに問題があるのではと考え、コミュニケーションの勉強をしていた時でした。そのセミナーで知り合った方とお話ししている際に、そういう問題解決だったらコーチングが役に立つんじゃない?とのアドバイスを受け、さらにコーチングを学ぶのであれば『宮越大樹』さんがいいよとのことでした。
僕はそれまで『コーチング』というものを全く知らず、この時にはじめて知りました。
そのため『コーチング』イコール『宮越大樹さん』という刷り込み(インプリンティング)がなされましたが、とてもラッキーだったと思っています。
それは、宮越大樹さんの教えるコーチングが、アドラー心理学をベースにしたものであったからです。
丁度『嫌われる勇気』(岸見一郎・古賀史健著、ダイヤモンド社)を読んだ直後でもあり、アドラー心理学をがん治療に応用できたら、今よりももっと良いがん治療が提供できるのではないだろうか、そうであればどうにか導入する方法はないか?と考えていたので、コーチング+アドラー心理学とは、なんてステキなんだろう!これさえ学べればがん治療を大きく変えることができるのではないか?と感動しました。
しかし実際には、丁度コロナ禍が始まった時期であったため、本格的に宮越大樹さんから学べるようになったのは最近です。
とはいえ、アドラー心理学関連の本を読んで勉強したり、宮越大樹さんの師匠である平本あきおさんのWEBセミナーを受講したりして、学びを深めていました。
そのおかげもあり、がん患者さんやご家族とのコミュニケーションが少しずつ変わってきました。
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▼コミュニケーションが変わると、人生が変わる?
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『コーチング』はできなくても、相手のニーズを満たしたり、勇気づけたりすることは可能であり、実際、効果を実感しています。
例えば、進行がんとの宣告を受け、できることは抗がん剤治療しかないといわれて、失意の中、腫瘍内科を受診される方はとても多いです。
『がん』そのものというよりは、『告知のショック』のため、「あの日以来眠れていないんです」、「食欲がわかない。何もする気になれない。」などの状態になってしまったとおっしゃる方もかなりの数いらっしゃいます。
マズローの欲求5段階説でいえば、「がん」により『安全欲求』が脅かされたことで『生理的欲求』にまで影響が及んできたという状況と考えます。
(マズローもアドラーの影響を強く受けているとのことです)
この状況で、「どういう抗がん剤をいつから始めようか?」と相談しても、なかなか良い相談にならなくても仕方がないのだと思います。
このような状況においては、まずは『生理的欲求』を満たすところから始める必要があったのだということに、そもそも以前は気がつけていませんでした。
今はまず、「眠ったり、食欲が戻るにはどうしたらいいか?」の相談から開始し、笑顔や少し明るめの声などで安全・安心な雰囲気を醸し出したりすることで、同時に『安全欲求』も補うようにしています(勇気づけにもなっていると考えています)。
この時点で患者さんの方から『余命』の話が出てくることがありますが、折角補った『安全欲求』が損なわれかねませんし、勇気づけになる可能性もなさそうだと考え、少なくともこの時点で『余命』の話をすることは避けるようにしています(「そのお話しはまた後日しましょう!」)。

『生理的欲求』が満たされ、『安全欲求』が補われてくると、さらに『安全欲求』を満たすべく、「どんながん治療がいいか?」の話も比較的スムーズにできるようになる印象です。

今回はここまでとしたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございます。

“コーチング脳で『がん医療』を考える”シリーズも週1回くらいのペースで更新していこうと考えております。
次回以降もどうぞよろしくお願いいたします。

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