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がんと『水(water)』
今回は、とっても身近な話題であります、『水(water)』についてお話しさせていただきたいと思っています。
皆さんは『水』を意識的に摂取されておりますでしょうか?
最近はこの質問に「YES!」と回答される方が多くなってきている印象ですが、では実際にどのくらいの量を飲んでいるか?と伺うと
「何mlとか、量はわからないけど、食事の度に飲んでいるよ」
「少しずつ飲むようにしているが、そんなにたくさんは飲んでいないかな」
「あまり飲むと、夜間のトイレが心配で・・・」
なんて答えが返ってきます。
「熱中症」の時期になると、テレビなどでも連日のように注意喚起がされますから、その時期はこまめに水分補給をしている方でも、冬の寒い時期になると水分摂取量が大きく減ってしまう方も多いのではないでしょうか?
「冬は汗をかかないから、そんなにたくさんの水分は必要ないだろう?」って僕も思っていましたが、実はそうではないようです。
冬は暖房により日中もそれなりに汗をかいています。
「不感蒸泄」といって汗にならないくらいの水分が身体や呼吸から常時蒸発していっているのですが、空気が乾燥しているとその「不感蒸泄」として身体から失われる水分量が増えます。
また、寝ている間の汗の量もバカにならないため、結局夏だろうが冬だろうが、ヒトが必要とする水分量はそれほど変わりないようです。
冬だから寒いからといって水分をとらないでいると、夏とおなじように「脱水症」になってしまうリスクがありますので注意が必要です。
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▼1日に必要な水分摂取量
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では、実際にどのくらいの水分を摂取すればよいのでしょうか?
必要な水分量は年齢や体重などで変化しますが、厚生労働省の啓発ポスターでは、1日に2.5Lの水分が必要だとしています。
尿や便として体外に排出される量が1.6L
汗や不感蒸泄の分が0.9L
あわせて2.5Lが自然と失われるため、それを補充することが必要ということです。
水分の多くは食事として摂取していますが、食事中の水分は1.0L程度とされています。
また、体内で0.3L分の水が作り出されます。
ここまでで1.3Lですので、残り1.2Lを余分に摂取する必要があります。
1.2Lを一度に飲もうとすると大変です。
「ビールならそのくらい飲めるけど・・」と言うヒトは意外?にも多いことに驚かせられます(ビールは飲んだ以上に尿量が増えてしまうので水分量に加えてはいけません)。
実際頑張って一度に水分1.2L摂取しても身体が吸収しきれないので、尿や便としてすぐに排泄されてしまいます(便秘には効果的です)ので、摂取したことになりません。
ですので、実際にはコップ1杯程度(180~200ml)を6~8回にわけて摂取することが推奨されています(もっと細かくわけて摂取しても良いです)。
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▼抗がん剤と「水」
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僕は、抗がん剤治療を受けている方には、水分を多めに摂取するように外来で頻繁にお話ししています。
点滴でも、内服でもですが、体内に入った抗がん剤の多くは尿と一緒に体外へ排出する必要があります。これが滞ると副作用として人体に悪影響を及ぼしてしまいます。
特に吐き気や食欲不振で食事量が減ってしまった時などは、食事から摂取できる水分量も減ってしまいますから、その分を余計に摂取する必要があるわけですが、水分摂取まで少なくなってしまうと、体内の抗がん剤がなかなか排出されず、副作用が強くなったり長引くことにつながってしまう恐れがあります。
ですので、抗がん剤治療中は、あまり明確な根拠があるわけではないのですが、1日2リットルくらいを目安に水分を摂取してくださいとお話ししています。
このようにお話しして素直に2リットル飲むヒトはそれほど多くはありませんが、それくらい必要なんだなと認識してもらえることで、言わないよりは意識的に水分摂取につながってくれているのではないかと考えています。
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▼水分は何でもいいの?
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「水分」といわれても何を飲んだら良いかわからないという質問を良く受けます。
診察室ですと、さすがに「アルコール」で摂ってもいいか?と聴かれることはほぼありませんが、「お茶」や「コーヒー」、「ジュース」、「スポーツドリンク」「野菜ジュース」など色々でてきます。
しかし、「水道水」というヒトはほぼいないのがとても不思議です(土地柄?普通においしいと思うけど)。
毎日のように2リットルくらい水分を摂取してくださいといっているのに、何故お金がかかるモノで摂取しようとするのか、とても不思議です。
ですので僕は「『水道水』でいいですよ」というのですが、「水道水を2リットルも飲めない」と必ずと言っていいほど言われます。
もちろん2リットル全てを「水道水」で摂ってくださいというわけではありません。
また、「お茶」や「コーヒー」などカフェインが入っているものは利尿作用も一緒にでてしまうので、水分補給にふさわしくないとされていたり、「ジュース」や「スポーツドリンク」はそればかりだと「糖分」の摂りすぎが懸念されるわけですが、
僕の中での優先度としては
①水分を摂取する習慣をつける
②摂取量を適正量に増やしていく
③カフェインや糖分など、摂りすぎて困るモノを減らしていく
という順番でステップアップしていくのが良いのではないかと考えているので
①・②の段階では、「さしあたり何でもいいのでまずは水分を摂取しましょう」とお話しさせていただいているわけです。
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▼水はいくら飲んでも大丈夫?
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水分を多く摂ってくださいと話と、ごく稀ですが「がん治療」の一環だとして、大量の水分を摂取してしまう人がいらっしゃいます。
基本的には極端に多く摂りすぎない限り、身体が自動的に調整してくれますので大丈夫といって良いと考えています。
1日の水分量が2リットルの倍の4リットルになったくらいでは大丈夫だということです。
もちろん中には、心臓病や腎臓病で水分制限が必要な方がいらっしゃいますが、そのような方は主治医からその旨言われているかと思いますので、特に制限されていないと言う方はほぼ大丈夫です。
とはいえ、身体の許容量を超えて水分を摂取してしまうと「水中毒」という状態になってしまう場合があることは知識として持っておいた方が良いと思います。
「水中毒」は、短時間に何リットルも摂取したり、1日10リットルくらい水だけを飲むとなったりしますが、「一度『水中毒』になるまで飲んでやろう!」とでも思わない限り難しいと思います。
「水中毒」の本態は、体内の塩分濃度低下(水で血液が薄まるため。病名的には低ナトリウム血症となります。)ですので、適宜塩分を補給しながらであれば、大量の水も飲めなくはないと思いますが、そこまでして大量に飲まなくていいと思います。
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▼せっかく飲むなら「がん」に効果がある「水」を飲みたい!
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「『がん』に効果がある『水』」として販売するのは昨今難しいと思いますが、直接的にそのように謳っていなくてもウワサや口コミと言ったレベルで「がんに効くらしい」という「水」が世の中にたくさん出回っていますね。
このことに関しては、長くなりそうなので、また次回にでもお話しさせてください。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
また次回もどうぞよろしくお願いいたします。