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コンチェルトが聴きどころ デトロイト交響楽団 アメリカ・オーケストラ漫遊(3)

 我らがデトロイト交響楽団のシーズン開幕を飾る演奏会が金曜日の夜に開催された。6時前に仕事を終えて、Downtownのコンサートホールへ向かった。車をホールの駐車場に停めて、歩いて5分ほどのレストランで夕食を済ましてホールで開演を待った。

2023年9月29日 デトロイト交響楽団

9/29/2023, Fri, 8:00 pm, @ Orchestra Hall, Detroit
Detroit Symphony Orchestra
Jader Bignamini, conductor / Gil Shaham, violin


  • The Star-Spangled Banner

  • Overture No.1 in E minor, Op.23 / FARRENC

  • Violin Concerto / TCHAIKOVSKY 

  • La valse / RAVEL

  • Daphnis et Chloe Suite No.2 / RAVEL

 デトロイト交響楽団のコンサートホール(通称MAX)は昨年も何度か訪れた。昨年のサブスクリプションでは中央左前方のコンサートマスターをすぐ近くで見られる席で楽しむことができたが、今年は少しケチって左前の席にした。昨年の経験から2階後方の席だとサウンドがだいぶ遠く聞こえる印象があった。どんな席でも1階の方が演奏は楽しいと思う。

The Star-Spangled Banner

 今月3回目のアメリカ国歌、みんなご機嫌だった。

 国歌の演奏に引き続き、恒例コンサート前に音楽監督で今日の指揮者Jader Bignamini氏による解説。明るく気さくな感じで話してくれるので会場の雰囲気が少し和む。

Overture No.1 in E minor, Op.23 / FARRENC

 本当のプログラムが始まったが、多分平日の寝不足と満腹だったせいもあって、夢の中で聴いていたのだと思う。あまり記憶、印象に残っていないのが正直なところだ。
 ファランクは初めて聴いた作曲家だが、ロマン派の女性作曲家でショパンより少し年上のフランス人。ピアノやバイオリンなどの室内楽を中心にわずかに管弦楽の作品も残している。音源を改めて聴く限り、ロマン派的な美しくテンポ感もある曲なので、眠くなるような曲ではないはずなのだが。

Violin Concerto / TCHAIKOVSKY 

 今日のメイン、Soloは Gil Shaham氏。そもそもヴァイオリニストにはあまり詳しくないが、初めて聴く音楽家だった。とても柔らかい表情で舞台袖から出てきて、コンサートマスターと気さくに握手をして曲が始まった。
 第一楽章、冒頭からとても力強い演奏で、オーケストラとの息もよくあっている。Soloの間のオーケストラの旋律も力強くちょうどいい。第二楽章、ゆっくりな旋律をしっかり聴かせる演奏は見事。第三楽章、カデンツァを交えながら小気味良い演奏が続き、フィニッシュに向けての迫力も十分で、引き終わりの所作も含め格好よく、聞き惚れてしまうような演奏だった。
 オーケストラがよくソロを引き立てており、出るところは出るというバランスの良さを感じられ、Soloistにとっては気持ちのいい演奏だったのではないかと思った。

La valse / RAVEL

Daphnis et Chloe Suite No.2 / RAVEL

 さて、プログラムの後半Ravelの2曲だが、La valseすなわち「ワルツ」ということだが、これがどうも変だ。Ravelあるいは同時期のフランス音楽に特有のハープやら木管楽器やらから出てくるキラキラ感がなく、特有のタメもあまり感じられない。いわゆる「おフランス」なおしゃれさ、色彩感がない。6月にシカゴで聴いたときも満点とは思わなかったが、もう少し聴きどころがあったはずだが。。。
 それが逆の意味で衝撃的で、ダフニスとクロエはほとんど記憶にない。始まればいい曲だからとあまり予習しなかったこともあったが、そんなんじゃないだろう、と思っているうちに終わってしまった。
 その点、日本の吹奏楽コンクールでも自由曲で有力校がやることもあった、「ダフニスとクロエ」だが、彼らの演奏の凄みというのは感心せざるをえない。フランス感を吹奏楽であそこまで再現するというのは、プロの名門オーケストラでも簡単にできるわけではないのだ。

まとめ

 表題の「コンチェルトが聴きどころ」というのは皮肉であって、オーケストラ自身の演奏としては、もっと頑張ってほしい、あるいは私の好みとは違う、ということだ。これまでにも何回も演奏を聴いてきたが、ほぼ毎回前半のコンチェルトは素晴らしいのだが後半の交響曲や管弦楽曲が物足りないという感覚は共通しているし、お客さんの拍手の様子を見ても概ね共有された感覚なのだと思う。
 せっかく超一流のソリストを招いてコンサートを開くのだから、オーケストラ自身がもっと聴かせる演奏をしないともったいないと感じた。今年一年も何回も行く予定だがこの感覚が変わるのか、変わらないのか聴いていきたい。

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