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須田一政塾で教わったこと

須田塾に入って最初に言われたことは「自分で選ばないですべての写真を持ってきてください」ということ。それらの写真すばやく選別しては「この写真いいですよ」とぽんと渡される。渡された写真を見て、困惑した塾生は多かったと思う。構図や光を意識した学びを含んだ写真はほぼ選ばれず、家族写真や技術を意識しない素直な写真が多く選ばれたからである。私自身、上手に撮れたと思えた写真は外され、なんで撮ったんだろうと思える素の写真が選ばれた。最初は構図や光など技術的なことばかりが気になり、自分の感性を信じられなかったのだ。須田さんは、そこに目を付けて、いいよといってくれ、さらに深く写真にのめり込んだ。主婦、サラリーマン、企業経営者、年金生活者など、参加者の多くは様々な年代からなる生活者である。写真を撮ることが生活の張りとなったり、生きがいとなった人は多い。ワークショップが終わると近くの酒場に流れ、生活や仕事、恋愛の話をして夜遅くまで盛り上がった。口論になったり、須田さん自身が江戸言葉丸出しでヒートアップすることも多かったが、写真を媒介としてストレートに多くの人と語り合ったことは今でも人生の大きな財産と言える。露出や構図など写真教室で教えてくれそうなことは何一つ教えてくれなかったけど、人生の大切なことは須田塾で教えてもらった。須田さん、本当にありがとうございました。

(初出)日本カメラ 2019年5月号 追悼・須田一政

掲載誌
上の写真は須田さんが亡くなってから、須田塾関係者で集まった時の写真かな。

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