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知っておくと役立つ古代メキシコの神々10選(その2)

知っておくと役立つ古代メキシコの神々。後半ではケツァルコアトル、テスカトリポカ、チャルチウトリクエ、ミクトランテクトリ、シペ・トテックを紹介します。


前半はこちら。

⑥羽根のついたヘビの神  ケツァルコアトル(Quetzalcóatl)

画像:Wikipedia「Quetzalcóatl」の項目より https://es.wikipedia.org/wiki/Quetzalc%C3%B3atl

「羽根のついたヘビ」の神。テスカトリポカとともに世界を創造した神であり、人間に最初に主食(トウモロコシ)を与えてくれた神でもある。基本的に恵みをもたらしてくれるいい奴。「風」「音」「生命」などのワードとも関連が深く、多くの絵文書で風の象徴であるくちばしを持った姿で描かれる。おそらくメソアメリカ(メキシコ+中米)で最も広く信仰されていた神であり、テオティワカンやマヤの神殿も有名。

⑦黒曜石の神 テスカトリポカ(Tezcatlipoca)

画像:アルフォンソ・カソ著「El pueblo del Sol」より

黒曜石の神。世界の創造神の一人。ケツァルコアトルと対照的に「悪」を司る神で、闇、破壊、盗み、強姦、不老不死などと関係付けられる。しばしばジャガーの姿で描かれる。「煙の出る鏡」(おそらく黒曜石のこと)の神としても知られ、足に丸い鏡が付いていたらテスカトリポカと思っていい。もともとはトルテカ人の神だったと言われる。他にもいろんな特徴がありすぎて個人的には一番謎の多い神。

⑧水の女神 チャルチウトリクエ(Chalchiuhtlicue)

水の女神。トラロックの妻。トラロックが天上の水(雨)の神であるのに対し、チャルチウトリクエは地上の水(川、湖)を司っている。「神聖な水」を表す二重丸のイヤリングと、両手に持っている流水が特徴。テオティワカンの「太陽のピラミッド」と「月のピラミッド」は後世に付けられた名前であり、実は「トラロックのピラミッド」と「チャルチウトリクエのピラミッド」であったと言われる。ちなみにメキシコ国立人類学博物館の入り口に立っている巨大な石像はこのチャルチウトリクエをかたどったもの(一般には「トラロック」として知られているが間違い)。

⑨死の神 ミクトランテクトリ(Mictlantecuhtli)

死の神。地下深くの死後の世界である「ミクトラン」の支配者。その起源はとても古く、紀元前1500年くらいからメソアメリカで信仰されているとされる。アート作品にもよく登場するし、11月の死者の日にはミクトランテクトリを模したモニュメントがたくさん出現する。古代メキシコ展の「死のディスク」も実は彼、ミクトランテクトリを彫ったもの。

⑩春の神 シペ・トテック(Xipe Tótec)

春の神。死と再生を司る神。トウモロコシの生産の神。人間の剥いだ皮を着ており、見た目がかなり怖い(マスクと服のように見えるのは人間の皮)。アステカ人たちは毎年トウモロコシの種まきの時期である春分にシペ・トテックをまつるお祭りをしていたが、その際には人間のいけにえを殺し、彼らから剥いだ皮を実際にかぶり、手足をポソレ(煮込みスープ)にして食べていた。スペイン人が最も恐れた神とも言われている。

10選に入りきらなかった神々については別の記事で紹介したいと思います。

おすすめ書籍

芝崎みゆき『古代マヤ・アステカ不可思議大全』
軽い内容かと思いきや、大学の授業で習うような専門的な知識もたくさん出てきます。絵が充実していてわかりやすいおすすめの一冊です。

アルフォンソ・カソ『太陽の民』
スペイン語が読める方はこちら。メキシコ考古学の大家アルフォンソ・カソがやさしい語り口でアステカ神話を解説してくれます。

エドゥアルド・マトス・モクテスマ、レオナルド・ロペス・ルハン『メシカ族の記念碑的彫刻』
発掘されたアステカの神々の図録。迫力があって眺めているだけで楽しい一冊。現代のテンプロ・マヨール研究の第一人者であるエドゥアルド・マトス・モクテスマ博士とレオナルド・ロペス・ルハン博士の監修なので信頼のおける決定版です。

10選では足りなかったので続きを書きました。。


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