ホグワーツに入学してやりたかったこと全部やってきた|ホグワーツ・レガシー ネタバレ感想
最近行われていたセールを機に、昨年満を持して発売されたホグワーツ・レガシーを購入して遊びました。
原作シリーズが言わずもがな大人気の作品であること、魔法界を舞台にしたオープンワールドゲームであることなども相まって注目されていた本作ですが、発売からしばらく経ったプレイ前の私の事前知識は主に薩摩ホグワーツと許されざる呪文を使える主人公とフォロワーさんがスリザリン生のキャラはいいぞとなっているくらいのものでした。薩摩ホグワーツに関してはもはや事前知識ではない。
そんな偏りまくった知識をもとに遊び始めたホグワーツ・レガシーですが、とにもかくにも面白かった~~~!!!! 久々にご飯・風呂・仕事以外すべての時間をゲームにつぎ込むほど没頭して遊んだ気がします。1周目をクリアした時点でのプレイ時間は、寄り道しまくったこともあって55時間でした。
RPGの1周目クリア時間が大体平均で20~30時間、長くても40時間くらいの感覚で遊んでいるため、個人的にはかなり遊んだな~!!!!という感じです。かといって遊んでいる間時間がかかって苦痛だったかといえばそうではなく、メインストーリーを進める→息抜きにサブクエストやフィールド上の収集要素集めをする→またメインストーリーを進める→……のループで延々遊ぶのがやめられず、夢中になって遊んでいたからこそこれだけのプレイ時間になったのだと思います。原作の世界観にそもそも全世界の人たちを引き込む魅力があるだけあって、それを丁寧に再現した本作は没入感が凄まじく、当てもなくホグワーツ内を散策したりフィールドを箒で飛び回ったりするだけでもかなり楽しいです。ゲームに熱中して時間が溶ける感覚を久々に味わいました。
この記事では、主に
①ゲームを遊んで楽しかったところ
②メインシナリオの感想
③主な登場人物の好きなところ
について話します。中でも「主な登場人物の好きなところ」の項目で話す、ホグワーツで一緒に過ごす主人公の同級生たちは、皆等身大の少年少女でありながら魔法使い/魔女らしい魅力に満ち溢れていて全員大好きになりました。同級生と一緒に授業を受けるムービーが流れた時や校内でたまたま同級生を見つけた時は、常に同級生たちを激写するマシーンと化したほどです。ホグワーツ・レガシー、フォトモードが搭載されてるのがスクショ厨にとって有難過ぎる……。
以下、本編のネタバレを含みます。ご留意のほどよろしくお願いいたします。また主人公の名前がスクショでちょこちょこ見えるところがありますが、謎の名字はお腹が空いてる時につけただけなのであまり気にしないでください。
ゲームを遊んで楽しかったところ
ハリーポッターシリーズを読んだ/観た人ならば、一度は「自分もホグワーツに入学してみたい!」と想像したことがあるのではないでしょうか。私も例に漏れずその一人なのですが、ホグワーツ・レガシーを遊ぶと、子供の頃抱いた「ホグワーツで過ごしてみたい」という夢が十数年越しに実現したような気持ちになりました。オリバンダー老人の店で自分だけの杖を手に入れ、箒で空を飛び回り、友達や先生と一緒に目をみはるような冒険をする。この記事のタイトルどおり、1周目をクリアした時の気分は「ホグワーツでやりたいこと全部やりきったな……」といったものでした。
原作のネタがあちこちに散りばめられているのも嬉しいところです。私はそれほどハリーポッターシリーズの熱狂的なファンというわけではなく、小説と映画をひととおり履修した程度のいち読者に過ぎないのですが、それでも主人公がヒッポグリフにお辞儀をして仲良くなる場面では「マルフォイが失礼な態度をとってヒッポグリフにキレられてたやつだ!!」とはしゃいでしまいました。
その他にも必要の部屋が使えたり、ホグワーツからホグズミードへ繋がる秘密の通路を通れたりと、楽しさは留まるところを知りません。原作の記憶が薄い自分ですらこうなので、原作をもっと知り尽くしている人は更に楽しいんじゃないかと思います。
ゲームシステムの方面はかなり疎いので素人以下の感想になるのですが、戦闘や謎解きもすごく楽しかったです。どちらも程良い難易度で、最後まで楽しく遊べました。本で見たことのある呪文を自分で実際に使うというだけで、ダンジョン攻略がこれほど楽しくなるのかと感動しました。だがデパルソパズル、テメーはダメだ。
特に戦闘は主人公の一見戦闘に関係無い技術を戦闘に応用する才能がすごいを通り越してえげつなく、調合した魔法薬に栽培した魔法植物など使えるものは何でも使って戦う感覚がとても楽しかったです。変身術の授業で、生徒たちがガラス玉を蝶に変身させる美しく平和な授業風景をお出しされたと思ったら、変身術の強化内容が「敵を爆弾樽に変えられるようになる。変身した爆弾樽を敵にぶつければ、爆弾樽をぶつけられた敵も変身したまま爆散した敵も死ぬ」だった時は、自分が動かしている主人公とはいえ覚えた呪文を戦闘に活かすセンスがあり過ぎだろとドン引きしました。インターネットだとホグワーツ・レガシーの主人公がよく蛮族扱いされているのも少し納得してしまいます。
唯一気になった点を挙げるとすれば、誤訳っぽいテキストや、原文を無理に翻訳した結果カチコチになっているテキストがあったところです。よく見かける詐欺ゲーの広告っぽい言い回しにちょっと笑ってしまう時も多々あったのですが、流そうと思えば流せるくらいの範囲ではあったかなと思います。
冒頭でも書きましたが、ホグワーツ・レガシーはフィールドの探索がとにかく楽しく、特にホグワーツの校内はどれだけ散策しても足りないくらいの広さと魅力がありました。ストーリー序盤に秋のホグワーツをひととおり歩き回った後、季節が冬に移り変わって、雪が降り積もる中庭とあちこちに飾り付けられたクリスマスの装飾を見た時は思わず感動の声をあげてしまいました。
また、校内を歩いていると時々聞こえてくる、生徒や先生、ゴーストたちの雑談も注目したいところです。何気ない日常会話からしか得られない世界観の味わいを、彼らの話からは感じ取ることができます。
個人的には生徒たちが受け取った吼えメールの内容を立ち聞きするのが面白かったです。グリフィンドールに組み分けされた生徒が「そんな色のローブを着るなんて許さない。今すぐ校長に話して組み分けをやり直してもらえ」と理不尽に怒られている時もあれば、「家の貯金をホグズミードの菓子に使い込みやがって! 家から出ていけ!」といったそりゃ怒られて然るべきだろとなる内容もあり、つい立ち止まって話を聞いてしまいました。
私と同じく、今までに一度でも「自分もホグワーツに入学してみたい!」と思ったことのある人には、迷わずこのゲームをおすすめします。幼い頃の自分が思い描いた夢が、ホグワーツ・レガシーの世界には広がっています。
メインシナリオの感想
ホグワーツ・レガシーのメインシナリオは、古代魔術という特別な魔法を使える主人公が五年生からホグワーツに転入し、魔法族への反乱を企てる小鬼・ランロク及び古代魔術の力をつけ狙う悪党・ルックウッドと戦いを繰り広げるといったものです。この物語で中心となる古代魔法や小鬼は、ハリーポッタシリーズにおいて登場はするもののそこまで本格的に触れられるわけでもないという立ち位置で、原作の核心に迫るような話や原作レベルの壮大かつ濃密な話を求めているとやや肩透かしかもしれません。ただ、本作があくまでもファンディスク的な立ち位置であることを考えると、原作の核心にがっつり触れることはできないけど原作の要素に絡めつつ校内外を冒険してホグワーツを救う英雄になる物語……やりたくない!?!?の気概が伝わってきたので、個人的にはアリだと思いましたし総じて面白く読み進められました。
先に一つだけ盛大なツッコミどころを挙げておくと、終盤まで敵対するボスの1人であるルックウッドとの決着が、主人公を無理やりアジトに拉致したルックウッドが「ガキ1人くらいリンチしたら勝てるやろ!」と思っていたら、普通に主人公が強過ぎて多人数vs1人の戦いを圧倒しアバダケダブラも跳ねのけてルックウッドをぶっ飛ばしてフィグ先生に「ルックウッドは死にました(単独完全勝利)(猛者)(蛮族)(歴戦の戦士)」と報告して終わりという結末になっていることです。割と序盤から終盤まで敵対していたボスなのに最後の扱い雑過ぎない!?という困惑を飛び越えて、笑いが先に出てきました。大ボスの一人に攫われて味方はいない!絶体絶命のピンチ!な状況になった時、特に苦戦せず普通に全員ボコボコにして目立ったケガも無く余裕で帰ってくる主人公、なろう小説でも最近では見ないよ……。
メインシナリオのかなり明確なツッコミどころかつどうしてこうなった案件の一つで、普通ならば全然文句を言っても許されるレベルの展開だと思いますが、個人的には一周回って面白かったです。
■フィグ先生BIG LOVE
メインシナリオを語る時欠かせないのが、主人公の恩師ともいえるエリエザー・フィグ先生の存在です。フィグ先生は、五年生からの転入という異例の境遇である主人公へ、同級生たちに追いつけるよう入学前にいくらか呪文の手ほどきをしてくれます。原作でお馴染みの、辺りを照らす呪文“ルーモス”を初めに教えてくれるのもフィグ先生です。
なお、主人公はルーモスを物語が始まってからすぐに開始される探索パートでフィグ先生から教わるのですが、なぜかそれよりも前にフィグ先生は主人公にプロテゴやステューピファイといった決闘特化の呪文をあらかじめ教えています。戦闘パートへの導入を楽にするためというメタ事情があるのは大前提として、のちのち主人公が悪党を多対1でも余裕でボコボコにして帰ってくるトンデモ戦闘マンになることを思うと、そう育つ片鱗が冒頭から垣間見える気分になります。
先述のとおり主人公は古代魔術という特別な魔法を使えるのですが、フィグ先生の妻はかつて古代魔術を研究している最中で命を落としており、その出来事はずっとフィグ先生の心に残っています。そんな不思議な縁もあって、フィグ先生は古代魔術を巡る主人公の冒険を手伝ってくれます。
フィグ先生の魅力は、なんといってもお茶目で好奇心旺盛で頼りになる素敵なおじいちゃんの先生であるところです。主人公もフィグ先生も好奇心をとめられないタイプだからか、主人公がウキウキで「禁書の棚(生徒は教師の特別な許可が無ければ立ち入り禁止の区域。侵入しているのがバレたら基本的に罰則)に行って古代魔術にまつわる本を見つけてきました!」と報告すれば、「禁書の棚に行っただと? だがどうやって……いや、詳しくは聞かない方がいいかもしれんな」とフィグ先生も言い、規則破りの可能性そっちのけで本の解読に取りかかるほどです。亡き妻が追っていた魔術について知りたいという思いは勿論強いと思いますが、学問を職としている人ならではの未知の魔法に対する探究心も、冒険への手助けを促しているではないかと思います。
また、フィグ先生は子供の主人公ではどうしても手の届かない部分で力を貸してくれます。物語の中盤に、主人公は校長室にこっそり忍び込まなければならなくなるのですが、その時にフィグ先生はいつか必要になるかもしれないと思って作っておいた校長先生に変身できるポリジュース薬を取り出してきます。普段の会話を見ていても、ブラック校長は先生たち全員に満遍なく迷惑をかけているようで、フィグ先生も突然の呼出を受けては「腹立たしい奴め」と悪態をついている場面があります。きっとこれまで苦労をかけられる中で、あったら便利だろうと判断してポリジュース薬を作ったんだろうな……とフィグ先生の苦労や強かさが見られて好きなくだりです。
なお、この話を聞いた主人公は校長に変身してウィーズリー副校長に出会った際に「フィグ先生をもっと休ませよう」と勝手に進言しています。主人公、さてはフィグ先生のことが好きだな……?
主人公は見るからにフィグ先生へ懐いていますが、フィグ先生もまた古代魔術の守護者たちに「あの生徒(主人公)は今まで教えた中で見たことがないくらい優秀だから、あなたたちの試練をきっと乗り越えるだろう」と主人公が居ない間に話すほど、主人公に目をかけその才能を信頼しています。この話は主人公が待ち合わせ場所に向かっている時に遠くから聞こえてくる会話なのですが、主人公が到着すると「ああ、来たか」と優しく出迎えてくれるのも含めて、主人公とフィグ先生のHAPPY NAKAYOSHI……にあてられます。物語が進むうちに、フィグ先生は主人公を生徒であるだけでなく「若き友人」とも呼ぶようになり、二人の教師と生徒の垣根をも超えた絆が感じられます。フィグ先生が守護者たちに向けてしれっと言った「若き友人」という言葉を、その後すぐに主人公が「”若き友”は意外といろいろなところに行ってたりするんですよ」といたずらっぽくなぞってみせるところに、主人公もこの呼び名を気に入ってるんだろうなあと伝わってきて温かい気持ちになります。
そんなホグワーツを卒業してもずっと仲良しでいてほしい気持ちがやまないフィグ先生と主人公ですが、ある意味RPGのお約束ともいうべきか、主人公が敬愛する恩師である彼は最終決戦でラスボスの小鬼・ランロクから受けた攻撃が致命傷となり、亡くなってしまいます。フィグ先生の妻・ミリアムの遺品である杖をランロクから取り返した主人公は、息もたえだえのフィグ先生に杖をそっと手渡します。その時、フィグ先生は「ミリアムも、君のことを気に入っただろうな」と現実では出会うことのなかった、それでも出会っていたらきっと良い関係になっていただろう妻と友人に思いを馳せて息を引き取ります。この遺言の「ミリアム“も”」という言葉から、言わずもがなフィグ先生は主人公のことを気に入っていたのだと分かるのが、妻と主人公への愛に満ちた言葉で泣いてしまいます。
最初から最後まで、5年生からの転入かつ不思議な魔法の力を持つという特殊な立場の主人公に、フィグ先生は公私ともに隣を歩きながら時に教え時に導いてくれます。ホグワーツ・レガシーの教師陣は魅力的な人達が沢山揃っていますが、その中でもやっぱりひときわ大好きで、忘れ難いのが、フィグ先生です。
■古代魔術の守護者
メインクエストで語られる古代魔術の歴史やその危険性について深く知っており、主人公に教え説くのが、かつてホグワーツの教授であった四人の古代魔術の守護者たちです。
古代魔術の力は無限の可能性を秘めており、守護者たちはかつて干ばつに苦しむ村を、古代魔術を使って天候を操り救ったこともあります。ちなみに主人公はこの天候を操る古代魔術の能力を、敵の頭上から雷を落とし絶命させるというやり方で戦闘に応用しています。この主人公、戦闘センスがあり過ぎる……(n回目)
古代魔術の守護者たちは、自分たちと同じく古代魔術を使うことができる主人公に試練を与え、真に魔術を託す権利があるかを試します。また、彼らは主人公が試練を乗り越えることについて非常に懐疑的でもあります。その理由は、かつて彼らの教え子だったイシドーラ・モーガナークという女性が、古代魔術の力を使って苦しみごと人間の感情を取り除くという人の道から外れた行為を行い、暴走してしまったからです。彼女の命を奪うことで暴走するイシドーラをなんとか食い止めた守護者たちは、かつての失敗を繰り返さないよう古代魔術の力を人に教え託すことに慎重になっています。
守護者たちは一人ずつ主人公に試練を与えるのですが、それらはダンジョン攻略のような形になっており、それまで覚えた呪文や戦い方の復習のようでとても楽しいです。個人的に特に楽しかったのは、第三の試練でステルスを応用して攻略するダンジョンでした。それまでと全く異なる、主人公が本当に本の世界に入ったかのようなグラフィックには、大きくテンションが上がりました。この試練を受けるため校長室に侵入するクエストもとっても面白かったため、特に強く印象に残っている試練です。
守護者たちは、強大な力である古代魔術の徹底的な秘匿を望んでいます。この点も、弟子であるイシドーラの「多くの人を救える力があるのに秘密にするなんておかしい」という考えと対立した理由の一つです。そんな彼らの争いの一部始終を知った主人公とフィグ先生は、(選択肢にもよるものの)彼らとは少し違った考えで古代魔術を捉えます。
古代魔術を、イシドーラのように解放して暴走させはしない。だけど、地下に眠っているこの強大な力のことを、信頼できる人たちに明かして守っていけるよう力を合わせていきたい。それが、守護者たちとイシドーラの間に起こった事件と、フィグ先生の妻が抱いた「古代魔術が善なることに使われて欲しい」という願いをたどった冒険の終わりに、主人公とフィグ先生がたどり着いた結論です。
主人公は、ホグワーツ・レガシーの作中で多くの人と関わり合い、沢山の縁を繋いできました。古代魔術に対する、守護者たちの意見を尊重しつつもただ永遠に封印するのではなく他人を信じて一歩前に進むという答えは、多くの人と信頼関係を築いてきた主人公と、そんな主人公を見守り亡き妻の遺志を追い求めてきたフィグ先生らしい結論だと感じます。
■小鬼と魔法族の軋轢
小鬼と魔法族の軋轢や人種差別については原作でも触れられているところですが、ホグワーツ・レガシーではこの二種族の争いがメインとして描かれます。
本作のラスボスである小鬼・ランロクは、古代魔術を受け継ぐのは自分だと主張してその強大な力を狙っています。その理由は、作中で主に二つ挙げられています。
一つは、”品物の所有権はあくまでも作成者の小鬼にあって、人間に作成物を売ったとしてもそれは金を貰って貸しているだけに過ぎない”という小鬼独特の価値観によるものです。小鬼は人間に無い金属加工の優れた技術を持っており、彼らが作ったものを人間は買い取って重用しているのですが、人間が”買い取って自分の物になった”と思っている物は小鬼たちにとってはあくまでも”作成者の小鬼の物”なのです。ハリーポッターの原作でも、この価値観によって小鬼と人間の間でグリフィンドールの剣を巡った争いが描かれています。
ホグワーツ・レガシーにおいて、古代魔術の力が封じられている器は、小鬼によって作られた物です。その小鬼の子孫であるランロクは、古代魔術は器を作った小鬼の子孫である自分の物だと主張しています。
もう一つの理由は、かつてランロクが魔法族に理不尽に虐げられたからです。魔法族に友好的に接して魔法を教えてもらおうとしたランロクは、その甲斐虚しく魔法族にボコボコにされ、それ以来魔法族を信用しておらず強大な力を手に入れて魔法族に下克上を果たそうと考えています。そのために古代魔術の力を欲しがっているのです。
これらの理由について、個人的には種族間の価値観の相違は解決せずとも仕方無いが、自分が理不尽に傷つけられたからといって他人を理不尽に傷つけていいわけではないので、ランロクは止めないといけないなという考えを持ちました。
魔法族に劣った種族だと見られている小鬼たちの中には、ランロクに賛同して主人公達と敵対する者も多く居ますが、中には魔法族に友好的に接してくれる小鬼も居ます。後にランロクの弟だと判明するロドゴクという小鬼が、その代表です。彼はフィグ先生の妻・ミリアムに優しく接してもらった時から、「魔法族も悪い人間ばかりではない」という考えを持っておりランロクと対立しています。
そして、主人公もまたロドゴクと同じく「小鬼も命を狙ってくる悪人ばかりではない」という考えを持つ人間の1人です。サブクエストでは、主人公は依頼相手が小鬼であっても困っていれば隔て無く手を貸し、助けになる姿勢を見せます。また、ランロクを止めるために協力してくれているロドゴクを”小鬼だから”という理由だけで友人に悪く言われた時も、友人に迎合するのではなく怒りを露わにします。
ここで改めて振り返りたいのが、フィグ先生の「私たちは他者を信頼すべきだ」という言葉です。
ランロクはルックウッドという人間と手を組んでいるのですが、お互いに協力しながらも隙あらば自分が古代魔術を手に入れようとしており、表面上の信頼に過ぎません。実際に、シナリオの途中で欲しい情報をすべて手に入れたランロクはすぐにルックウッドと手を切り、そんなランロクを見たルックウッドは即座に彼へ死の呪文を唱えています。
ランロクとルックウッド/ロドゴクと主人公という小鬼と人間の協力関係は、対比して描写されています。ランロクとルックウッドがお互いを全く信用していないのに対し、ロドゴクと主人公はお互いを信頼して協力しており、ロドゴクが亡くなった際にも主人公は深く悲しんでいます。
こういった種族の壁を越えた信頼関係こそが、主人公が古代魔術を継承した理由だと私は感じます。この点については、次の項目でも触れたいと思います。
■“遺産”を受け継ぐ者
ホグワーツ・レガシーは、そのタイトルのとおり古代魔術という遺産(レガシー)を巡る物語です。また、レガシーという単語には転じて「次の時代に受け継がれていくもの」という意味もあります。
古代魔術という遺産を受け継ごうとする者は、作中で3人出てきます。前の項目でも触れた小鬼のランロク、守護者のうち1人の子孫であるルックウッド、そして古代魔術の力に目覚めた主人公です。
先述のとおり、ランロクは「古代魔術の器を作ったのは自分の先祖だから、古代魔術は自分のもの」と考えています。そしてルックウッドは、「自分は古代魔術の守護者の子孫なのだから、古代魔術は自分のもの」と考えています。しかし実際に古代魔術を操る力に目覚め、古代魔術を受け継いだのは、かつて古代魔術に関わった人々と何の関係もない主人公でした。
守護者たちは、古代魔術を暴走させるのではなく秘匿することを願っています。また、かつて古代魔術を研究していたミリアムは、古代魔術が善なることに使われると信じています。そして、フィグ先生は古代魔術を受け継ぐにあたって必要なものを「他者への信頼」だと言います。
古代魔術を受け継ぐために必要だったものは、ランロクやルックウッドが考えていたような”血筋”ではありません。種族を超えた他者との信頼を糧に、守護者たちや、フィグ先生夫妻の意志を引き継ぎ守っていく心こそが、遺産を受け継ぐために必要なものだったのではないかと思います。
主な登場人物の好きなところ
■ナツァイ・オナイ
グリフィンドールの生徒と、ちょっと危険だけどめちゃくちゃ楽しい冒険をして最後には心通じ合う友達になりたい!!という、一度は考える夢を叶えてくれるのがグリフィンドール生のナツァイと共に駆け抜けるクエストです。ハリーポッターシリーズ2作目あたりの雰囲気を思わせられる冒険活劇に、ナティと過ごす間いつも心が躍っていました。
ナティと主人公の出会いは、主人公が転入してから初めて受ける呪文学の授業です。入学したばかりで授業の内容はおろか教室に来たのすら初めての主人公に、ナティはすぐに「こっちの後ろの席空いてるよ!」と自分の隣に座るよう誘ってくれます。
それだけでも初めての授業にワクワクと心細さを一緒に感じていた心はかなり救われるのですが、更にナティは登校途中不慮の事故で学用品を無くした主人公へ、自分の教科書をそっと見せてくれます。その後もペアでする呪文の練習を一緒にしてくれたり、アクシオを使った引き寄せ試合がとても上手だったりと、初っ端から好きだ……お前のことが……の気持ちに包まれます。その他にも周りから避けられている生徒にも隔て無く声をかけている様子を人づてに知ることができたりと、ナティはグリフィンドールの印象に違わぬ人柄だと感じられます。
その後、初めて訪れたホグズミードで街を襲撃したトロールを退治する主人公を見たナティは、自分も勇気を出して悪を倒したいと言ってルックウッドと手を組んでいる悪党の1人・ハーロウを倒すべく主人公との冒険を始めます。
彼女との冒険で、特に楽しかったのは、ハーロウの拠点に忍び込み密猟者に捕まっているヒッポグリフを助け出すクエストです。呪文を駆使してこっそり根城へ侵入しつつ、最後には二羽のヒッポグリフに乗って敵の猛攻を避けながらナティと空を飛び脱出する流れは、危機一髪の冒険活劇と表現するのがまさにぴったりで、楽しそうに笑うナティや主人公につられてプレイヤーまで楽しさから笑ってしまいます。
学生生活の合間で一緒に冒険するうちに、ナティはとある過去について話してくれます。それは、ナティの父親が彼女を庇って亡くなった時の話です。
動物もどきだったナティの父はキリンに変身することができて、ナティは彼に乗って遊ぶのが好きでした。そうやって2人で遊んでいたところ、村の方からやってきたならず者の集団がナティを見つけ撃った弾を、父親は首を曲げてとっさに庇い亡くなったのです。ナティはその出来事を「父さんが死んだのは守る力が無かった私のせいだ」と引きずっており、それ以来正義の心を持って戦えない人のために戦うことを志しています。
いつも誰にでも明るく接しているナティが、涙ぐみながら過去を話してくれる姿からは、弱さを見せてくれた彼女からの信頼と、ずっと抱えてきた深い悲しみを感じます。
そんな彼女の悲しみに決着がつくのが、クエストの最後に起こる出来事です。遂にハーロウを追い詰め激戦の末に彼を倒したナティと主人公ですが、ハーロウは最後の力を振り絞って主人公に磔の呪文を放ちます。それを見たナティは、咄嗟に主人公のもとへ最速で駆けられるガゼルの姿になり、そのまま主人公を守って呪文を代わりに受けてしまいます。
その後医務室で療養することになったナティは、見舞いにきた主人公と話をします。この時のやり取りが、私は本当に大好きです。
幼い子供から成長し、父と同じ勇敢さを携え、自分が大切な人を守る立場になった時、ナティは初めて「父が自分を守って亡くなったのは、自分のせいではない」とすとんと理解します。この時の主人公の相槌が、途中からナティの心をほどいていくような優しい語りかけになっているのも含めて、すごく好きな会話です。
その後、ナティはO.W.Lの試験でまね妖怪(目の前に立った人が最も恐ろしいと思うものに化ける妖怪)を前にした時、父親を亡くした時の恐怖を克服して無事にまね妖怪を撃退する様子も描写されています。真っ直ぐな心根と勇気で、自分を苦しめていた罪悪感を自ら乗り越えるナティを取り巻く物語は、まさにグリフィンドールらしい勇敢さに満ちています。
もう一つ注目したいのが、娘を心配して「危ないことはやめなさい」と時折注意するナティの母親であるオナイ先生の存在です。オナイ先生は占い学を教えており、実際に授業を受ける場面もあります。
どこか神秘的な雰囲気をまとうオナイ先生ですが、ナティを心配する様からは1人の母親としての愛を感じます。実際に私もナティ周りのクエストを進めている間、ナティとの冒険楽しい~!!このままハーロウぶっつぶそうぜ!!となる子供心と、娘がこんなクソ危ないところに突撃してたらそりゃお母さんは心配するよ……!!!!!!という親心を慮る気持ちでよく板挟みになっていました。
親が子供を守って命を落とすと聞くと、やはり思い出されるのは原作の主人公、ハリーの過去です。ハリーとナティの寮が同じグリフィンドールというのもあり、どこか重なり合いを感じます。ナティとの冒険は、両親が娘を思う気持ち・娘が両親を思う気持ちが感じられる意味でも好きなお話です。
■ギャレス・ウィーズリー
魔法薬学の授業で、「顔にそばかすがあるウィーズリー姓の同級生男子」を見つけた瞬間、テンションが天井を突き破ったのはきっと私だけではないだろうと思います。ハリーポッターシリーズをミリしらの人でも、この設定を見ただけで主人公の親友が頭をよぎり、おっ!と反応したくなるのではないでしょうか。
ギャレスは「魔法薬学の神童」を自称しており、その名のとおり魔法薬学が得意です。その頭の良さと作る薬のお騒がせっぷりは、なるほど後にビルやパーシーなどの優秀な生徒を輩出し、フレッドとジョージが育ったウィーズリー家の人だな……としみじみしてしまいます。
そして当のギャレスですが、主人公への依頼が「先生の個室から薬の材料を盗んできてほしい」「お菓子屋さんの倉庫から薬の材料を盗んできてほしい」といった窃盗教唆なので思わず笑ってしまいます。変声期前のぽわぽわした声から飛び出る犯罪教唆発言にオイ!!!!!となりつつ、ウィーズリー姓の男子にホグワーツからホグズミードへの秘密の抜け道を教えて貰うという原作リスペクトを感じる展開にあてられると、まあ盗みくらいならやってもいいか……と思わせられるのがズルいです。
ちなみにその後主人公は、ポリジュース薬で校長に変身した時、わざわざギャレスに声をかけて「お菓子屋さんで盗みを働いたそうだな」と説教しています。やっぱ主人公も盗みの片棒かつぐの嫌だったのかな……。
叔母である副校長のマチルダに、薬の実験に巻き込まれる教師と同級生、果ては家族にまで手のかかる問題児と認識されているギャレスですが、彼の探求心は折れることなく自分の心の向くままに魔法薬学の研究を続けています。ギャレスの、好きなものに熱中してやまないところや誰にも縛られない自由さは、私がギャレスを“ウィーズリー”の家名に関係無く好きだなと思うところです。
■リアンダー・プルウェット
“ウィーズリー”ほどメジャーな苗字ではありませんが、“プルウェット”も原作に登場するキャラクターに関係のある苗字です。この苗字はロンの母親の旧姓であり、つまりロン達ウィーズリー兄弟はギャレスとリアンダーの子孫ということになります。それを裏付けるように、リアンダーの髪はどこか既視感のある赤毛です。
主人公が初めて受けた闇の魔術に対する防衛術の授業でセバスチャンとの決闘に負け、その後薬草学の授業では負け惜しみを口にする彼から初めに感じるのは、プライドの高さや高慢さといったものではないでしょうか。杖十字会の決勝でも、引き寄せ試合でも、主人公に負けるいち生徒に過ぎない彼は、いわゆる“かませ犬”のような印象を受けます。
しかし、私が彼を見る目が変わったのが、引き寄せ試合でリアンダーに勝った後の会話です。それまで高慢な態度をとっていたリアンダーは、引き寄せ試合で主人公に負けた時「別の生徒に引き寄せ試合で七連敗した」と明かし、それに対して主人公が「才能無いんじゃない?」とまあまあひどいことを言っても、怒らずに「面と向かって言われたくはなかったけど、そうかもしれない」と返します。このやり取りを聞いた時、私はそれまで自信満々な言動で繕われていたリアンダーの柔らかいところを垣間見た気がして、思わずグオオ……と呻きをあげてしまいました。
尊大に見える態度の裏で、リアンダーは恐らく自分に秀でた才能が無いことを自覚しています。そしてその上で、勝ち目の薄い試合に何度も挑める心も持っています。リアンダーは同級生の中でも比較的会話する機会の少ないキャラクターですが、この会話を見ていると、元々秀でているわけじゃない才能を伸ばすために、継続して努力できるところこそが彼の魅力ではないかと思います。
■アミット・タッカー
レイブンクロー生の中で、一番主人公と関わる機会の多い生徒がアミットです。様々な知識を蓄えており、授業で先生からあてられても淀みなく答えを返せるアミットは、特に天文学へ深い興味を示しています。主人公が初めて天文学の授業を受けた時は、「個人が持てる中で最も最高品質の望遠鏡を最近買ったから、僕のおさがりを貸してあげるよ」と言って望遠鏡を貸してくれます。その望遠鏡も主人公曰く「とてもおさがりには見えない」ほど性能が良い物らしく、その後の会話でも「親が沢山の蔵書を持っている」といった話が出てくるあたり、恐らく相当実家が太いんだろうなと察せられます。アミットの学問に対する関心に、それを支えうるだけの環境があったことが素敵だなと感じられる一幕です。
アミットは特に天文学の話になるとノンストップで嬉しそうに沢山話をする、いわゆるオタクっぽい性格です。天文学の授業ではアミットから星見台について教えてもらった主人公が、そのまま彼と校内にある星見台を探すイベントが発生するのですが、初めは意気揚々と出発したアミットが蜘蛛の巣を怖がって「蜘蛛がいたりしないよね?」と腰が引けているのに対し、主人公が蜘蛛の巣を焼き払いながらズカズカ前に進んでいく図には笑ってしまいました。アミットの即落ち二コマっぷりも、主人公の豪胆っぷりも面白過ぎる……。
無事星見台に着いたあと、星座を見つけながら「君は最高の天文学者になるはずだから望遠鏡を譲ってあげる」と言って、「いつか歴史家になり回顧録を書いて出版したい」というアミットの夢を「素敵な夢だね」と肯定する主人公のやり取りは、校内でのささやかな冒険と同級生と育む友情が合わさって、大好きな場面の一つです。
知識面は十二分に優秀なアミットですが、戦闘面ではそうもいかないようで、同級生と敵のアジトへ突撃する際に他の生徒が15歳とは思えないほど勇ましく戦う中でアミットはよく怖がって悲鳴をあげています。そんな彼の性格を知ってか、主人公も他の生徒には言わない「僕の隣にいれば大丈夫だから」「もうすぐで目的地に着くよ!」といった気遣いの言葉を頻繁にアミットへかけます。このクエストの後にセバスチャンと蜘蛛だらけの巣に突入したり、ナティと悪党の拠点にカチコミをかけたり、ポピーと怒り狂うドラゴンが火を吐いて攻撃してくる巣へ卵を返しに行ったりする主人公を見て、やっぱりこの4人の肝の太さが尋常ではないだけかもしれない……と再認識させられます。
敵のアジトを攻略し終わった後、アミットは荒事に巻き込まれたのを「最悪だった」と言いつつ友好的な姿勢は崩さないでいてくれるので、怖がらせてしまったけど主人公との友情に亀裂が入らなかったみたいで良かった……と胸を撫で下ろしていたら、誤訳なのかなんなのかそれまでタメ口で接してくれていたアミットが「このことはいつか本に書きますよ」とものすごい勢いで心に壁を作ったかのような敬語で言ってきたので ごめんって!!!!!!!! と申し訳なさでいっぱいになりました。
ナティ、ポピー、セバスチャンと他の三寮の生徒にはパーソナリティーに深く関わるクエストがあるのを思うと、レイブンクロー生のアミットとももっと色々冒険したかったしお話したかったよ~~~!!!!と思うのですが、本編の描写だけでもアミットのことはとっても大好きです。校内で「アミットは既に5年生の最後に受けるO.W.L(普通レベル魔法試験)の勉強をしている」という噂を聞いた時は、試験前に慌てて知識を詰め込むのではなく日常的に勉強を続けられる姿勢が好きだな~となり、それに続けて「友達がいないから勉強ばっかりしてるんだよ」と陰口が聞こえた時には友達ならいます~~~~!!!!!私がアミットの友達です~~~~!!!!!!!!!と心の中で腕を振り回してしまいました(ホグワーツ・レガシーでは普通に校内で生徒同士の陰口が横行しており、そこも原作再現度が高いです)。
また、ホグズミードでクエストを進行している時、アミットとすれ違うと主人公とアミットが挨拶をする特殊会話が発生するタイミングがあります。
「やあ、外で会えるなんてうれしいよ!」
「うん、こちらこそ」
という気さくなやり取りには、お互いが日頃から抱いている友情が滲んでいます。
星空の下で繋がったアミットとの友達関係は、ホグワーツ・レガシーを通して過ごした日々の中で、間違いなく大切に感じられるものの一つです。
■エバレット・クロプトン
ホグワーツに入学したらやってみたいことの一つに挙がるだろう「箒に乗って空を飛んでみたい」という希望を、ホグワーツ・レガシーでは叶えることができます。そのために受ける飛行訓練の授業で、主人公と交流するのがエバレットです。
授業の中で、主人公たちは練習として先生が決めた学校の周りを一周するコースを飛ぶのですが、その途中でエバレットは決められたコースを外れホグワーツをぐるっと観光して回るように飛ばないかと主人公を誘います。おそらく転入してきたばかりの主人公を案内したいという思いもあって声をかけてくれたのだろうこの誘いに乗って飛ぶホグワーツの上空は、映画で見たホグワーツの景色を体感できる最高のロケーションです。時折挟まれるエバレットの解説も、彼の親しみやすさが感じられて聞いていて楽しいです。
最終的に主人公とエバレットはコースを外れて飛んでいたのを先生に見つかって減点されてしまうのですが、それでも楽しかったと心から思える授業の内容です。先生に二人揃って叱られた後、「でも叱られるだけの価値はあっただろ?」と笑うエバレットに「減点されてでも寄り道した甲斐はあったよ」と肯定の返事を返すやり取りは、ホグワーツでちょっとした悪さをして怒られつつも「楽しかったよね」と友達と笑い合ってみたい!!の気持ちを叶えてくれた、大好きな会話です。
また、エバレットは5年生最後に生徒全員が受験するO.W.L.の試験で隣の席のアミットの答えをカンニングしようとしている姿も見られます。知識を誇るレイブンクローらしからぬ行為に思わずオイ!!!!となりつつ、学生らしい行動に笑ってしまいました。
アミットとエバレットの、オタクっぽい好きなもの語りや心地良い親しみやすさを見ていると、自分が男だったらレイブンクローに入ってこの人たちとわいわい過ごすのが絶対楽しいだろうな……という気持ちが湧きます。レイブンクローの頭が良く厳格という何となく抱いているイメージを、彼ら2人に限らずホグワーツ・レガシーに出てくる同級生たちは、良い方向性に塗り替えてくれたと感じます。
■ポピー・スウィーティング
ハッフルパフの生徒であるポピーは、主人公と動物学の授業で出会います。魔法生物が大好きなポピーは、主人公へ魔法生物のお世話の仕方を教えてくれます。
この先もポピーと挑むクエストには沢山の魔法生物が登場するのですが、これは同じ魔法界を舞台にしたファンタスティック・ビーストの主人公であるニュート・スキャマンダー(ハッフルパフ出身)が魔法生物について研究している人なのも影響しているのかなと思います。クエストに出てくる魔法生物は、どれも可愛かったりかっこよかったりして、ポピーとのクエストを終える頃には「絶対ホグワーツレガシーをクリアし終わったらファンタビの映画観よう~!!!!」の気持ちになりました。
ポピーは魔法生物を大切にしており、魔法生物を傷つけようとする生徒には怒りながら立ち向かいます。魔法生物と関わってばかりのポピーは周りから変人扱いされており、この時も魔法生物をいじめていた生徒はいじめをやめるどころかポピーをからかって笑うのですが、そこに「それは笑えないね」とポピーを守るように割って入る主人公が突然のスパダリでびっくりします。
私事ですが、私がキャラメイクした主人公はハッフルパフの男子生徒だったので、ポピーと一緒にいると色味があたたかくてほのぼのとした気持ちになりました。
ポピーを庇い魔法生物に優しく接する主人公へ、ポピーは「会ってほしい子がいる」と言って仲良しのヒッポグリフを紹介してくれます。ハイウィングと名付けられたこのヒッポグリフは、主人公とナティがハーロウのアジトに突入した時助け出したヒッポグリフでもあります。冒頭でも書きましたが、原作でお馴染みのヒッポグリフに挨拶する体験ができるのもこのくだりです。
ポピーとの冒険で特に印象に残っているのは、密猟者から取り戻したドラゴンの卵を巣に返しにいくクエストです。この時のドラゴンは直前まで密猟者に捕まっていたことから荒れ狂っており、ポピーと主人公はドラゴンが吐く炎を必死に避けながらドラゴンの巣へ向かうことになります。いつも闇の魔法使いや密猟者の集団を単騎で相手取る主人公も、さしものドラゴン相手には「炎を避けながら巣に向かおう!!」と言うポピーへ「無茶言わないで!!!!」と焦った声を出すほどです。こうして振り返ってみると、やっぱポピーってめちゃくちゃ勇ましいな……。
このクエストはものすごく危険ですがその分緊張感があって楽しく、迫力も満点です。最後に卵を返した時、ドラゴンと少し心通じ合えたような気がするやり取りには、主人公とポピーと一緒に息を呑みつつ達成感が感じられました。
一緒に魔法生物を助ける活動を続けるうちに、ポピーは身の上話をしてくれます。それは、魔法生物を愛するポピーの両親が密猟者だったというものです。密猟者のキャンプというおおよそ子供が育つような環境ではないところで育ったポピーは、魔法生物を傷つける生活にどうしても馴染めず、両親に捕まっていたヒッポグリフのハイウィングに乗って祖母のもとへと逃げ出します。それからは魔法生物の研究をしている祖母と共に暮らしていた、というのがポピーの過去です。
まさかの事実に、初めてこの話を聞いた時は、そんなゴミ環境でもなおポピーが魔法生物を愛する心を持って育ってくれて良かったな……とこれまでの冒険がより沁みる心地がしました。「この話を初めて聞いてくれる人がいて嬉しい」「話してくれてありがとう」と交わされるポピーと主人公の会話からは、2人が授業を一緒に受けてから始まった関係の得難さを感じられます。
クエストの最後には、ポピーと主人公はケンタウルスの助けを借りて、絶滅危惧種であるスニジェットという鳥を保護しに向かいます。ポピーと一緒に探索する最後のダンジョンは、遺跡に自然が生い茂り光が差している、とても美しい場所です。まるでポピーの魔法生物を愛する心を形にしたようその場所を歩いていると、密猟者に追われているとは思えないくらい穏やかな気持ちになります。
ケンタウルスの中にはポピーと主人公を密猟者の仲間だと思いすぐさま殺そうとする者まで居ましたが、ポピー達が魔法生物を守るために戦う姿を見て、最後には一緒に密猟者と戦ってくれます。また、ポピーと主人公に唯一友好的に接してくれたドランという名のケンタウルスは、2人を初めに殺そうとしたエレクという名のケンタウルスと兄弟だったとも最後に分かります。
この流れを見て思い起こされるのは、ランロクとロドゴクの兄弟のことです。魔法族を憎むランロクと魔法族に親切にされて以来魔法族を信じているロドゴク・密漁を繰り返す人間を憎むエレクと自分たちを攻撃しない人間には友好的に接するドランの関係は、どこか重なって見えます。ランロクとロドゴクは最後まで分かり合えないままでしたが、ドランを信じて人間であるポピーと主人公の味方をしてくれるようになったエレクの姿を見ていると、種族を超えた信頼を夢見たロドゴクや、彼に親切に接したミリアムはきっと間違っていなかったのだという気持ちにさせられます。
ケンタウルスと力を合わせ、スニジェットを見つけたポピーと主人公へ、ドランは「これは君たちの功績だよ。密猟者にはできないことを、やってのけた」と話します。種族の違う生き物を軽んじて暴力をふるうのではなく、種族を問わず命を尊び心を繋げ合うことで得られるものの美しさが描かれたこのシナリオは、メインシナリオで人間と小鬼という異なる種族間の争いが大きなテーマになっているからこそ、より大切なことが話されていると感じます。また、ドランからの言葉は、密猟者の両親のもとから飛び出して、彼らと同じにはなるまいと魔法生物を愛し続けてきたポピーへの、最大の祝福でもあるのだと思います。
ポピーと主人公は最後に自分たちの冒険を振り返り、ポピーが今まで人間の友達と三本の箒に行ったことがないことを明かし、その上で「人間の友達の魅力が分かってきた」「今度一緒にバタービールを飲みに行こう」と誘ってくれることで締めくくられます。他に深く関わる生徒であるナティやセバスチャンは主人公の他にも友達が沢山いる印象だったため、ポピーのこのカミングアウトには主人公共々驚きましたし、そんな彼女が主人公を誘って繰り広げた冒険の輝かしさがいっそう際立った気持ちになりました。
そして最優秀寮杯に向かう前、ナティと並んで大広間に向かいながら一緒にこちらへ手を振ってくれるポピーの姿を見た時は、2人への愛が溢れてやまない気持ちになりました。これから少しずつポピーの交友関係が広がっていったらいいなと思いますし、何より彼女の魔法生物への愛が変わらず咲き誇り続けたら、これほど嬉しいことはないと感じます。
■セバスチャン・サロウ
※クエストの内容が内容なのでこの項目だけ異様に長いです。
ホグワーツ・レガシーにおける人間関係の湿度を一身に背負っているのがこの男、セバスチャン・サロウ!!!!!!! 最後まで彼関連のクエストをクリアした時は、あまりの湿度に全身ぬれねずみになりました。ここだけ感情の重力がすっごい。
以下、セバスチャン周りのクエストを振り返っていくのですが、途中でセバスチャンに割と本気でキレている部分があるのでご注意ください。先んじて結論だけ述べておくと、私はセバスチャンのことが他の同級生たちと同様に大好きです。
主人公が初めて受ける闇の魔術に対する防衛術の授業で、決闘の相手になるのがセバスチャンです。セバスチャンは決闘の常勝者として学内では有名であり、そんな彼に初めての決闘で勝ったことから主人公は一躍有名人になります。この決闘をきっかけに二人は交流を始めるのですが、特に思い出深いのは図書館の禁書の棚に二人で忍び込んだ時のやり取りです。
校則を破って禁書の棚に潜入した時、セバスチャンと主人公はゴーストに見つかって司書へ告げ口をされてしまいます。ピンチの状況で、セバスチャンは「自分は普段から司書の罰則を受けるのは慣れてる」「友達に貸しを作るのが好きでね」と言って、1人で司書のもとへ向かいます。この時点で主人公とセバスチャンは出会って間もない関係ではあるのですが、しれっと主人公を「友達」と呼ぶ点が好きなポイントです。
そして主人公が目的の本を見つけ、図書館から抜け出そうとした帰り道、主人公はセバスチャンが司書から「あなたに命令した生徒がいるなら言いなさい」「あなたは賢いんだからバカなことはやめなさい」と言われているのを物陰から見つけます。 セバスチャンはスリザリンの生徒であり、多くのプレイヤーにとってスリザリン生といえば意地悪な人間が多いイメージがあると思います。だからこの場面でも、もしかしたら自分のことを告げ口されるんじゃないか、と不安に思うでしょう。
しかし、セバスチャンはそんな予想を裏切って「誰もいません。僕だけです」と最後まで主人公を庇いきります。主人公がこのやり取りを見ていたことにセバスチャンは恐らく気づいておらず、彼はその場の体裁などではなく本心からつい最近知り合ったばかりの友人を庇ったのだと分かります。この場面を見て、私は思わずうおおおおかっけえ~~~!!!!とテンションが上がりました。
その後、セバスチャンは主人公に「自分にはアンという双子の妹がいて、彼女は小鬼に闇の魔術で呪いをかけられ苦しんでいる。良かったら会ってやってほしい」と告げ、主人公を実家に招待します。このあたりからじわじわと、なんかこの人他の同級生たちに比べて距離の詰め方が湿ってるなの感覚が襲ってきます。
誰もが治療を諦めている、双子の妹にかかった呪いを治したい。これがセバスチャンの願いであり、主人公が彼に手を貸す理由です。主人公はこの時点からサブクエストで他の生徒の依頼を聞き、それを大抵達成できているため、セバスチャンの話を聞いた時はきっとセバスチャンの妹もなんやかんやあって治療法が見つかって最後はハッピーに終わるんだろうなと思っていました。
プレイヤー視点でなんか様子がおかしいなとなってくるのが、クエストクリア報酬がクルーシオ(磔の呪文。許されざる呪文の一つとされており、基本的に使用したらアウト)のクエストが発生したあたりからです。冒頭で、私が持っていた数少ない事前知識の一つに「主人公が許されざる呪文を使える」というものがあったと書きましたが、ホグワーツ・レガシーで主人公が許されざる呪文を使うようになる過程は、決して激しい闇堕ちイベントがあったりいかにもヤバい本を見つけたりといった劇的なものではありません。「命の危機を切り抜けるため必要だから」「戦闘で便利だから」といった軽い気持ちで、明らかにヤバいとわかっていても止められない道を友達と一緒にどんどん転がり落ちていくように覚えていくのです。許されざる呪文使って無双しようぜ!キャッキャッ!となっていたプレイヤーを絶対嫌な気持ちにさせてやるぜ!!!!という気概を感じます。あまりにも正し過ぎるし、犯罪防止啓発のビデオかな? この演出はゲーム内で許されざる呪文を扱うにあたり、かなり好きな演出のひとつです。
後の項目で詳しく話すセバスチャンの親友オミニスは、闇の魔術を忌避しており、セバスチャンが妹の呪いを解くためといって闇の魔術に傾倒していくのを必死に止めようとしています。原作を知っていて、許されざる呪文がどれだけヤバいかも知っているプレイヤーからすれば、ずっと真っ当なことしか言ってないオミニスに全面的に同意したい気持ちなのですが、主人公はこのあたりの展開だと割とどの選択肢を選んでもセバスチャンに協力的です。いうて主人公もセバスチャンも15歳くらいだし……主人公は魔法界にそこまで詳しくなさそうだし……しかも主人公は同じように首を突っ込んで手を貸すことで大抵の依頼は解決できちゃうし……セバスチャン寄りの姿勢になるのは分かる……。私もハリーポッターシリーズの前知識も無く、主人公たちと同年代の状態でこのゲームを遊んだら、闇の魔術を探るのはやめろとずっと注意してくるオミニスに「口うるさいなあ」と思っていたかもしれません。
ここから主人公は、妹の呪いを解くために闇の魔術について情報を得たいセバスチャンvsセバスチャンの闇堕ちを止めたいオミニスの間で板挟みになります。セバスチャンと闇の魔術の手がかりを求めて冒険に出る度、いつの間にかついてきていたオミニスに「2人とも何してるんだバカタレ(意訳)」と詰められるので、オミニスの正しさと現状のままならなさに胃がキリキリします。ぽっと出の主人公に4年来の親友同士の仲介を任せるな!!!!と思う瞬間も何度もありましたが、セバスチャンの「友達なんだから妹の呪いを何をしてでも解きたい気持ちをわかってほしい」という友情と、オミニスの「友達だからこそ道を間違えそうになっている時は引き止めたい」という友情が、2人の仲がぽっと出ではないからこそ拗れているのは明らかで、そんな中に セバスチャンと仲良くしていて家族の事情も知っていて魔法の才能があり口が上手くお人好しの同級生が現れたらまあこうなるよな……の納得も強かったです。
終盤になるとセバスチャンは本格的に様子がおかしくなっていき、それまでセバスチャン寄りの姿勢だった主人公が明確に彼と対立するのが、ランロクを止めるため協力している小鬼のロドゴクを「妹に呪いをかけたんだから小鬼は全員悪い奴だ」と蔑ろにされた時です。友人に対して基本友好的な主人公が、妹の呪いを解こうと躍起になっているセバスチャンへ「アンは治らないんだから諦めろ」と怒る叔父のやり取りを知っていながら、この時ばかりは「叔父さんの言うとおり止め時を分かってないんだね」とキレッキレの煽りを返した時は、ついに言っちゃった~~~~!!!!!!と思わず笑いが出ました。主人公のたとえ友達相手でも譲れないラインが、“他の友達を悪く言われること”であるのが分かり、個人的にとても好きな場面です。
その後セバスチャンは妹の呪いを治したいが故の焦りと苛立ちが目立つようになり、主人公も言葉を尽くして落ち着くように説得します。また、古代魔術で呪いによる痛みを取り除けるかもしれないと分かった時も、喜ぶセバスチャンを安易に肯定せず、古代魔術の危険性や守護者たちの意見について話します。オミニスは初めからそうだったけど、主人公も15歳やそこらで感情的になっている友達をここまで冷静に諫められるの、マジで偉過ぎるな……とこのあたりの会話は終始感心していました。
そして許されざる呪文の中でも最強格のアバダケダブラを習得するクライマックスのクエストでは、今までセバスチャンから届いていたふくろう便がオミニスから届きます。「セバスチャンの様子がおかしいから一緒に地下墓地へ行こう」という誘いからは、主人公に手紙を飛ばさなくなるほどセバスチャンがいよいよおかしくなっているんだな……と事態の切迫を感じられます。
地下墓地で闇の遺物を巡り本格的に叔父と対立したセバスチャンは、口論と戦闘の末叔父をアバダケダブラで殺してしまいます。正直これまでの叔父の態度が、双子の妹を失いかけて不安定になっている少年に対するものとして適切でなかったのは事実ですし、更に彼は主人公に対しても「お前も闇の魔術を使っているんだろう」と決めつけ食ってかかってくるためプレイヤー視点でも印象が良くなかったのは確かです。それでも突然亡くなった兄夫妻の子供を引き取った挙句片方の子供は呪いにかけられて苦しんでいる中、保護者として満点の対応ができるかと言われれば誰でも厳しいと思いますし、少なくとも殺されて仕方ないほど悪いことをしていたわけではありません。
そして何より、叔父が最後の最後にそれまでの高圧的な口調を収めて「もうやめなさい」と保護者らしい口調でセバスチャンに声をかけた時、私は本能的にここがセバスチャンが後戻りできる最後のチャンスだと感じました。それだけに、次の瞬間セバスチャンがアバダケダブラを放って叔父を殺したのを見た時のショックは大きかったです。
オミニスは、セバスチャンと主人公に初めからずっと「闇の魔術は無害なように見えて危険だと気づいた時には既に手遅れの呪文だから、初めから近づかない方がいい」と言っているのですが、この話はまさに“手遅れ”になったこの場面でより染みるものがあります。思春期の不安定な時期に保護者ともめて、ほんの少しでも「こんな奴居なくなってしまえばいい」と思った時、何の準備も無く強い衝動を持って杖を振り呪文を唱えるだけでそれが叶えられてしまう手段が手元にあったらと思うと、死の呪文の危険性を改めて感じてぞっとします。
地下墓地にやってきて、セバスチャンが叔父を殺したと悟ったアンは、デパルソでセバスチャンを吹き飛ばし、全方位インセンディオで亡者を焼き払い、ポンバーダでセバスチャンが読んでいた闇の魔術に関する本を処分し、「お兄ちゃんのせいよ」と悲しみや憎しみが籠った言葉を吐いて、姿くらましで叔父の死体ごと消えていきます。この的確な判断力とあらゆる魔法を使いこなせる才能を見るに、ホグワーツに在校していた時は兄と同じく優秀な生徒だったんだろうな……とアンの学生時代に思いを馳せたくなる一幕ですが、そんな学生時代はもう戻ってこないところまでセットで叩きつけられるのでプレイヤーは打ちのめされます。
個人的にえげつないなと思ったのは、主人公がセバスチャン以外の同級生から依頼されてこなすクエストの中に「同級生の育て親である叔父の命を救う」「呪いにかかって入院している同級生の弟の呪いを解いてあげる」といった内容のものがあるところです。他のクエストでは叶えられるような願いが、セバスチャン周りにおいてはことごとく叶わないところも、このクエストの重みを増していると感じます。
ホグワーツ・レガシーでは他の同級生とマップを散策する時、NPCの後をついていくという操作があるのですが、この操作は地下墓地から出ていく時にも行います。NPCについていくことで知らない場所を教えてもらったり見つけてもらったりするといった他の場面と違って、ついさっき通ったばかりの道をただ逆戻りするだけにもかかわらず“叔父を殺しパニックになったセバスチャンを追いかける”操作をプレイヤーの手で行うこの場面では、最悪の事態が起きてしまったやりきれなさやこれからセバスチャンはどうなってしまうのかという焦燥を手の動きで感じることができ、ホグワーツ・レガシーが映画ではなくゲーム作品で良かったと思える場面です。
この後、セバスチャン、オミニス、主人公は避けて通れない“セバスチャンの今後の話”をします。「アンが叔父を一人で埋葬した」というあまりに辛過ぎるオミニスからの話に「アンのためだ」とこの期に及んで妹を理由にして、主人公へ「自分がアンの傍にいられるようオミニスを説得してくれ」と頼んできた時は、プレイヤーの私は感情が先走ってもうお前投獄されろ!!!!!!!!と個人的な怒りポイントを踏み抜かれてブチギレました。妹のためも何も、お前がやった行動の結果でアンは悲しんでるって話をオミニスはしてるし、明確に妹本人から「お兄ちゃんのせい」とも言われているのだが……!?!?!?!? ここでセバスチャンが憔悴していたり心から叔父を殺したことを後悔している様子であったりアンの言葉をしっかり受け止めている様子であれば、迷わずに庇っていたと思うのですが、予想を超えるアンの話を何も聞いてないっぷりに頭を抱えて本格的に選択に悩むこととなりました。
セバスチャン周りのクエストは、「謎解きのギミックに必要な3つの燭台が、協力し合っているセバスチャンと主人公がやってきた方向に2本立っていて、2人と意見が対立しているオミニスのいる方向には遠く離れて1本立っている」という描写や、「スリザリンの書斎を散策した後、同じ寮に帰るはずのセバスチャンとオミニスが別々の方向に歩いていく」という描写など、画面作りが綺麗なところが多いです。その中でも、セバスチャンの今後について話し合う時に、真っ向から対立するように立っているセバスチャンとオミニスの姿からは、重い選択が迫っているのだと言葉がなくとも伝わってきて息を呑みました。
ここでプレイヤーは、セバスチャンをアズカバンに引渡すかどうかの選択肢を迫られます。この選択は本当に絶妙で、プレイヤーによってどちらの選択を選んでいてもおかしくないと思います。
私も心から悩んだのですが、叔父を殺してなお「妹のためにやった」と宣っているセバスチャンをこのまま問答無用でアズカバンに送ってしまえば、彼がこの先間違いに気づく機会が一生失われてしまうこと・妹を救うためとはいえ周りの制止を振り切った闇の魔術への傾倒や叔父の殺人は間違いだったこと及びそれに対する自分が廃人になる以外の償いについて、賢いセバスチャンなら今後一生考え続けていけるはずだという僅かに残った信頼を理由として、アズカバンに送らないと決めました。ただしアンとはマジで接触禁止になってくれという気持ちが選択肢を選んだ当時は一番強かった気がしますし、セバスチャンが成人してるかセバスチャンがもう少しアホかセバスチャンが友達でも何でもない他人かアズカバンが普通の刑務所かのどれかだったらまず間違いなく引き渡していたと思います。
叔父殺しについてアンを理由にしようとするセバスチャンに一瞬マジでキレた以上、自分の判断には「兄を失うアンが可哀想だから」「親友を失うオミニスが可哀想だから」といった他人を持ち出した理由は使わないと決めていたのですが、それはそれとしてオミニスを説得する時に「兄まで失ったらアンが可哀想だよ」の方向で攻める主人公には、そう言うのがオミニスには一番効果的だろうなと納得すると同時にこいつオミニスの弱点を突いて説得するのが上手過ぎだろ……と畏怖を覚えました。
セバスチャンをアズカバンに引き渡さないと決めてからはずっと、「このまま何もかも勘違いしたままで廃人になられても無意味だと思って引き渡さないことにしたけど、この後セバスチャンが特に反省せずストーリーが終わっていったらどうしよう……」と頭を抱えていました。それだけに、妹に呪いをかけたのは小鬼ではなかったから主人公の小鬼の友達を悪く言うのは間違いだったと理解し、「主人公がフィグ先生を弔ったように、自分も叔父さんを心から弔えたらいい」「やってしまったことは戻らないけど罪を償うため努力することはできる。信頼を裏切り続けた自分に味方してくれる君とオミニスに感謝してる」と言ってくれた時はその言葉が聞きたかったんだよ…………!!!!!!!と男泣きしましたし、感情のままに彼をアズカバンに叩き込まなくて良かったとも思いました。そしてちゃんとアンと接触禁止になっているのも個人的には心から安心しました。償いの道は決して緩やかなものではないと思いますが、支えてくれる友達がいればきっと大丈夫だろうと、ひときわずっしりとした人間模様を描いていたこのクエストを終えた後だと思えます。
主人公とセバスチャンの最後のやり取りで、本筋以外の部分で個人的にいいなと思ったところは、前を向いて贖罪の道を歩もうとするセバスチャンへ主人公が「でも信じてるよ。闇の魔術に対する防衛術の初日から、君は他とは違うと思ってた」と伝える場面です。スリザリンの書斎に向かう時、古代魔術を使う主人公や蛇語を話せるオミニスといった特別な力を持つ二人を見て「君達といると疎外感を感じる」と言っていたセバスチャンの、許されざる呪文を扱える能力や闇の遺物によって手に入れた亡者を操る能力ではなく、闇に抗う姿勢こそを主人公は特別だと思っているという着地点が、とても綺麗だと思いました。今思うと、その後闇の魔術に傾倒していくセバスチャンと初めて出会った授業が、闇の魔術に対する防衛術の授業であるのも、なんだか不思議な縁があるような気がしてなりません。
もうひとつセバスチャン周りのクエストで触れたいのは、ナティのクエストではルックウッドという悪党との対決と重ねるようにハーロウとの対決が、ポピーのクエストでは人間とゴブリンの異種族間の軋轢や信頼と重ねるように人間と魔法生物の異種族間の軋轢や信頼が描かれているように、セバスチャンのクエストでもメインシナリオと重ねられていると考えられる部分がある点です。それは、家族の痛みを取り除くために暴走していったイシドーラと彼女を止めようとした守護者の話です。クエストの途中でセバスチャンと一緒にイシドーラの記憶を見るくだりがあるのもあって、父を治療したいと願い身に余る魔法に手を染めていったイシドーラの姿は、妹の治療のために闇の魔術へ手を染めていくセバスチャンの姿と重なります。
イシドーラが取り返しのつかなくなるところまで暴走した時、守護者たちは彼女を止めるため死の呪文でイシドーラの命を奪いました。イシドーラと守護者たちは、完全に道を分かち決別しています。それでは、イシドーラと同じく暴走していたセバスチャンと、彼を止めようとしていた主人公やオミニスの関係はどうでしょうか。
セバスチャンをアズカバンに引き渡すと、主人公とオミニスは暴走したセバスチャンと決別することになります。これはイシドーラと守護者たちの結末と同じと考えていいでしょう。実際に守護者たちはイシドーラを止めることで古代魔術の暴走をずっと押しとどめている点からも、その選択が間違っていたとは思いません。
しかし、イシドーラと守護者たちと異なり、セバスチャンと主人公・オミニスは完全な決別以外の選択をとることができます。取り返しのつかない間違いを犯してしまったセバスチャンをそれでも信頼し、彼の贖罪の気持ちを信じて、彼を支えながらこれからも友人であり続けること。この選択は、フィグ先生と主人公が古代魔術を前にして最後にたどりついた、「守護者たちのように誰も信用せずこの魔術を永遠に封じるのではなく、信頼できる人達にも事情を話して助けてもらう」という答えに、通ずるものがあると感じます。
セバスチャンをアズカバンに引き渡す選択肢と、引き渡さない選択肢。どちらにも間違いや正解は無いと思いますが、新たに古代魔術の守護者となる主人公が、かつての守護者たちと異なり力に呑まれて暴走した同輩と決別するのではなく更正を信じる選択ができるところには、大きな意義があると思います。
改めて振り返ると、感情のジェットコースターに乗ったような気分にさせられるクエストだったなあと思います。正直並大抵のキャラクターだったら見限っていてもおかしくないくらい、叔父を殺した直後のセバスチャンの態度はだいぶ酷かったな……と個人的に思っているのですが、色々あったし一瞬好きなキャラ相手とは思えないくらい本気でブチギレかけたけど何だかんだで大好きという形で決着がつきました。主人公が何をどう選択しても悪い方へと突き進んでしまうセバスチャンに、最後の最後、彼を引き渡すかどうかの選択を選ぶことで唯一彼の今後に大きな影響を与えられるという点には、考えれば考えるほど感情を揺さぶられます。
他の生徒たちと違って、主人公はセバスチャンの悩みを解決することはできませんでした。それどころか、善意とはいえ初めはセバスチャンの暴走に手を貸すようなことすらしていました。むしろプレイヤーから見れば「自分がセバスチャンと出会わなければ、ここまで酷い事態にはならなかったんじゃないか」とすら思える状況です。
それでも、杖十字会でペアを組んで協力して戦い、こっそり二人で夜の図書館に忍び込み、新しい呪文を教えてもらって、密猟者のキャンプや蜘蛛の巣喰う洞窟を一緒に探索して、「スリザリンなのにいい人だね」なんて軽口を許される間柄になった、セバスチャンと過ごした日々が楽しかったのも事実です。セバスチャンの方もこういった日々が楽しかったと感じてくれていたらいいなと思うと同時に、最後にセバスチャンがオミニスや主人公の助けを借りて良い方向に進んでいこうとしているのを考えると、セバスチャンと主人公は間違いなく「あなたと出会えて良かった」と伝え合えるような関係性なのだと思います。
それにしてもこの一連の出来事が、順調にクエストを進めた場合9月に主人公が入学してからクリスマスツリーが飾られる12月にセバスチャンをアズカバンに引き渡すか決定することを思うと、3ヵ月で背負っていい友情の重さではない……。原作に出てきた「スリザリンではもしかして 君はまことの友を得る」という歌の意味を、セバスチャンと付き合っているとより痛感します。
双子の妹が呪いにかけられ見る影もないほど苦しんでいるというイレギュラーな出来事に突き当たった結果、読書で得た知識を吸収し活用できる賢さ・家族や友人などの身内への愛情・目的のためなら規則を破ることもいとわない意思の強さがなんかもう全部悪い方向に突き進んでいったセバスチャンですが、これらの要素は間違いなく彼の美点でもあります。中盤から終盤にかけてプレイヤーの心を色んな意味で乱し続けたセバスチャンは、どうすれば犯してしまった大き過ぎる間違いを償えるのか、一生考え続けながらも、友人と助け合い前を向いて生きていってほしい大切な友達の一人です。
■オミニス・ゴーント
ひとつ前のセバスチャンの項目でも何度も名前が出てきたオミニスですが、改めて彼についてこの項目で話をしたいと思います。 “ゴーント”という苗字は、原作でも有名なヴォルデモートの母方の姓です。ゴーント家はホグワーツの創始者の一人、サラザール・スリザリンの直系にあたり、オミニスも例に漏れずスリザリン寮に組み分けされています。
初めてこの苗字を見つけたのが、主人公がセバスチャンに初めての決闘で勝った後すれ違いざまに「サロウに勝ったからって調子に乗るなよ」とオミニスからいきなり喧嘩を売られた時だったのですが、ウワーッこの人苗字が苗字だしスリザリンの身内が負けたらムカつくのか!?と思っていたら、その後オミニスがそっとセバスチャンの隣に座るのを見て「寮がどうこうとかじゃなくて友達が負けたから悔しかっただけか~~~!!!!!!」とわかりまともに話してもいないのに好感度が爆上がりしました。それを見て以来心の中でそっとセバスチャンとオミニスの友情を応援しよう……の気持ちを抱いたのですが、まさか応援は応援でも揉めてる二人の板挟みにさせられるとはな……。
ゴーント家は純血主義を掲げており、原作では親族間での婚姻を繰り返した結果精神異常者が多く生まれ、最後には莫大な遺産を浪費して頭のおかしくなった家族全員がボロ小屋で過ごしていたと語られています。オミニスの目が生まれつき悪く、魔法の杖を白杖代わりにして歩いているのも、近親婚を繰り返した弊害のように思われます。
原作でも語られているとおりオミニスの家族はかなり過激な純血主義者であり、スポーツと称してマグルにクルーシオをかけて遊ぶというとんでもない趣味を家族が持っている激ヤバ家庭環境です。
そんな環境で育ちながら、オミニスは闇の魔術を疎んでおり純血主義にとらわれない心を持っています。彼の家で開かれていた“スポーツ”に参加するのを嫌がった結果、自分が家族から拷問され、耐えられずマグルに磔の呪文をかけたという過去について「そんな状況に追い込まれたら許されざる呪文を使ってしまっても仕方ない」と言う主人公とセバスチャンに対し、オミニスは「磔の呪文を使うには心から相手を憎む悪意が要る。許されざる呪文を使ったことではなく、そんな悪意を他人に向けてしまったことが、自分で自分を許せない」と話します。
ちょっと魂が美し過ぎる……。
私は世界の汚さや辛さを知っていながらそれでも正しくあろうと努力する人が好きなので、この話を聞いたあたりからずっとオミニスに♡実家と縁切って♡のうちわを振りまくっていました。
セバスチャン・オミニス・主人公の三人で探索をしている際、3人は「誰かに磔の呪文をかけないと出られない部屋」に閉じ込められるのですが、ここで主人公は 磔の呪文をセバスチャンに教えてもらってセバスチャンにかける/磔の呪文を教えてもらうけど自分にかけてもらう/磔の呪文を覚えず自分にかけてもらうの選択をとることができます。この選択を見た時、私は「磔の呪文をかけられたマグルの悲鳴が耳から離れない」と言っているオミニスに親友のセバスチャンの悲鳴まで聞かせるわけにはいかんだろ!?と思いセバスチャンに磔の呪文をかける選択肢を真っ先に消したのですが、改めて考えると親友が磔の呪文を使えるほどの悪意を他人に抱いているという事実を認識してしまうのもオミニスにとっては辛いことなのでは……と頭を抱えてしまいます。
ちなみに主人公が磔の呪文をかけられた場合、食らった呪文が呪文なので作中で一、二を争うほどの様子で苦しむ主人公に、セバスチャンは割と軽いノリで「大丈夫か?」と言うのに対しオミニスは「怪我はないか!?!?」と焦って心配してくれます。セバスチャンの反応にちょっと笑いつつ、オミニスの優しさが染みるやり取りです。
余談ですが、ヴォルデモートがそうであるようにオミニスも蛇語を話すことができ、作中で嫌々ながらも蛇語でしか開かない扉を開ける場面があります。ハリー・ポッターと秘密の部屋で蛇語を話すハリーが周りから遠巻きに避けられたとおり、蛇語には闇の魔法使いと紐づく印象があるためオミニスもこの能力を嫌っているのですが、そういった背景を知らずに蛇語を話すオミニスを見た主人公の「僕もヘビと話せたらいいのに」というクソ呑気な反応と「こんなの話せない方がいいよ」と律儀に説明してくれるオミニスの会話が、二人のそれぞれ違った人の良さが表れていて好きなやり取りです。
マジで生まれる家間違えたんじゃないかと問いただしたくなるほど真っ当なことを言い続けるオミニスは、最後の最後、セバスチャンが死の呪文で叔父を殺してしまった後も「セバスチャンをアズカバンに引き渡すしかない」と真っ当過ぎる判断を下します。先述のとおり、セバスチャンと数ヵ月しか過ごしてない主人公視点でゲームを遊んでいるプレイヤーでさえ彼との楽しい思い出が少なからず袖を引くのに、4年間親友として過ごしてきたオミニスの悲しみは推して知るべしでしょう。私はオミニスの意見に反対してセバスチャンをアズカバンへ送らなかったことを後悔していませんが、失い難い親友をそれでも罪の重さからアズカバンに送ると決めたこの時のオミニスの決断を、悲しくも尊いと感じます。
本編ではセバスチャンと主人公の後方でいつもしおしおになりつつ常に正しい道へ親友を引き戻そうとしているオミニスですが、シナリオの合間に挟まる授業などで彼の様子をよく見ていると、魔法薬学で薬の調合に失敗してへこんでいたり椅子がすぐ傍にあるのに堂々と床に座っていたり魔法史の授業で他の追随を許さぬ爆睡をかましていたりと、年相応の側面や割とふてぶてしい側面もよく見られます。セバスチャンが話していた「コンフリンゴを覚えた時、初めは眉をひそめていたオミニスも最後には楽しそうにしていた」という思い出話からも、おそらくオミニスの人生最大レベルでしおれている今じゃなくて普通に平和な時だったらもっとおもしれー男なところも見られたんだろうな……と、そうはならなかった世界に思いを馳せてしまいます。
セバスチャンとオミニスが一緒に習得したというコンフリンゴについては、クエストの道中で一度だけオミニスを連れて一緒に戦闘ができる時に、オミニスが敵へ開口一番コンフリンゴを放ったのを見て二人が一緒に覚えた呪文だ……!!と感動し、その後「セバスチャンの様子を見て危なそうなら引き止めてほしい」と頼まれた時は任せろ絶対セバスチャンを連れ帰ってあげるからな!!と決意を固くする一幕もありました。
なおその後、闇の遺物を片手に持ち亡者に囲まれ明らかに様子のおかしいセバスチャンを見つけ、ごめんオミニスやっぱり無理かもしれん!!!!!!となったのも今となっては懐かしい思い出です。
ポリジュース薬でブラック校長に変身した主人公が、オミニスにだる絡みする場面も個人的にかなり好きなところです。同じ純血主義のブラック家とゴーント家は親交があるのですが、オミニスは一度主人公へ「父は校長の友人だ。俺は必要なら、そのコネを利用することもためらわないぞ」と詰め寄る場面があります(のちにオミニスはその時のことについて、「セバスチャンが最近しつこく闇の魔術について聞いてくるから苛立っていた」と話しています)。その言葉を覚えていた上での意趣返しなのかは分かりませんが、雑にオミニスへケチをつけようとして綺麗にカウンターを返されてたじろぐ主人公の一幕は、彼らが置かれている重苦しい人間関係を思わず忘れてしまうくらいの面白さがあります。
オミニスの印象は、セバスチャンとの深い友情に始まり、血筋や家庭環境に囚われない心根の美しさ、綺麗な所作や見目に対して存外大雑把な言動など、沢山の魅力に溢れていたと感じます。特にセバスチャンと主人公がどんどん闇の魔術に深入りしていく過程では、プレイヤー視点だとオミニスの言い分があまりに真っ当過ぎて、「お前らオミニスを泣かせるんじゃない!!!!」と謎の視点から主人公とセバスチャンをしばきたくなりました。
セバスチャンとオミニスの間に挟まっていた時は終始胃痛がしていましたが、最終的にセバスチャンがオミニスの友情に感謝しつつ自分の罪に向き合いながら生きていくと決めたことから、初めにオミニスを見つけた時に善いものだと感じた二人の友情が、完全に壊れてしまわずこれから先も続いていくことになって良かったと心から思いました。
セバスチャンをアズカバンに引き渡すかどうかを決断した後、オミニスは主人公へ「この先何があっても一緒に立ち向かおう。それだけは絶対だ」と言葉を寄せてくれます。この言葉を聞いた時、最善の結果ではなかったとしても学生の身で背負うにはあまりも重たいこの出来事を一緒に経験し、共に抱えて生きていく相手の一人がオミニスで良かったと、私の方からも伝えたい気持ちでいっぱいになりました。
心の在り方が個人的な好みに刺さったという点でも、完成度の高いシナリオで物語の重要な立ち位置を最後までこなしきったキャラクターという点でも、大好きな同級生の一人です。
脇に逸れた話になりますが、オミニスはそもそも内面がかなり好きなのと顔が良過ぎるのが相まって、同級生スクショ大会を開催していた中でも見つける度に何枚も写真を撮っていたキャラクターの一人です。性格が最高なうえに顔も良い~~~!!!!!!!! 実家と縁切って~~~~!!!!!!!
■イメルダ・レイエス
何度も書いているとおりホグワーツレガシーでは箒に乗って空を飛ぶことができるのですが、箒の乗り心地をより改良するクエストもあります。そこに関わってくるのが、箒での飛行が大の得意なスリザリンの女生徒・イメルダです。
イメルダが開催する箒レースに参加していて印象に残るのは、彼女の険のある物言いです。自身の飛行に絶対の自信を持っているイメルダは、その口ぶりから他の生徒の反感を買ったり、友人と衝突したりしている様子が見受けられます。プレイヤーから見ても、イメルダの第一印象はスリザリンらしい嫌な奴と映るかもしれません。
しかし、イメルダは、これまたスリザリンらしく主人公が箒レースで彼女を超える実力を見せることで、主人公を認め友達として親しく接するようになっていきます。初めは主人公を侮っていたイメルダが、レースを重ねるにつれて最後にはぽろっと主人公を「友達」と呼んだのを聞いた時、口角がグン!!と突き上がりました。
アドバイスをくれる優しさを主人公に指摘され、それを隠そうとした結果「友達」というあたたかな関係を主人公との間に見出していると分かってしまうこのやり取りが、私はとても好きです。
イメルダは自身の性格について、「自分が怒りっぽいのはわかってる。私と同じくらい、何かに真剣じゃない人が許せないの」と話しており、彼女の嫌味っぽく見える態度は自分にも他人にも同じくらい厳しい彼女の性格故だとわかります。イメルダのストイックな性格は、プロのクイディッチ選手を目指しているにもかかわらず校長が校内のクイディッチ大会を中止したことについて、飛行術の教師であるコガワ先生に直談判して大会の開催を嘆願していることや、大会の代わりに箒レースで自身の技術を磨いているところからも伝わってきます。現実に置き換えるなら、今のイメルダの状況は将来プロのスポーツ選手を目指している生徒が、1年間分の本格的な練習を校長の理不尽な判断によって妨げられてしまったというものであり、そう考えると彼女の怒りも納得です。コガワ先生も彼女の才能を特別目にかけており、大会を中止した校長に憤慨して何度も大会中止を取り下げるよう主張している光景が見られます。
箒レースで彼女の記録を上回り続けた主人公へ、イメルダは最後に自分が箒で空を飛ぶことに夢中になったきっかけを話してくれます。幼少期、初めて箒で空を飛んだ時のことを語る彼女の声はうれしそうで、クイディッチのプロ選手になりたいという彼女の夢が叶うことを願わずにはいられません。
最後にイメルダは、もしもプロのクイディッチ選手になれなかったらどうしようという想像について、「薬草学の道に進むとか? 飛ぶことを仕事にできなかった私は、毎日キイキイ言ってそうでしょ? きっと良いマンドレイクになるわよ」と知り合ったばかりの頃からは考えられない軽やかなジョークで締めくくります。この言葉もまた、イメルダの心の内側に招き入れてもらったような気持ちになれる、大好きな会話の一つです。
もう一つイメルダ周りのクエストで好きなところが、サブクエストのタイトルです。イメルダとの箒レースは3回あり、それぞれのクエスト名は「飛行テスト」「記録更新」「どこまでも上へ」となっています。初めの2つのタイトルはどこか事務的な響きを感じますが、最後のタイトルには前向きでさわやかな印象を受けます。
「どこまでも上へ」というタイトルは、箒レースをとおして主人公が箒店の店主と力を合わせ箒の性能を改良した事実を示しているのだと思います。それと同時に、今までツンケンとした態度だったイメルダの内面を知り、「あなたと記録を競い合うのはとても楽しかった。あなたと出会えて良かった」と伝え合うやり取りの爽やかさをも、このタイトルは表しているように感じます。
■ホグワーツの先生たち
これまではホグワーツで共に学生生活を送る生徒たちについて触れてきましたが、最後に教師たちについて触れようと思います。先述したフィグ先生を筆頭に、ホグワーツで教鞭を執っている先生は誰もが魅力的なキャラクターばかりです。
ホグワーツに到着してまず目を惹くのは、主人公が通う時代の校長の名字がブラックであり、副校長の名字がウィーズリーであるところではないでしょうか。どこか聞き覚えのある名字に、序盤から思わずテンションが上がってしまいます。
ブラック校長については原作でも触れられており、その内容は「歴代のホグワーツ校長の中で最も人望が無い男」というものです。実際に校長の言動は、純血主義思想を前面に押し出し、難癖をつけてクイディッチの大会を中止したことで全方面から反感を買い、挙げ句の果てにフィグ先生へ捧げる弔辞がメチャクチャという最後に至っては私が主人公の立場だったら一生恨むレベルの酷さです。
しかしブラック校長も極悪人というわけではなく、当事者ではないプレイヤーの視点から見ていると笑って冗談にできるような面白さもあります。主人公がポリジュース薬で校長に変身した時、何気なくウィーズリー副校長に「ありがとう」と言っただけで驚かれるやり取りには、普段どれだけ不遜な態度をとっているんだと笑ってしまいました。主人公は入学して日が浅いため校長のエミュレートもだいぶ雑なのですが、普段からまあまあ変なことをしているので雑エミュを不審がられはしても決定的にバレるところまでは至らないのがじわじわと来てしまいます。
この人が自分が通っている学校の校長だったらたまったもんじゃないと思うのですが、俯瞰して見ていると憎みきれない程度の憎まれ役といった立ち位置であり、作中で良い位置づけだったと思います。
そんなブラック校長に反して、ウィーズリー副校長は教師の人事ヨシ!生徒を思いやる心ヨシ!魔法使いとしての実力ヨシ!の素敵な先生です。
ホグワーツの教師陣は皆素敵な人達ばかりと書きましたが、彼らのうちの何人かはウィーズリー副校長の推薦により教職に就いていることが、先生達の部屋に置いてある手紙を読むと察せられます。また、5年生から転入してきた主人公に気を配り、追加課題を出して勉強の補完をしてくれるのも彼女です。
変身術が担当教科であることからも、優秀さが端々から感じ取れるウィーズリー副校長ですが、やはりテンションが上がったのは最終決戦で主人公の上に落ちそうになってきた石柱を魔法で浮遊させ、そのまま主人公とフィグ先生が先に向かうための足場にするシーンです。生徒を守る心、咄嗟の機転、乱戦の場で生き残っている高い実力など、ウィーズリー先生の良さがぎゅっと詰まった場面だと思います。
先生達からは授業を受けられる他、授業外で話しかけると彼ら彼女らがどういった経緯で教職に就いたのか・またどうして自身が担当している教科の学問に興味を持ったのかといった話が聞けます。どれも興味深い話かつ、先生達の人となりにも触れられる話ばかりで、これを聞いているのといないのとでは先生たちへの印象が全く異なるだろうなと思わせられるものばかりです。
個人的に特に印象に残っている先生は、呪文学を教えているローネン先生、闇の魔術に対する防衛術を教えているへキャット先生、魔法薬学を教えているシャープ先生、天文学を教えているシャー先生です。
ローネン先生は座学だけでなく実戦形式で呪文を教える授業が特徴的で、アクシオを使った引き寄せ試合を計画したのもローネン先生です。先生の部屋に入ると、彼が考えた授業計画が書かれたメモを読むことができ、その内容は生徒に楽しんで呪文を学んでほしいと思う気持ちが伝わってくるものになっています。
ローネン先生は、自分の教師としての在り方を「自分が学生の時に”こんな先生がいたらいいな”と思った教師像を目指している」と話してくれます。楽しく学べる授業内容からもこの志は伝わってきますし、授業の後も引き寄せ試合を楽しんでいる生徒がいることや、し合いでローネン先生に勝利した後に魔法の腕を褒められた主人公が「先生が良いので」と返す場面を見ていると、ローネン先生の目指す教師像は達成されていると感じられます。
また、ローネン先生は全生徒から「授業が眠くなる」と大不評のビンズ先生に、授業内容をアドバイスする手紙を送ってもいます。魔法史の授業で重箱の隅をつつくような内容はそこまで詳細に話さなくてもいいかも、といった真っ当なアドバイスを書いたあと、「教師の在り方は色々だから私のアドバイスを気にする必要は無い」と気遣いの言葉をかけているところまで、ローネン先生の人柄の良さが伝わってくる手紙です。
原作では教師が1年おきに変わる呪いをかけられている闇の魔術に対する防衛術の授業ですが、ヴォルデモートがかけた1年縛りの呪いが無ければこんなに実践的で役に立つ防衛術を学べるんですよとひしひし伝わってくるのが、へキャット先生の授業です。物を浮かせるだけの呪文というイメージのレヴィオーソを、「人間は宙に浮かせれば無防備で何もできなくなる」と戦闘に応用する方法を教える授業からは、闇の魔術に対する防衛術って……めちゃくちゃ役に立つ授業なんだな……!?!?と再認識させられます。
こういった一見戦闘に関係無い技術を戦闘に応用するというへキャット先生の教えは、ホグワーツレガシーの主人公にもかなり影響を与えていそうな気がします。初歩的な呪文を戦闘に生かす方法を考え、魔法植物や魔法薬をなんでも戦闘に利用する戦法からは、へキャット先生の指導のもと培われたであろう柔軟な考え方が垣間見えます。それにしても主人公の手持ちの技術を戦闘に応用するセンスがあり過ぎて、へキャット先生はとんでもない戦闘マシーンを生み出してしまったのでは……という気持ちがよぎらないこともありません。
かつて大規模な密猟者集団をソロで壊滅させ、魔法省の神秘部で働き、今はホグワーツで教師を務めているという彼女の経歴からは、膨大な知識に裏打ちされた実力が感じられます。かっこよくて強いおばあちゃんなへキャット先生のかっこいい姿を見る度に、オタクが大好きなやつ!!!!!となりますし、私も例に漏れずへキャット先生が大好きです。
魔法薬学といえばなんとなくスネイプ先生が教えている授業のイメージが強く、そのイメージに違わぬどこか気難しい印象を受けるのが、シャープ先生です。しかしシャープ先生と接しているうち、初めの印象とは違った彼の真摯かつ生徒思いの性格が見えてきます。
元闇祓いであるシャープ先生は、危険な任務に向かった際に同僚を亡くしたこと、自身も怪我を負ったことで前線を退いた人です。それ以降教師となったシャープ先生は、生徒が命を落とさないよう細心の注意を払い万全の備えをさせる知識を教えることを信条としています。厳格で近寄りがたく見えるシャープ先生が、主人公にぽろっと「才能と決意を併せ持つ者は少ない。それを無駄にするのはあまりにも惜しいからな」と褒め言葉を言って、プレイヤーまでもええっ!?!?今褒めてくれた!?!?と前のめりになったタイミングで「調子に乗るんじゃないぞ」と言い募られうれしがっているのを見抜かれたような気持ちになったやり取りは、プレイ中の良い思い出です。彼もまた、生徒思いの素敵な先生だと感じられる会話です。
また、シャープ先生はブラック校長に変身した主人公へ「この前頼まれたおできを治す薬を調合した」と伝える場面もあります。このことについて本物のブラック校長は過剰なほど人に知られないよう話していたようで、しょうもない頼み事をいちいち人目を気にしながら引き受けてわざわざ薬まで調合させられたシャープ先生のことを思うと、先生たちの苦労が忍ばれます。生徒への対応とはまた違うシャープ先生との会話が楽しめて、こちらも好きなやり取りの一つです。
先生たちの学問に興味を持ったきっかけの話の中でも、特に好きなのは天文学を担当しているシャー先生の話です。天文学の授業で寒空の下生徒たちに天体観測を促すシャー先生は、ギャレスが「星みたいに冷たい」と評するように初めは厳格なイメージを抱きます。
また、彼女は周囲の天文学への無理解を嘆いており、天文学について話を聞こうとする主人公にも初めは冷たくあしらおうとするのですが、心から天文学を興味深いと思っているのを知るとそれを修めるに至った経緯を話してくれます。
シャー先生が天文学を好んでいる理由は、スクイブ(魔法族でありながら魔法が使えない人)の姉と一緒に学べる学問が天文学だからというものです。姉と夜空を見上げ星をたどる時間を、シャー先生は今でも大切にしており、現在学者として活動している姉と良好な関係を築いています。
確かにプレイヤーは、魔法薬学で扱う薬品の名前や魔法史で学ぶ歴史上の出来事などに日常で触れることはありません。しかし、ホグワーツレガシーの主人公が星見台で見る星座は、私たちが生きている世界でも耳にしたことのあるものです。また、ホグワーツの数ある個性的な教科の中で、天文学は現実の人間でも学べる学問です。そのことにシャー先生の話を聞いて初めて気付いた時は、目から鱗が落ちる思いがしたと共に、深く胸を打たれました。心の中のアミットに「お前が好きな学問ってこんなに素晴らしい学問だったんだな……」と肩を組みにいきたくなるほどでした。
考えたこともなかった視点で学問に対する思いが聞けるこの話が、私は先生達から聞いた話の中でも特別印象に残っています。
どの先生達も魅力的なホグワーツレガシーですが、そうやって普段のクエストで先生達を好きになった心に一気に刺さるのが、メインシナリオの最終決戦で主人公とフィグ先生を助けるため先生達が駆けつけてくれる場面です。ホグワーツを守るために普段生徒の前では見せない戦闘の姿勢を見せてくれる先生達の姿からは、最終決戦らしい盛り上がりの心が沸き上がってきます。
特に戦闘面で実力者だという話があったへキャット先生が多対1の戦闘を余裕でこなしている姿や、トロール2体に囲まれたフィグ先生と主人公のもとへ「私の分も残してもらわねば困りますな」と強者感溢れる言葉と共に駆けつけてくれたシャープ先生の姿にはいかん!!!!!!何度でも惚れ直してしまう!!!!!!!とのたうち回りました。また、先んじて書いたウィーズリー先生の生徒を守り道を切り開く立ち回りも大好きな場面です。
共に学内外で交流を重ねた生徒たちだけでなく、先生たちも魅力で溢れているところは、ホグワーツレガシーの学校生活が楽しい理由の一つとして胸を張って挙げたい点です。
長々と書きましたが、ホグワーツレガシーの感想は以上になります。ゲームを遊ぶのが楽しくて仕方なくなる世界観と、魅力的なキャラクター及びシナリオは、寝食を忘れて遊んでしまう面白さがありました。クリア後にひととおりネタバレを解禁してネットサーフィンをしてみたところ、ゲームシステム的な魅力や主人公のチートめいた戦闘力に関する話などはよく目にしたものの、メインシナリオにちょっとツッコミどころはあったけど総合してシナリオ全部面白かったよ!!!!!!!あと味方キャラクターたちがマジで全員大好きだよ!!!!!!!!といった話題は比較的少ないように感じたので、自分の興奮をぶつけるためにもこうして記事を書くに至りました。特に「悪党との対決」「異種族間の争い」「強大な魔法による術者の暴走」という三点の要素が、メインシナリオと3つの人間関係クエストを重ね合わせながら描かれているところは、構造的にとても綺麗だと感じました。更に言えば、あくまでも外伝なので原作の核心に触れるような内容を出すことはできないという縛りが、そもそものストーリーの規模が小さいのでさほどハンデにならない人間関係クエスト3つは、どれも手放しで褒めたくなる完成度でした。特に深く関わる生徒3人が、ウィーズリーやブラック、ゴーントといった原作に関係のある名字を持つ生徒ではなく、ホグワーツ・レガシーで初めて出会う名字の生徒たちだったのも、名采配だったと個人的に感じます。
冒頭でも書いたとおり、ホグワーツに入学したいと一度でも思ったことがある人には、ぜひ遊んで欲しい!!とおすすめしたい一本です。私は1周目をハッフルパフで遊びましたが、他の寮の談話室や寮の違いによる差分などもとても気になるので、まだまだ本作を遊び尽くそうと思います。