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下照姫と高照姫。ヒルコお姉さんに見るフェミニン&マスキュリン#2

「弟はどうしているのかしら?」巻物を目で追うヒルコさん。
「はい、サホコチタル国でお暮らしのようです」側近が後ろで応じます。
「そうですか」巻物を置き、虚空を見つめます。

「それから」と側近「イナタ姫と仰る方と結ばれたそうです。お子にも恵まれたようですよ」
「えぇ、そのようね」ヒルコさん、虚空から目を離さないでいました。

「姉ちゃん、姉ちゃん!」熱気とともに声がします。

「噂をすらば何とやら、弟君がお見えのようですな」と側近「いかがいたしましょう」
「通しておあげなさい」艶に黒髪が頷きます。

「お姉ちゃん」肩で息するソサノウさん「ワシの勝ちや、男の子が生まれたんや」勝ち誇ったかのように「ワシの誓約が神に通じた。ワシの潔白、清らかさが神によって証明されたんや」
座敷中に響き渡った弟君の声。

黙してそれが静まるのを待つヒルコさん「あなたは鬼の首を取りに来たのですか」背をむけたままでいます「ワシは、ワシは。自分は、自分は、、、あなたには利他の心の欠片すら見えません」結った黒髪の房が揺れます「そうゆう利己オンリーの心を私は穢れと呼びます。あなた中心に地球は回っているのではありません」振り向き、睨め付けた視線は弟君を動かしません「もう帰りなさい」

肩を落とし、帰路に向かう弟の背中に「私の想いを咀嚼して、得心出来るようなら、皇君へと返り咲く日も遠くはないでしょう」小柄なれど毅然としたヒルコさん。愛の言葉で弟を包みます。

ここで矢も楯もたまらず行動してたら、以前のワシと同じ事や。
利他の心か。物事は巡り巡るっちゅうこちゃな。
やっぱりヒルコ姉ちゃんは威厳があるよな。それでいて包容力があって。
ワシの威厳はお姉ちゃん譲りかもな。

そういえば、モチキネ兄ちゃんの長男、モチタカが反政府勢力を討ちにいくっていうてたな。

ソサノウさんが中央政府追放の憂き目にあったことにこれ幸いと目をつけ、
反政府軍、ソサノウさんを担ぎ出そうとします。
自軍の王君にすることで、大義名分が生り、順風も吹くというわけです。

ですがソサノウさん、このオファーをきっぱりと断っていました。
ワシは今、下民の身か知らんが、一体ワシを誰やと思うとんねん!
ヒタカミ国プリンセス、イサナミ・イサコ直系の息子や!

よしッ、ここは頭を下げて、土下座してでもモチタカ軍に伍して、モチタカを援護しよう。ショー ミー ザ マネーや。
ソサノウさん、甥っ子のモチタカさんにどうか協力させてと頭を下げて懇願します。

ツキヨミ・モチキネさんの息子イブキドヌシ・モチタカさん、
生まれ変わった叔父を見て、男泣きに鳴きます。
モチタカさん、東奔西走、周囲の了解を取り付け、ともに反政府勢力と戦うことを決意します。

やはりソサノウさんの力絶大で百人力を得たモチタカ皇軍、反政府軍を根絶。
そのソサノウさんの功績大きく、活躍認められ、罪を相殺されます。

晴れて八重垣の臣となり、中央政府に復帰。
出雲の国守に就任。氷川神の名を賜ります。

のちソサノウさん、ヒルコ姉さんとも和解。
ヒルコさんは嫁のイナタ姫に、伝家の宝刀六弦琴を教えるなどして、
弟夫婦とは懇意にされたようです。

さて、安国宮/中央政府より近江の国、天の安河に移っていたヒルコさんと、ご主人のオモイカネ・アチヒコさん。

弟アマテル・ウヒルギ・ワカヒト神と内宮セオリツ姫ホノコさんの息子、オシホミミ皇子の御子守として、養育にあたりました。

病弱だった皇子を仕立てるお立場にシタテル姫の名が贈られます。
皇子の健康が優れぬ間は、守役のオモイカネさんが政務を執ったそうです。

またヒルコさんアチヒコさんご夫婦は、安河にて皇子を仕立てつつ、根国、サホコチタル国をツインヘッド体制で治められたといいます。
つづく


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