見出し画像

大物主の名において~In The Name Of Omononushi~ #4

  ー第10代崇神天皇が背負ったものー

 大物主家ならびに大神神社さんを語るうえで触れずには
 おけない方、
 十代崇神天皇・御間城入彦五十瓊殖尊。
 
 大神神社さん拝殿の右を少し行き、
 S字階段を登ったところ、
 崇神さんを祀る天皇社が鎮座されます。
 
 大神さんの重厚な雰囲気から一転、
 颯然とする何かに支配されます。
 ご自身の性格の投影か、すべてを達観しておられた
 からなのか、爽やかで豁然とした風が止むことは
 ありません。
 
 ミマキイリヒコ・ヰソニヹさん。
 崇神天皇は御名をヰソニヹさんと仰るんですね。
 何ともフレンチテイストな。

 しかしながら現実は辛辣なもの。
 ヰソニヹさんは父の大きな負の十字架を
 背負いながら、執政していたようです。
 勿論その十字架の意味を知りつつ。

 現代社会においても
 父親の十字架を背負いつつお暮らしの方、
 少なくないと思います。

 そんなヰソニヹさんの心情を慮ると
 同情を禁じ得ません。
 とても思慮深い、床しい方だったようですね。

 また大転換期のもとの天皇即位。
 そういう節目には、
 それに適した人物が誕生するようになっているん
 ですかね、この天の川銀河は。

 ヰソニヹさんの父はご承知の通り、
 第9代開化天皇・稚日本根子彦大日日尊。
 ヤマトネコヒコクニクル・フトヒヒさん。
 春日率川宮(奈良市本子守町・率川神社あたり)に
 都を遷した方。

 この開化天皇フトヒヒさんは道義的タブーを以て愛を
 貫き周囲を巻き込んでしまいます。
 ときに愛の前において方法論は意味をなさないことも。
 
 フトヒヒの実父 → 8代孝元天皇・
           ヤマトクニクル・モトキネ
      実母 → 8代孝元天皇内宮・ウツシコメ
      義母 → 8代孝元天皇内后・イカシコメ
 この義母のイカシコメさんと恋に落ちてしまった
 フトヒヒさん。

 生物学上は他人、血縁はないので問題はないと言え
 ます。
 ですが道義的、道徳上はやはりタブー中のタブーと
 言えるでしょう。

 フトヒヒさんとイカシコメさん、
 お二人は結ばれます。
 フトヒヒさんの側近たちは、この結婚に猛反対。
 
 ほぼ国政の運営を取り仕切る食国(ケクニ)臣の
 オミケヌシさんは、国のトップが近親婚とは民に
 示しが付かぬ、訓戒も及ばないと諫言します。

 イカシコメさんとの愛に溺れ
 聞く耳持たずのフトヒヒさん。

 いにしえのシラウド・コクミの寓話を持ち出して
 まで、懇々と説得を繰り返したオミケヌシさん
 でしたが、聞いてもらえませんでした。

 ここはオミケヌシさん、食国臣ともあろう方。
 自身に、社会にけじめをつけます。
 
 そうですか、仕方ありませぬとばかりに、
 潔く重臣の地位を捨て下野します。
 父ミケヌシさん共々都落ちとなり、
 茅渟県(大阪府南部から堺市周辺)に身を
 潜めたようです。

 ※食国臣 = 政の臣。鏡臣・左臣と剣臣・右臣の
        権限を一手に持つ官職。
        時代は流れ、左臣、右臣は昔の名と
        なり、両臣の範疇をひとつにした
        新ポストが国政を掌握したようです。

 ※シラヒト・コクミの寓話 = 
       根国の代官クラキネ(イサナギ、
       キクリ姫の弟)は、臣のシラヒトが
       取り持ったサシミメ(コクミの妹)を
       娶る。 
       サシミメはクラキネの子、クラ姫を産む。
       シラヒトは君の娘であるクラ姫と結婚。
       と同時に君の妻であり、
       嫁の母・義母であるサシミメとも
       情事に至る。
       クラキネ逝去後、
       シラヒトは用済みのサシミメ、
       クラ姫親子を宮津(サホコチタル国首都)
       のコクミへ送りつける。
       受け取ったコクミは母子をなぶりものに。

       この非道徳を知った
       副代官ツワモノヌシ。 
       タカマ(中央政府)に監督責任者の
      カンサヒ(ヤソキネの弟、ツワモノヌシの兄)
       も含め告発する。

 それにしてもイカシコメさん、
 相当魅惑的な女性だったのかな。

 結局のところ、
 イカシコメさんは、8代孝元天皇の子オシマコト、
 9代開化天皇の子ミマキイリヒコ・ヰソニヹ、
 ミマツ姫のお三方を出産されたようです。

 時は流れます。
 上記経緯を知り、自立のときを迎えるヰソニヹさん。
 それを心に閉じ込めつつ政を執ります。

 父の十字架を独り背負い、葛藤を繰り返す日々。
 おれは禁忌のもと生まれた身。
 自分の代でいつか祟りがあるに違いない。
 
 令和の今を生きる私達も胸が痛みます。

 蹶然と立ち上がるヰソニヹさん。
 穢れを祓おうとあらゆる面で刷新を図ります。
 まずは磯城瑞籬(奈良県桜井市)に遷都。

 そして宮中にある三種(アマテル・ヤサカニの
 マカル玉、セオリツ・マフツ八咫鏡、
 ハヤアキツ・クサナギ八重剣)が穢れては大変と
 アマテル神の依り代とされる八咫鏡を
 娘で長女の豊鍬入姫・トヨスキヒメ(天照大神初代斎宮)
 に命じて檜原神社にて祀らせ、
 大国魂神(初代事代主クシヒコ)の依り代とされる
 八重垣剣を次女の渟名城入姫・ヌナギヒメ(倭大国魂神
 斎宮)に命じて大和神社にて祀らせます。

 宮中には鏡と剣のレプリカを置き、継続して祀った
 ようです。
 こういう配慮をなさる床しい方だったんですね。
 ヰソニヹさんは。

 打てる手は打ったはずの崇神天皇。
 しかし、やはりタブーが祟りを起こしたのか、
 杞憂であってほしかったはずの悪夢が姿を現わします。

 疫病が流行ったのです。
 パンデミックという祟りが朝廷を襲います。
 国民のおおよそ半数が息絶えたといいます。

 ここで神はヰソニヹさんに知恵を授けます。
 「夢合わせ」なる現象が起きます。
 
 チハラメクハシ姫ら三名が、それぞれの場所で同時に
 同じ夢を見たことに気づき、慌てて三名揃ってその事
 を上奏(ミカドに思い、事情を伝える)したと言います。

 驚いたミカド・ヰソニヹさん。
 私もそのほうがたと同じ夢を見た。
 これは夢合わせに他ならない。
 早速、夢合わせの指示に従おうではないか。
 
 まだ収まることを知らない疫病。

 フトヒヒさんへの諫言などで、都落ちとなり、
 冷遇されたオミケヌシさん。
 その孫オオタタネコ(意富多多泥古命)さんを
 探し出せとのこと。
 指示どおり見つけねばなりません。
 大阪堺市で見つけ出し、彼をおおみわ神の斎主に。
 大物主家、中央に返り咲きます。

 またナガオイチ(市磯長尾市)さんを探し、
 大国魂神(大和神社)の斎主に。
 
 二代大物主クシヒコ(オオクニタマ)、
 おおみわオオタタネコ、
 おおやまとナガオイチ、
 トライアングルが成り、ウィルスの中和を見ます。
 威力を失った疫病。
 ようやくパンデミック収束を見ます。
                     つづく

いいなと思ったら応援しよう!