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下照姫と高照姫。ヒルコお姉さんに見るフェミニン&マスキュリン#3

   さらりと詠む和歌、高次を往来。
   奏でる弦楽器も巧みに自然。
   武術に秀で、容姿端麗。

   そんな才媛であるヒルコさん。
   恋愛のほうはどんなだったんでしょう。

   ヒルコさんはワカヒルメとも仰います。
  「我がひる女」= 自分のことより
           まず相手に譲り和を望む女。
   
   という意味があるそうです。

   じゃあ恋のほうも控えめで、
   ライバルが大勢いたら、
   譲って物陰に身を寄せる
   タイプだったのかな。

   ヒルコさん、ワカヒメとも仰います。
   和歌の達人の「ワカ」の意に加えて
   ジェントルマンで知られる、
   阿智の神ことオモイカネ・アチヒコさんに
   恋心を「沸かせたひめ」の意もあるそうです。

   実はヒルコさん、
   恋愛において、この人だ!と確信を得ると
   攻めるタイプだったようですね。

   時に紀州を襲った害虫被害。
   大量発生した害虫問題を担える人は
   この人しかいないと懇願のオファーが。

   怯える民の知らせに
   一肌脱いだヒルコさん。
   支度もそこそこに紀州入りします。

   ヒルコさん必殺の奥義の
   「シタテル姫の教え種」で
   見事に穢虫を駆除。
   住民の生活にも安らぎが戻ります。

   この奥義、檜製の扇で祓いながら、
   360回にわたり、まじない歌を唱える
   というものだそうです。

   民の為、社会の為とはいえ、
   数百回もまじない歌を唱えるなんて。
   こういう方がアセンデッドマスターへと
   神上がりされるんでしょうね。

   ワカヒメのおかげじゃ! ワカヒメのおかげじゃ! 
   ワカヒメさまさまじゃ! 
  
   また穢虫が来よっても
   ワカヒメが祓ってくれるわい!
   ワカヒメバンザイ!
   村、町、地域総出でヒルコさんを称えます。

   姫がいれば、
   民も安心して生活を送れると懇願され
   暫く身を紀州玉津宮に置いたヒルコさん。

   そこへ将来のご主人となる方、
   オモイカネさんが勅使としてやってきます。

   第七代タカミムスビ・タカキネさんを父に持つ、
   阿智の神ことオモイカネ・アチヒコさん。

   妹にオシホミミ皇子内宮のタクハタチチ姫、
   初代事代主クシヒコさんの奥さんのミホツ姫を
   持たれます。

   アチヒコさん、穏やかになった田園一帯を眺め
  「穢虫の件は、あっぱれですな。
   民たちもすっかり元の生活を取り戻したようで」
   武具を外しながら、
  「姫の絶大なお力、奥義を伝授して、
   是非とも後継を育てねばなりません」
   最後に剣をわきに置きます。

   嘸かしジェントルマン然としていたのでしょう。

   ヒルコさん、アチヒコさんを見初めます。
   何かが通じ合ったのでしょうか。
   キラキラと輝く何かが、
   エネルギー体となってヒルコさんを包みます。

   当時、恋の告白は和歌で詠むのが
   通例だったようです。

   ヒルコさん、攻めました。
   言うときますけど、和歌です。
   なんたって得意の和歌です。
   得意なんてもんじゃありません。
   和歌は彼女の一部と化しています。

   アチヒコさんと暫く懇談のあと、
   礼儀に則り、
   ヒルコさん、すらすらと筆を走らせます。

   終えると、詠み上げました。
   ワカ姫による最上級の和歌です。

   覚悟は決まってます。貴方のそばを離れません。

   ワカヒメの極上の和歌。
   愛の告白は見事な回文。
   美しすぎるパリンドロームとなっていました。

   「何と天才的なッ」
   さすがのアチヒコさんも、汗をかきかき、
   少し右往左往してしまいます。

   瞬時に理解するアチヒコさんも
   美意識の高い方ですね。

   「姫、そのーッ」言葉を探し
   「一度持ち帰らせてください」
   武具を適当に抱えて踵を返すも、
   忘れた剣を取りに戻ります。

   泰然と微笑むヒルコさん。
   エネルギー体に包まれたままでいました。

   アチヒコさん、
   返す刀で御大アメノコヤネさんに相談します。
  「どないしましょう?」
   アチヒコさん、落ち着きません。
  「何事や」事情が見えないコヤネさん。
   経緯を説明するアチヒコさん。
   少々乱暴に和歌を渡します「これですわ」

   回文に目を通す御大。
  「ほーッ、これは見事じゃ!」
   流石のコヤネさんも目を白黒させ
  「私もこんなこと言われてみたいものよのう」
   かぶりを振ると目を起こし
  「アチヒコよ、行ってこい!」

   コヤネ御大、アチヒコさんの背を
   どーんと押しやりました。

   こうしてヒルコさんとアチヒコさんは、
   めでたく結ばれます。
                     つづく


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