下照姫と高照姫。ヒルコお姉さんに見るフェミニン&マスキュリン#5
天の安河(陽陰和す地・調和と繁栄の中心部)にて、
皇子の養育、根国、サホコチタル国の治政をご主人のアチヒコさんとともに兼務するヒルコさん。
子宝にも恵まれました。ご存知の手力雄/タチカラヲさんです。
シツヒコと名付けられたようです(茨城県、静神社祭神)。
このシツヒコさん、その腕っぷし、怪力たるや
令和の今に伝わるほどですから、相当なものだったんでしょうね。
岩戸をこじ開け、投げ飛ばしたか、蹴り飛ばしたか、
天空高く舞い上がり、落ちた先が信濃だったとか。
他方、天君ニニキネ・キヨヒトさんの八州巡り(土木開拓・インフラ整備)に同行し、切り込み隊長を務めたり、
ニニキネさんの立案により、蓬莱八湖・ハラミのヤツウミ(現富士八湖)の掘削工事に着手、陣頭指揮を任されたり。とにかく頼りにされたようです。
腕力ばかりではありません。父オモイカネさんの後を継ぐかたちで伊雑宮にて日夜見(陰陽師)の役職にも付きます。
陰陽師オモイカネ→タチカラヲ→ムラクモと継がれていったようです。
因みに世に言う、アマテル神の岩戸隠れ。
御大アメノコヤネさん、オモイカネさん、ツワモノヌシさんが智恵を絞り、
ウズメという舞踊チームがサポートし、最後はシツヒコさんの力技でもって決着しますが、ここでも頼りにされ、大トリを持ってったって感じですね。
アマテル神は岩戸ではなく、結室(イワムロ)に籠もられたという説がありますが、私はこちらに一票を投じます。
ソサノウ・ハナキネさんの経年に増す暴れぶりを母のイサナミ・イサコさん曰くは、自分の汚穢隈が宿ったもの。すべて私のせいと仰ったとか。母心なんとかは今も昔も不変なんですね。
アマテル神は、手のつけられない暴君と化した弟ハナキネを恐れて、
怖がって、ビビって、ちょちょもうて、結室に隠れ、籠もられた。
それはないでしょう。
いうても、皇祖神、アマテル・ウヒルギ・ワカヒト神ですよ。
いうても、ヲヲンカミです。日の神、天日神、天別分宮、大御神、アメノミヲヤ、妹背の神です。
そんなアマテル神が、恐れてとか、ビビってとか、そういう次元で生きてはおられなかったでしょう。
森羅万象俯瞰され、豊受大神等しく達観の極みを生きておられたはず。
女神神話構築のおり、姉ヒルコさんと妻ホノコさんの女性像がブレンドされ、恐れて身を隠す。と女神っぽく変遷がなされたのかもしれません。
女神神話構築は、国を統べる上ではあまねく必要な事と私感を持ちます。
アマテル神は、周囲関係者も込みで、ソサノウさんを諭して諭して諭し続けてきた訳ですよね。それでも埒は開きませんでした。
アマテル神は、弟の未来を思い荒治療に出たのだと感じます。
大人の方法論を採ったのでしょう。
外野の者からすれば、目には目を歯には歯をでいきましょうよ!
無責任にも思ったりしますが。
祖父である豊受大神から特別大事にされていた兄ワカヒト。
弟ハナキネはそのことに嫉妬したでしょう。
無性に腹が立ったでしょう。すべてを凌駕する兄に追いつきたい、肩を並べたい。追いつくどころか兄は手の届かぬ領域に。
心とは裏腹に、兄ワカヒトという存在そのものを意識すればするほど反逆の心が芽生え、行動に移してしまう。暴力が暴力を生み、罪が罪を呼ぶ。
人智を超えた領域にいるアマテル神。
弟の心理を読み切り、心得ていたのでしょう。
御自身の存在そのものを既存の世から無いものにし、アマテル神の存在空間を空洞にすることで、弟も思うところがあるだろう、反抗の対象がなくなれば、我に返り目を覚ますであろう。
実力行使とは真逆の、結室に身を置くという方法を取ります。
ところがこの荒治療で、思いもよらぬ副作用が起こります。
日が昇らなくなったのです。
日が昇らなくなり世の営みのリズムが停止に近づきます。
代わって暗黒が世を支配しようとします。
宇宙と通じていたであろうアマテル神。本当に日の神でした。アマテル神が結室に籠もると日が出なくなったのです。
やっぱり昼のように明るい方ヒルコさんの弟君、
稚く瑞々しい日の女神、万物を生み育てる御加護の女神ヒルコさんの
弟君なのです。
いずれ皇君に返り咲き国を治めるであろうハナキネ自身のため、世のためと意思も固く、結室に身を置いたきりのアマテル神。
この世側の首脳陣は閉口頓首。
なんとか暗黒の支配を止め、世を元来ある姿に戻さねばなりません。
叡智を集結させる首脳陣チーム。
中でもオモイカネさん、ツワモノヌシさん、ウズメチーム、シツヒコさんらの尽力あり、世に帰ったアマテル神。再び世を照らします。
カミハカリ・裁判を経て、千科の刑が決まったソサノウさん。
千科の刑とは、ざっくりと死刑三回分相当だとか。
ソサノウさん、アマテル神内宮ホノコさんの嘆願があって減刑されます。
三回分相当はなくなり、中央追放の身となります。
更生の機会を得、ヒルコ姉さんに一目会いたいと安河に向かいます。
「ワシや! ワシや! ヒルコ姉さん!」肩で息するソサノウさん。
「根国、サホコ国の統治もほったらかして、今更何用なの?」ヒルコさん決然と立ち上がり「弟が来ると陸な事はない。さては根国、サ国を奪いに来たか」軍配を振りかざすと「全員弓を持て!」
兵士が右に左に、騒然とするヤスカワ宮。
このあと、#1で前述した誓約/うけいのシーンとなります。
結局のところ、実姉ヒルコさん、実兄アマテル神、義姉ホノコさんたちの慈悲、霊力によって良き未来へと方向付けられていったソサノウさん。
ヒルコさんを始め、そこに一周先を行く超然とした慈愛を感じます。
その後、ソサノウさん筋は、
初代大物主オホナムチ・クシキネさん(青森県・岩木山神社、島根県・佐太神社他祭神)、
初代事代主ヲコヌシ・クシヒコさん(滋賀県彦根市・都惠神社、奈良県・大和神社、大神神社、東京都府中市・大國魂神社他祭神)、
迦毛大御神アチスキタカヒコネさん(奈良県・高鴨神社、栃木県日光市・二荒山神社、大阪市鶴見区・阿遅速雄神社、滋賀県豊郷町・阿自岐神社他祭神)、
三代大物主コモリ・ヨロギマロ・ミホヒコさん(滋賀県安曇川町・与呂伎神社、京都府長岡京市・子守勝手神社、奈良県・吉野水分神社他祭神)、
二代事代主ツミハさん(奈良県・鴨都波神社、徳島県・建布都神社、静岡県・三嶋大社他祭神)、
五代大物主・多賀皇君イツセ右臣クシミカタマ・ワニヒコさん(東京都神津島村・物忌奈命神社、大分県・籾山八幡社、香川県・金刀比羅宮、奈良県・神坐日向神社他祭神)、
オオミワ神斎主オオタタネコ・スエトシさん(奈良県・大直禰子神社、多太神社、大阪府堺市・陶荒田神社他祭神)
とほかにも錚々たるアセンテッドマスターを輩出することとなります。
やがて氷川神となるソサノウさん。
罪を憎んで人を憎まず。仁者のみ宜しく高位にあるべしでその将来を育んだといえるヒルコさん、アマテル神、ホノコさんの慧眼。
その眼は、上記の神々がアフターソサノウに誕生しうることを知悉しきっていたようにも感じます。
弟である日の神、アマテル神と等しい霊力、御力を持ち、
初代下照姫にして初代高照姫、稚日女尊のヒルコさん。
令和の今もって、その厚き信仰、絶えることはありません。
その絶対性は未来永劫不変でしょう。
二尊/付離の神(イサナギ・カミロキ・タカヒトさん&イサナミ・イサコさん)のもとに筑波で生まれ、
両親の諸般事情により斎奇舟で流されたヒルコ姫。
幼少期の独り船旅ってどんなだったんでしょう。天よりの神の御加護があったにせよ、華奢な女の子ひとりでドンブラコ、ドンブラコと心身ともに揺さぶられるわけですから。うねりや波、強い日弱い日あったでしょう。
ヒルコお嬢さん、頑張りました。
やがて浜が見えると男女が手を振っています。
ヒルコちゃーん!ヒルコちゃーん!
ハヤアキツ姫のご両親です。
ヒルコちゃんも細く幼い腕を面映ゆそうに振ります。
水路の要衝、西宮浜=廣田の宮で
無事カナサキ夫婦の腕の中に収まるヒルコさん。
優秀な破瓜期を過ごし、英才教育、実践経験を経、
近江の国で政を執ります。
安国宮より安河宮に移り、仕立てる/シタテル姫として皇子を養育。
奈良葛木御歳神社では、ヒルコさんは御歳神として何か重要な神事にあたられ、なおかつ複数の要職をこなされたように思います。
甥っ子のオオトシクラムスビさん、師事する二代高照姫のタカ姫タカコさんのサポートもあったことでしょう。
アチスキタカヒコネさん、オクラ姫とも政策、立案に携わり、助言も求められ、過ごされた事でしょう。
各生田神社、和歌山玉津島神社では稚日女尊として崇められ、
丹生都比売神社では丹生都比賣大神、ホーム西宮神社では西宮大神/えびす神として親しまれます。
最期を和歌山玉津宮で迎えられ、西宮廣田宮にて葬礼が行われたそうです。
今もヒルコさんは蛭子大神として越木岩神社の巨大磐座に眠るといいます。