神位不要、別格の社、日前・國懸神宮#1
その昔、朝廷が神階を贈らずにいた社、
和歌山、日前國懸神宮。
崇敬のあまり、無闇に神階を贈ることなど
憚られたといわれます。
神位を授けるなど恐れ多いと
神階を持たなかったのが、
伊勢神宮と日前國懸神宮、
二社のみといわれます。
1919年(大正8年)の改築工事により、
境内の建造物はすべて新しくなり
景観は一新されたといいますが、
永らく準皇祖神として別扱いだったようです。
幾度の遷移を経て、
現在の和歌山市秋月に鎮まれます。
日前神宮と國懸神宮。
それぞれ陰陽の御鏡が祀られるといいます。
日前とは、
一義に日の神(アマテル神)に向かう者=ムカツ姫・
セオリツ姫ホノコさん、
一義に「天日の前宮」の短縮形をいうのだそうです。
天日の前宮とは、
あひみや/太陽宮・太陽の前宮と同義で、
あひみやとは「ムカツ姫の宮」を意味するので、
結局もとに戻って日前大神とは、
ホノコさんということになります。
國懸とは、国を治める政殿、政庁のことを
いうそうで、
この國懸神宮・太陽の前宮が
紀州国における國懸だったようです。
祀られる御鏡、真経津の鏡(マフツ)は二枚一組の
合わせ鏡だと伝えられます。
マフツのカガミが表鏡、
マフツのヤタカガミが裏鏡の機能を持つとされます。
表鏡は人の身を、
裏鏡は人の心を写しだすもののようです。
当社祭神のイシコリトメさんが鋳造し、
二尊(イサナギ・イサナミ)に捧げたおり、
二尊は世継ぎを授かりたく願い、
コノシロ池で両目を洗います。
二枚の鏡を陽と陰、日と月が合わさるように和し、
日月の神の誕生を祈ったといいます。
左手の鏡から、日の神アマテル神、
右手の鏡からは月の神ツキヨミ神が生まれた
ようです。
フツノミタマの剣を
カンヤマトイハワレヒコさん(神武天皇)に奉った
タカクラシタ・タクラマロさん。
幾多の功績重ねられ、
のちに彌彦尊/ヤヒコカミとなられますが、
紀州国の国造も務めておられました。
そのタカクラシタさんの妹と結ばれたのが、
当社祭神のアメノミチネさん。
タクラマロさんのあとを継ぎ、紀州国国造に就任。
紀の館・太陽の前宮を賜ります。
宮にしばらく住まわれたようです。
このミチネさん、三代前に第六代タカミムスビの
カンミムスビ・ヤソキネさん(白山神)、
四代前に五代タカミムスビの
トヨウケ・タマキネさんを祖に持つようです。
神武天皇の命を受け宝鏡を祀るアメノミチネさん。
マフツの鏡を御霊代にアマテル神、
セオリツ姫を祭祀したのが
両神宮の始まりとも伝えられます。
どちらの鏡に大日霊貴(アマテル神)を写し、
セオリツ姫を写されたのかはロマンですが、
陰陽、表裏一体の鏡を御神体として、
二枚一組で仲睦まじく鎮まられるものと思われます。
つづく