6-1 ビールの美味しさを保つ秘訣
びあけんの検定対策としては公式テキストの「ビールを味わう」の章を丸暗記してもらいたいのですが、ここでは大事なところを抜粋して、ビールのおいしさについて説明してみます。ぜひビール片手に味わいながら読んでみてください。
1.ビールの美味しさを構成する5つの要素
この5つの要素でビールの美味しさは作られています。
A.香り
原料由来(麦芽やホップ)と発酵由来があり、確認された成分は200種類以上あります。香り成分同士の影響もあり、単純に個々の香り成分の足し合わせにはなりませんし、ビアスタイルに応じた適正な濃度範囲があります。また、特定の成分が極端に多いことは避けるべきとされています。
B.泡
見た目のビールらしさを演出する泡は、重要な品質の一つです。泡立ち、泡持ち、泡の付着性、きめ細かさ、色などの項目に分かれます。注がれてから味の劣化を防ぐ「蓋」としての役割があります。
C.味
ビールの味は苦味と濃醇さに分けられ、苦味はホップ由来でイソアルファ酸であり、ビアスタイル毎に適正な濃度があります。
濃醇さに関するほとんどの成分は、主原料である麦芽に由来します。タンパク質、ペプチド、低分子アミノ酸、核酸などで、舌の味蕾に作用して味のふくらみに関与していると考えられています。
これらの苦味と濃醇さの調和やバランスが重要です。例えば、淡白なビールに強い苦みを付けると、苦味が強調されてしまいます。
D.色
主に麦芽の色が影響しますが、ホップや水由来の成分と混ざり合って作られます。長期保存の酸化反応(赤味)や輝りと呼ばれるボケた色が出たりと品質全体を計る指標にもなっています。
E.香味
ビールの A.香りと C.味は厳密に区別できないので、これらが合わさった香味という一つの品質を形成しています。芳醇さ、切れ味、純粋さ、快い刺激、飲み飽きなさという言葉で表現されます。客観的な評価方法として官能検査(サッポロビール「出来立てのうまさを届けるために」を参照)が用いられます。
2.その他の要素
ビールの美味しさに関しては、以下の2つの項目も度々、論争(大げさ w)になりますが、ビールを楽しむ大事なポイントとなっています。ビアスタイルや好みに合わせてチョイスしてください。
・温度
一般的なピルスナースタイルの場合は6~8℃が飲み頃とされています。冷やし過ぎると泡立ちが悪くなり寒冷混濁と言われる濁りが生じて、ビールの美味しさを損なってしまいます。
適温にする方法として、びあけん公式テキストには、たっぷりの氷水(0℃)に瓶なら1時間、缶だと約30分で飲み頃になると書かれています。
余談ですが家電アドバイザー的な視点からでは、一般的な冷蔵庫の冷蔵室だと3~5℃なので少し冷え過ぎとなります。冷蔵室の内ドアポケットだと6~9℃と温度的には最適ですが、ドア開け閉めの振動が頻繁に生じてしまいます。野菜室は5~7℃なのと振動の少なさでビールの冷却に適しています。
・瓶ビールと缶ビールの味は違うのか?
缶ビールの内側にはコーティングがされているので金属臭が付着することはなく、専門家のテイスティングによっても確認されています。瓶と缶に味の違いはありません。
ただし、これらの容器から直接飲むか、グラスに注いで飲むかでは、味に違いが出てきます。直接飲む場合は、泡が味わえない、炭酸ガスが抜けないので刺激や苦みを強く感じます。そのため、グラスに注いで飲む方法をお勧めします。
3.ビールの劣化と老化
ビール本来のおいしさを損なってしまう原因を知ることで、ビールの劣化や老化をさせにくい管理方法が実践できます。
・ビールが劣化する2つの因子
ビールは、日光にさらされると日光臭と呼ばれる不快なにおいが発生します。ビール瓶が茶色や緑色なのは、原因となる特定の光をある程度は防ぐためですが、直射日光下に短時間でも放置した場合は日光臭が発生します。
もう一つ、高温にさらされると味や香りに変化が生じます。ホップ由来の苦味成分やタンニンが酸化することにより、ダンボール紙のようなにおいや甘いウイスキーのようなにおいが発生します。夏場の車中やトランクルーム内に長時間保管しないようにしましょう。
・ビールの老化
保存方法によって、新鮮さが失われる老化が起こります。老化の原因は、ビール中の成分が酸化することです。酸化に関わる酵素の働きを抑える研究や、ビールの製造工程において酸素との接触を防ぐなどの工夫がされています。