世親の『倶舎論』における五位七十五法、今回は心不相応行法に入っていきたと思います。必ずしも、心法と相伴うわけではない法体です。
得・非得・衆同分・命根・無想・無想定・滅尽定・生・住・異・滅・名身・句身・文身の十三種類が説かれています。中でも、「得・非得」、四相である「生・住・異・滅」は非常に難しい(ややこしい)ので、順番は前後しますが、先にそれ以外を説明し、後でまとめて説明したいと思います。
○五位七十五法
ここから先がかなり複雑になっていきます。
有為法体の状態変化である四相自体までも法体として設定したのは不思議ですね。それはこれから説明する得と非得についても同様ですが。
それでは、得・随得を四相・四随相を含めてまとめてみます。得と随得は三本の手を持っていると考えると分かりやすいかもしれません。
本得(大得)
●一本目:「有情」
●二本目:「所得法」とその「四相」・「四随相」を成就
●三本目:「随得」とその「四相」・「四随相」を成就
随得(小得)
●一本目:「有情」
●二本目:「本得」とその「四相」・「四随相」を成就
●三本目:過去・未来の「本得」とその「四相」・「四随相」を成就
「所得法」を獲得し、「有情」に繋ぎ留めておくのが「本得」であり、その「本得」自体を「有情」に繋ぎ留めておくのが「随得」です。「随得」は過去・未来の「本得」をも成就するため、刹那ごとに「本得」と「随得」は膨大な量に増加しますが、それらが機能する対象は決まっているため、増え方にも限りはあります。そのため、無間遡及の過失には該当しないと有部は主張します。