マジでやめよう耳かき・耳掃除! と耳鼻科医が叫ぶ3つの理由。
こんにちは、医師&医療経済ジャーナリストの森田です。
今日は耳かきのお話です。
実は近年、米耳鼻咽喉科頭頸部外科学会(AAO-HNSF)が耳かきの危険性と注意点についてまとめているんですね。
米耳鼻咽喉科頭頸部外科学会(AAO-HNSF)
↓↓
”Experts Update Best Practices for Diagnosis and Treatment of Earwax (Cerumen Impaction) Important Patient Education on Healthy Ear Care”
https://www.entnet.org/content/experts-update-best-practices-diagnosis-and-treatment-earwax-cerumen-impaction-important
ここに「耳かきをしてはいけない理由」がしっかり書いてありましたので、今回は全然耳鼻科専門でもない、単なるプライマリケア医のそんな僕ですが、僕なりにまとめてみましたので、お読み頂けますと幸いです。
理由① 耳垢は自然に排出される
上記、米耳鼻咽喉科頭頸部外科学会(AAO-HNSF)のサイトにはこう書かれています。
そもそも耳垢は耳を健康に保つセルフクリーニング剤として機能する正常な物。汚れやほこりその他の小さな物質が耳垢に付着し、耳の奥に入らないようにしているのです。
また咀嚼や顎の動き、皮膚の成長によって古い耳垢は耳の奥から外部に自然に継続的に排出されます。
なるほど、耳かきしなくても耳垢は自然に出てくるんですね。
その「何もしなくても大丈夫」の人の割合は、
子供なら90%、大人で95%の人は耳掃除しなくても耳垢は自然排出される。
(高齢者および発達障害のある方々などでは66%)
とのこと。つまり殆どの人は自然排出されるので耳かき・耳掃除は必要ない!ということですね。
理由② 耳かき・耳掃除は耳の中を傷つけ、耳垢を奥に押し込む
上記、米耳鼻咽喉科頭頸部外科学会(AAO-HNSF)はこう言っています。
肘よりも小さいものを耳に入れないでください(筆者注:「何も入れるな」と言う意味)。綿棒、ヘアピン、つまようじ...これらはすべて耳を傷つけ、外耳道の裂傷(切り傷)、鼓膜の穿孔を引き起こす可能性があります。
鼓膜の穿孔!つまり鼓膜に穴が開くということ。… 怖いですね…
ま、そこまでいかなくても、耳の中が傷つくとそこから真菌感染症(後述)の原因になったりします。更にこう続きます。
問題は、耳かき・耳掃除によって耳垢が外耳道の奥に押し込められて溜まっていってしまうこと。これはさらなる問題を引き起こすことが多いのです。
自然排出されるべき耳垢を、耳かきや綿棒でどんどん奥に押し込んでいってしまう‥。こうなると、かえって耳かき・耳掃除は害悪にしかなりません。
理由③ 耳が痒いのは耳かきのしすぎが原因
さらに、米耳鼻咽喉科頭頸部外科学会(AAO-HNSF)はこう言っています。
耳かき・耳掃除によって奥に押し込まれた耳垢は、耳の痛み、かゆみ、耳の閉塞感、耳鳴り、難聴などの症状を引き起こす可能性があります。
実は、殆どの自然に排出される耳垢がかゆみの原因にはなりません。
それにもまして、耳かきによって耳垢が奥に押し込まれたり、耳掃除のし過ぎで耳の中が傷つき炎症を繰り返すとそこに真菌が感染する外耳道真菌症が、耳のかゆみの原因の多くを占めているのです。真菌自体は普通に空気中に存在する当たり前のものなのですが、それが局所で繁殖してしまうとそれが外耳道真菌症という病気になってしまう、それによって痒みが生まれると。つまり、
耳かきする
↓
耳の穴の中に傷が出来て炎症を起こす
↓
更に痒みが増して耳かきする
↓
炎症部に真菌が感染してしまう
↓
さらに痒くなる
という、まさに悪循環なのですね。
こうした「耳の痒みの原因」について、みなさんが思い違いしていることが多いのではないでしょうか。
参照:外耳道真菌症の診断と治療/川崎医科大学耳鼻咽喉科学 兵 行義https://www.jstage.jst.go.jp/article/jibiinkoka/122/5/122_796/_pdf
耳掃除が必要な人もいる。どんな人?
先程、子供なら90%、大人で95%、高齢者および障害のある方々では66%の人は耳掃除をしなくていい、という話でしたが、逆にそれ以外の人は耳科掃除が必要なわけですね。ではそれはどんな人なのでしょう。
人にはカサカサの乾性耳垢の人と、ジトッとした湿性耳垢の人がいまして、日本人に多い乾性耳垢の人は特に自然排出されるそうです。その場合、まず耳掃除の必要はなし。湿性耳垢は少し注意が必要で、耳掃除しないと耳垢が溜まってしまう人もたまにいるそうです。そして赤ちゃんや高齢者、さらに耳を手術したことのある人などでは、その可能性はより高くなります。
じゃ、自分の耳はどうなのか?
そのへんの判断の参考になるのがこちらの動画。これは乾性耳垢の例です。耳カメラ(後述)で覗いて大体こんな感じなら、定期的な耳掃除は必要ないでしょう。(奥で光っているのが鼓膜です。)
実はこの動画、僕が自分の耳の中を耳カメラで観察してYoutubeにアップしたものです。僕の耳垢は乾性耳垢!だから耳かき不要ですね。実際、もう何年も僕は耳かきしていません (^o^)/
反対にこちらはかなり耳垢が溜まってしまっている耳の中。もし耳カメラで覗いてこんな感じなら、まずは耳鼻科で耳垢を除去してもらって、その後も定期的な耳掃除が必要でしょう。
特に、高齢者の方々の場合、そもそも耳垢が溜まりやすい上に、補聴器で耳垢を押し込んでしまうことも多々あり…
何年ものだろうか?というこんな耳垢を超高齢の方から取り出したこともありますよ(^_^;)
「自分は耳かきし過ぎなんだろうか?」
「うちの両親、高齢だけど耳は大丈夫だろうか?」
という時、まずは耳の中を確認して見るといいと思います。
もちろん耳鼻科の先生に診てもらうのが一番ですが、見るだけなら最近はこんなスマホに接続してしっかり確認できるデバイスも出来ていますので、利用してみてもいいかもしれません。3000円くらいでやすいですし!(僕も診療でよく使っています)
ただし、耳の中を傷つける可能性がありますので、もし耳カメラで多量の耳垢を発見しても
観察だけにとどめ自己判断で耳垢除去をしないことをおすすめします!
(耳カメラには耳かき用のデバイスはついていますが・・)
あ、あと、それでもやっパリ耳掃除したい!という方もおられると思います。
その場合、
・月に1〜2回
・綿棒で優しく拭うように
・深さは1cmまで
くらいにしておいたほうが無難だと思います。
以上、「マジでやめよう耳かき・耳掃除! と耳鼻科医が叫ぶ3つの理由。」でした。
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という信念なので医療情報は基本的に無償で提供いたします。
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原稿を書いているので、
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ぼくの本
財政破綻・病院閉鎖・高齢化率日本一...様々な苦難に遭遇した夕張市民の軌跡の物語、夕張市立診療所の院長時代のエピソード、様々な奇跡的データ、などを一冊の本にしております。
日本の明るい未来を考える上で多くの皆さんに知っておいてほしいことを凝縮しておりますので、是非お読みいただけますと幸いです。
著者:森田洋之のプロフィール↓↓
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夕張に育ててもらった医師・医療経済ジャーナリスト。元夕張市立診療所院長として財政破綻・病院閉鎖の前後の夕張を研究。医局所属経験無し。医療は貧富の差なく誰にでも公平に提供されるべき「社会的共通資本」である!が信念なので基本的に情報は無償提供します。(サポートは大歓迎!^^)