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70代こそ地域包括ケアシステムの旗手!いつのまにか「ソーシャル・キャピタル(きずな貯金)」を育んでしまうオジさんの話。
こんにちは森田です。
今回は、宮崎県宮崎市で、勝手に
「ソーシャル・キャピタル(きずな貯金)」を育んで、
地域包括ケアシステムに貢献しているオジさん(僕の義父)の話をしようと思います。
義父は志々目芳郎さん(71歳)、元警察官で柔道5段の元気なオジさんです。
65歳で仕事を引退した当初は特に働くこともなく、悠々自適の暮らしを送っていました。
■勝手に環境美化活動
「元気なのにもったいないな〜」
と思っていたら、何を思い立ったか、ある日、
「歩道に雑草が生えてて汚い。」
と言い出して、毎日道路の雑草を抜いて回るようになりました。
ついでにゴミ拾いもするようになりました。
そのうち、
「そこに花を植えよう。」
と言い出して、勝手に花を植えるようになりました。
それがこの写真。
この道には、近所の人々が集う『百姓うどん』というお店もあります。
もちろん、そこの駐車場も毎朝掃除しちゃう。
お店の方も大喜び。
いまやお店のご主人と大の仲良しで、ちょくちょく飲みに行ってます。
■勝手に畑作り!
義父の家のすぐ横に、草ぼうぼうの空き地がありました。
地主さんは遠方にお住まいで、年に何回も草刈りや掃除に来られるのですが、南国宮崎の雑草の勢いは凄まじく、そんなものでは追いつかない!
すぐに雑草が生い茂り、荒れ地と化します。
草ぼうぼうの空き地にはゴミが捨てられやすい…
結果、悲しいかな、ゴミだらけになります(ノД`)
虫やヤブ蚊も湧くので、ご近所からも苦情が来て地主さんも困っていたそうです。
地主さんが遠方から草刈り・ゴミ掃除に来られるたびに義父は一緒に手伝って、ひと仕事終わったあとには一緒にお酒を飲むくらいに仲良くなっていたのですが、ある時、
「もういっそあの土地、畑にしちゃっていい?」
と聞いたそうです。
地主さんは大喜び!
地元の人が毎日足を運んで管理してくれれば、雑草問題もゴミ問題も、ヤブ蚊問題も一気に解決。
年に何度も足を運んでいたガソリン代も浮いちゃいます。
それがこの畑。
子どもたちの遊び場にもなっています。
収穫した野菜は、通りすがりの人や近所の人たちに配っています。
■市役所も認めちゃった!?
と、ここまでの活動。全て自費&ボランティア。
宮崎市はゴミ袋も有料…。花の種も苗も全部自費です。
義父は思いました、
「花の種とか苗くらい、市からもらえないかな?」
そこで市役所で聞いてみると、
「個人ではダメです。、、、でも、、(コソッと)二人以上なら団体として申請出来ますよ・・。」
と。(どうやら、義父の活動は市の耳にも入っていたようです。)
そこで義父は、
「道路沿いの商店や個人宅の人たちの名前を借りて、団体にしてしまえばいいだろう」
と考えました。
とはいえ…いまや宮崎市内の住宅地だって都市化しています。
東京の人から見れば宮崎県なんて九州の片田舎に思われるかもしれませんが、今は地方都市でも昔ながらの農村的な人間関係なんて昔の話、どの店に行っても、個人宅に行っても、顔も名前も知らない人達ばかりです。
知らないオジサンがいきなり訪ねてきて、
「名簿に名前・住所を書いてくれ」
なんて言われても普通断りますよね。
ということで、さすがの義父も躊躇したそうですが…
でも、勇気を出して各店・各家を回ってみると・・・
ほぼ全ての反応が、
「いつも掃除をしてくれて、きれいに花を植えてくれてありがとう!名前くらいならいくらでも書きますよ!」
と言うものだったそうです。
で、出来たのがこの名簿。
(いつも一緒の名犬さくらにちなんで「さくら会」)
あっという間に、こんなに集まったそうです。
やはり、こうした活動は地域の人たちからも大きな賛同と称賛を得ていたのですね。
■いつの間にか『地域包括ケアシステム』
元警察官で今は普通のオジサンの義父です。
おそらく「地域包括ケアシステム」なんて言う言葉、聞いたこともないでしょう。
でも僕には、義父のこの活動が「地域包括ケアシステム」の最も重要な部分に思えて仕方がありません。
何故かって?
僕は仕事柄、離島や僻地へ行くことが多いのですが、
そういう田舎にいくと、
「認知症が顕在化しない」
という現象を目のあたりにすることがよくあるのです。
例えば僕が以前居た夕張市では、
けっこう重度の認知症(長谷川式で12点くらい)の80代の婆ちゃんも、
日々徘徊しながらも、一人暮らしが出来ていました。
彼女は、近所中の雪かきもして地域に貢献していました。
80代で重度の認知症でも独居!のお婆ちゃん(朝一番、誰より先に雪かきをしているところ)
一番すごかったのは100歳超えた、かなり重度の認知症(長谷川式で5点くらい)の婆ちゃん。
彼女も徘徊していましたが、これまた一人暮らしを継続していました。
「そんな危険な!」
という声が今にも聞こえてきそうです。
でも、それって誰にとって危険なのでしょうか?
彼らは自分の意思で独居を継続し、地域に貢献しているのです。
「認知症なのに地域に貢献出来るの?」
出来ます。
今日の朝ごはんに何を食べたかは覚えていなくても、昔から住んでいる地域の道、幼いときから毎日やっている雪かきの仕方、こんなものは体が覚えています。
出来ることはたくさんあるのに、僕らがそれを取り上げちゃってるだけなんです。
いや、それでも徘徊はあります。
でも、多少徘徊していても、地域の人々の何気ない見守りさえあれば、大きな問題にはなりません。
何気ない会話をして、「さあ、帰ろう」で終わりです。
それは徘徊ではなく、ただの「散歩」になってしまいます。
こうした地域の暖かな人間関係を、学術的には
『ソーシャル・キャピタル』
と言います。(僕は勝手に『きずな貯金』と意訳しています。)
その重要性は、ハーバード大学のイチロー・カワチ先生が繰り返し主張されているところで、曰く
「日本人の長寿の秘密は、遺伝でも食事でもなく、地域の『ソーシャル・キャピタル(きずな貯金)』」
とのこと。
(参照)
ハーバード大学 イチロー・カワチ教授の調査結果を特別公開
〜日本人はなぜ長生きなのか---3万人の調査でわかったこと〜
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/33482
愛知県のある地域で65歳以上高齢者を追跡調査したところ、
アンケートで「地域の人を信頼できる」と答えた人が多い地域は、
そうでない地域より要介護になる人が4割も少なかったとのこと。
厚生労働書の地域包括ケアシステムの図だって、その想定範囲は『中学校区』で、その中心は『住まい・暮らし』です。
『地域包括ケアシステム』というと、
『在宅医療の充実』とか
『医療と介護の連携』とか
そうしたことが強調されがちです。
でも実は、『ソーシャル・キャピタル(きずな貯金)』があれば、
要介護にもなりにくい!
なったとしても顕在化しにくい!
もし本当にそうなのだとしたら、
いま我々がやるべきは、『医療・介護の充実』という困った後の事後対応にもまして、
『ソーシャル・キャピタル(きずな貯金)の充実』という地域で高齢者が困らないための対策なのではないでしょうか。
そう考えると、義父のあの活動こそが、
『地域包括ケアシステム』に最も貢献する活動なんじゃないかと思えてきます。
…近所をよ〜く見てください。あなたの周りに、
『リタイアしたけど暇そうなオジさん』はいませんか?
もしかしたら、これからはそんなオジさん達の活躍が、
『ソーシャル・キャピタル(きずな貯金)』の鍵を、
そして
『地域包括ケアシステム』の鍵を握っているかもしれないですね。
志々目芳郎さん(愛犬さくらと孫達と)
*後日談(約半年後/2018年5月4日)
実は先日、義父が入院しました。腰部脊柱管狭窄症の手術で約一ヶ月の入院です。
義父は入院していた1ヶ月の間、道路の花が枯れないかとても心配だったそうです。
しかしなんと、「百姓うどん」の社長岩切さんをはじめ、ご近所のお店の方々、ご自宅の皆さん、子どもたちまで、みんなが声をかけて
「オジさんが入院してる間に花を枯らしてはならぬ!」
と、水掛け、枯れ花・枯れ葉取り、草取りなどをしてくれたそうです。
結果、退院してきたとき道路の花々はとても元気だった、と。
その様子がこちら。
左上の「響ラーメン」は百姓うどんの岩切社長の弟さんのお店(全国的に有名な響太鼓の岩切さんです)、みんなで花の水やりをしてくれたそうです。
元気に退院した義父の快気祝いで、百姓うどんの岩切社長も大喜び!
「地域の良好な人間関係」これが元気の源なんですね。
左が筆者、奥が義父、右が百姓うどんの岩切社長。
宮崎県では生センマイやレバ刺し(鶏)も食べられます。
注:この記事は投げ銭形式です。
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著者:森田洋之のプロフィール↓↓↓
https://note.mu/hiroyukimorita/n/n2a799122a9d3
夕張に育ててもらった医師・医療経済ジャーナリスト。元夕張市立診療所院長として財政破綻・病院閉鎖の前後の夕張を研究。医局所属経験無し。医療は貧富の差なく誰にでも公平に提供されるべき「社会的共通資本」である!が信念なので基本的に情報は無償提供します。(サポートは大歓迎!^^)