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組織再編の税務処理が否認されたPGM事件について―被告(国)の主張

【ご注意】この記事は、同業者、租税法研究者、これらに準ずる好事家向けの記事であり、前提知識の説明などをすっ飛ばしていますので、上記以外の方々にとっては読みづらいかもしれません。

1. はじめに

PGM事件は、東京地裁で長らく審理が続いていましたが、私が適法に入手した情報によれば、本年(2024年)4月に弁論が終結し、9月に判決言渡しが予定されています。

そこで、私が適法に入手した情報に基づき、同事件における被告(国)の主張の概要をご紹介します。原告(納税者)の主張は省略します。

なお、同事件の事案の概要については以下のニュースレターをご参照ください。

2. 被告の主張①:法人税法57条2項の(本来の)趣旨及び目的について

この点に関する被告の主張は、TPR事件の下級審判決と全く同じで、合併による事業の移転及び合併後の事業の継続が想定されている、という例のアレです。

ご承知のとおり、TPR事件は平成22年度税制改正前の事案であるのに対し、PGM事件は同改正後の事案ですが、被告はその点をほとんど意に介していません。
(残余財産の確定に係る論点については原告の主張を受けて反論していますが、割愛します。)

なお、被告が上記を同項の「本来の趣旨及び目的」とは言っておらず、単なる「趣旨及び目的」と言っている点は、気に留めておくべきポイントでしょうか。

3. 被告の主張②:本件の行為計算の不自然性について

被告は、以下の二点を指摘し、本件各合併は不自然であると主張しています。

  • 本件各合併による欠損金保有法人の事業の移転がないこと

  • 欠損金保有法人と原告の直接合併(非適格合併)を妨げる事情が未処理欠損金額の引継ぎができないこと以外に存在しないにもかかわらず、あえて迂遠な方法をとることにより、適格合併による未処理欠損金額の引継ぎを実現したものであること(「適格作り」であると明言しています。)

前者の指摘は、上記2.の法57条2項の趣旨及び目的に係る主張を受けてのものですが、後者の指摘はそうではなく(つまり、規定の趣旨とは関係なく)、もっとシンプルに迂遠だから不自然という主張だと思います。

4. 被告の主張③:本件の事業目的等の不存在について

詳細は割愛しますが、被告は、本件の事実関係に基づき、欠損金保有法人を吸収合併する理由は「未処理欠損金額の引継ぎ」と「法人の消滅による諸経費の削減」しかないが、後者は数値化できないほど微々たるものであったことなどから、本件各合併の目的は専ら前者にあったとして、事業目的等は存在しなかったと主張しています。

5. その他

「租税回避の意図」や「規定の本来の趣旨及び目的からの逸脱」については、上記各主張から半自動的に記述できる内容ですので、省略します。

6. 終わりに

勝ち負けの見込みについては、ここではコメントを控えたいと思います。9月の判決を入手できましたら、何らかの形でご紹介できればと思います。

お読みいただきありがとうございました。

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