日産CFC事件最高裁判決(最判令和6・7・18)に関する短いコメント
1. はじめに
以前noteの別稿で取り上げた日産CFC事件について、本日(2024年7月18日)、最高裁判決が言い渡されました。
結果は、国の逆転勝訴で、日産自動車に対する課税処分が適法であったことが確定しました。
2. 判決文など
最高裁判決はこちらです。
判決直後の日経新聞の記事へのリンクも掲載しておきます。
また、1.の冒頭で言及した、この事件に関するnoteの別稿は以下のとおりです。
高裁判決に関するジュリストの拙稿をベースにしたもので、「保険の目的」という文理から解釈するのは難しく、国に分があるのではないか、という話を書きました。
3. 若干のコメント
本判決が実務に与える影響は、軽微だと思います。
第一に、本件はたまたま非関連者割合が50%を割ってしまう状況でしたが、受再する保険をうまく調整することで50%超を維持することは可能と考えられるためです。
第二に、国側が管理している税務訴訟一覧を見る限り、同じ争点の訴訟は提起されていないと見受けられるためです。
他方で、租税法の解釈を考える上で本判決は格好の研究材料ではないかと思います。
というのも、今回の判決が「保険の目的」という争点となった規定の文言の文理に全く言及せず、「規定の趣旨」と「(規定が前提としている)通常の保険取引とはどのようなものか」の二点にのみ基づいて必要な解釈を導き出してるからです。
租税法の解釈の大原則は文理解釈とされており、最近の最高裁判決も文理を重視してきました(ADW最高裁判決のように文理だけでは解決が難しい解釈問題においても、「押さえ」として文理への言及がありました)。
前述のとおり、今回の判決は、このような最近の最高裁判決とは異なる解釈手法をとっています。それがどのような理由によるものか、また、これまでの最高裁判例と整合的に理解できるか、といったあたりが今後議論されていくことになるのではないかと思います。
この記事は以上です。お読みいただきありがとうございました。