【台湾のジャズライブ】吳妍萱 《獨演。場 II》
吳妍萱の演奏する"Cube"というバンドのことを以前紹介しました。話をしていると普通の台湾女子なのに、演奏に入ると鬼気迫る、神がかった状態になるこの古箏奏者が、今度は電子楽器を使いソロの演奏をするというので、中壢の大河壩小書店に行ってきました。2024年6月のことです。
吳妍萱
吳妍萱は、初めピアニスト林亮宇とのデュオ演奏、次は琵琶と中国の打楽器とのトリオの演奏を聴いた古箏の奏者です。中国陝西省の古箏の大家のところまで行って留学をして、中国伝統音楽の研鑚に努めています。
台湾に戻ってからは伝統のテクニックに裏打ちされた技術と、21世紀に生きる台湾人女性の感性を合わせて、とてもオリジナルな音楽を使っています。
しかし、それにしても今回は古箏のソロ演奏で、しかも電子音楽を合わせるというのです。全く何が起こるのか想像もできませんでした。下にこの演奏に先立って著された、演奏会の紹介文を翻訳してみます。
《獨演。場 II》
「古箏を演奏するということは、私にとっては実在そのものです。それは、生活であり、儀式でもある。そしてごくプライベートな誠実さの表現でもあります。
私が注目するのは、生命の中に宿る『偉大なもの』と『微小なもの』の光と影が煌めく瞬間です。時がうつるにつれて、私の指を通して、それを刻んでいく。私の私的な力によって記録していくのです。
私は、この場所で音楽による一つの場をつくります。それをみなさん聴いて、見て、感じてください。この日常の光景に現れる、とても稀な秘密の瞬間を。」
—吳妍萱
《獨演。場》のシリーズは、古箏の演奏家吳妍萱が、ここ数年の多くの異なった領域とスタイルのコラボレーションを経て、新しくチャレンジする「ソロ演奏」のライブです。2023年の《獨演。場》に続いて、今回の《獨演。場 II》では、古箏の伝統楽曲(潮州箏曲、河南箏曲)や現代の古箏の曲を演奏します。さらに、前回に引き続き古箏と電子音楽のコラボレーションによる新作も発表します。
伝統楽曲の楽譜やテクニックから、現代の古箏曲への理解とその発展。さらにそれに加えて電子音楽と古箏の音色を組み合わせるオリジナル曲もあります。《獨演。場 II》では伝統と現代、オリジナル曲と即興を総合した手法による演奏を繰り広げます。
吳妍萱のFBホームページ
Cube Bandのライブの紹介記事
こちらは、中国の伝統楽器によるトリオの演奏です。
大河壩小書店
台湾では、台北や高雄などの大都市だけではなく、今は地方都市にも特色のあるライブハウスが続々と出来ています。大河壩小書店は桃園縣中壢にあるお店です。
中壢という街は、台湾鉄路の駅から離れたところに夜市があり、そこからごく近いところにこの本屋さんはあります。この場所は、本来小さな地域の書店なんですね。この本屋さんが月に数回音楽の演奏する場所となる。そして、その中に頻繁にジャズライブがあるという様子です。
このジャズライブなんですが、店主のセンスが良いのか、人間関係からなのか、とてもレベルの高いミュージシャンのものが多いです。彼には一度Sapphoで会ったことがあるのですが、ジャズが好きでしょっちゅう台北に聴きに来ているようです。
大河壩小書店のFBのホームページ
この日の演奏は2曲だけ映像に撮りました。もう1曲は吳妍萱自身のYouTubeチャンネルからのリンクです。
心臓
台湾でも日本のアニメは大人気です。吳妍萱は"進撃の巨人"とても刺激を受けたようで、今回のライブで、このアニメをテーマにした曲を2曲演奏しました。今回の電子音楽とのコラボレーションはどちらもそれでした。
"心臓"は戦いの前の緊張した様子を、自らの鼓動を感じることで実感するといったシーンなのだそうです。
白夜
彼女は特にこの"白夜"の回が気に入ったようです。このお話からインスピレーションを得て作曲したと言っていました。
電子音楽の部分は環境音楽的に、全体の雰囲気を作り出し、その中で古箏のメロディーを奏でるといった様相でした。
箜篌引
これは古代の朝鮮の楽曲なのだそうです。悲壮なイメージの激しい曲でした。この様な高度なテクニックを要する、古箏の演奏をすると、とても集中した様子になります。聴く方も緊張しますね。
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