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ブルースのコード進行


西洋音楽をやる際にブルースと言うのは、ほぼ定型的な12小節の音楽形式のことです。様々なバリエーションがあり、どれでも似た様なものだと考えていました。
それが、ある時この形式はこの様に理解したら良いのではと思ったので、そのアイデアを書いてみます。

3度/7度でコンピングをすると

ジャズコンボバンドでのレッスンを受けると、先生からピアノのコンピングは音数をあまり増やさず、基本的な音だけで演奏する様に指導されます。そのため、ある時全くの3度/7度だけで、近い音域だけで演奏してみようと思いたったのです。これをBillie’s Bounceを例に分析してみます。

Billie’s Bounceのコード進行

上記のコード進行による、3度+7度によるコンピングサウンドは、下記の様になります。

A+E♭ / A♭+D / A+E♭ / B♭+E♭,A+E♭
A♭+D /  A♭+D / A+E♭ / C+G,C+F♯
B♭+F / B♭+E / A+E♭,C+F♯ / B♭+F,B♭+E

このコンピングサウンドは、とても弾きやすいです。音の動きが限定的で、直感的に理解しやすい。
そして、これを弾いてみて気がついたことがいくつかあります。

  1. 全体的に、音を出す位置をほとんど変えずに済む。

  2. 1小節目から8小節目までは、トニックとサブドミナントが主体となっているので、F7の3度+7度であるA+E♭とその半音下のB♭7の音A♭+Dを出していれば、それが基本的なサウンドになる。

  3. 4小節目、8小節目と12小節目は、それぞれ5小節目、9小節目と1小節目に繋ぐⅡm7/Ⅴ7になっている。

  4. 10小節目でようやく、本来のドミナント機能を持つC7が現れる。

  5. 最後の2小節は、Ⅰ/Ⅵ7/Ⅱm7/Ⅴ7の進行になっており、上と同じ様に、長3度上がってから順次降りてきてトニックに解決する。

端的にいうと、1小節目から8小節目まではトニックとサブドミナントを行ったり来たりしながら、同じコードを繰り返している。9小節目から12小節目にはようやくドミナント機能が現れて、解決感の強い音使いになっているということです。

基本形のブルース進行で考える

Billie’s Bounceは、比較的コードの変化の多いジャズ的なブルースなので、もっとシンプルな形のブルースの曲、C-Jam Bluesのコード進行で上記のことを確認してみましょう。

C Jam Bluesのリードシート

C-Jam Bluesでは、比較的基本に忠実な進行になっていて、最低限セカンダリードミナントが加わっている形です。3度+7度によるコンピングサウンドは、下記の様になります。

E+B♭ / E♭+A / E+B♭ / E+B♭
E♭+A / E♭+A / E+B♭ / G+C♯
F+C / F+B / E+B♭,G+C♯ / F+C,F+B

これはとても覚えやすい、弾きやすいコンピングパターンです。そして、この構成自体はBillie’s Bounceのそれと何ら変わりありません。

昔からブルースの進行では、何故3小節目、7小節目、11小節目にトニックが現れるのだろうと不思議に思っていたのですが、ブルースのコード進行の構成の肝になる部分が、ここにあるということなんですね。
トニックからトニックへ、サブドミナントからトニックへ、ドミナントからトニックへ。この3つのコード進行を繰り返すことが、ブルースのコード進行の最も基本的なことなのだろうと理解しました。

バリエーションを考える

ブルースの基本進行を踏まえて、部分部分にバリエーションを加えると、様々なブルースの曲の進行が得られます。

【基本進行】

Ⅰ7 / Ⅰ7 / Ⅰ7 / Ⅰ7
Ⅳ7 / Ⅳ7 / Ⅰ7 / Ⅰ7
Ⅴ7 / Ⅴ7 / Ⅰ7 / Ⅰ7

【バリエーション1】

2小節目をサブドミナントに、12小節目をドミナントに変更。

Ⅰ7 / Ⅳ7 / Ⅰ7 / Ⅰ7
Ⅳ7 / Ⅳ7 / Ⅰ7 / Ⅰ7
Ⅴ7 / Ⅴ7 / Ⅰ7 / Ⅴ7

【バリエーション2】

8小節目をセカンダリードミナントに、9小節目をⅡ-Ⅴの形に変更、11小節目と12小節目をⅠ-Ⅵ7-Ⅱm7-Ⅴ7。これでC Jam Bluesの進行になります

Ⅰ7 / Ⅳ7 / Ⅰ7 / Ⅰ7
Ⅳ7 / Ⅳ7 / Ⅰ7 / Ⅵ7
Ⅱm7 / Ⅴ7 / Ⅰ7,Ⅵ7 / Ⅱm7-Ⅴ7

【バリエーション3】

さらに、8小節目をセカンダリードミナントのⅡm7 / Ⅴ7に変更するとBillie’s Bounceの進行になります。

Ⅰ7 / Ⅳ7 / Ⅰ7 /  Ⅰ7
Ⅳ7 / Ⅳ7 / Ⅰ7 / Ⅲm7,Ⅵ7
Ⅱm7 / Ⅴ7 / Ⅰ7,Ⅵ7 / Ⅱm7,Ⅴ7

ブルースの基本的な考え方

最近は、曲のコード進行をまるまる覚えるのではなくて、自分なりの感覚で覚える様にしています。その際、基本となるのは、サブドミナント/トニックの進行は比較的ドライブ感がない、緩やかな進行であるのに比べると、ドミナント/トニックの進行は、とても解決感の強い、強制力の強い進行だということです。

そうすると、ブルース進行の1小節目から8小節目までは、比較的ドライブ感の弱いトニック/サブドミナントの進行になっている。9小節目から12小節目までは、ドライブ感の強いドミナント/トニックの進行になっていると考えられます。その形の上にセカンダリードミナントが適宜加わっている。

そんなことから、Bluesの進行は文章構成の用語を使って、"起/承/転"の3部構成と捉えれば良いのではないか、そう考える様になりました。の部分ではトニックを主体にスタート、の部分ではサブドミナントを使って抑制した変化で構成、の部分でドミナントを用いて進行感の強い変化を出す。

ルートに対して、サブドミナントとドミナントでその様な性格付けをする。その基本構成の上で、さらに細分化したバリエーションを考えれば、ほとんどのブルースの曲の構造を直感的に捉えることができそうです。

また、初めて弾くブルースの曲でも、この基本構造の上にバリエーションを加えていけば、大体の演奏はできる様になります。最近Sapphoのブルースジャムセッションにも参加していて、そこでは普通譜面の提供はなく、キーとメジャーかマイナーかだけしか指示が来ません。それで、大体この様に考えて、相応しい進行を探して演奏しています。

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