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【台湾建築雑観】設備工事(その四)

今回は、空調設備工事について説明します。
住宅用に用いる空調設備は、日本でも台湾でも同じ様なものです。設備そのものはあまり変わらないのですが、その空調設備をどの様に建物に組み込むかというレベルになると、やはり多くの異なった点があります。誠に不思議なものです。

日本の設備配管工事

室内機の設置工事
日本の空調室内機は、窓面の近くに配置されるのが普通ですね。外壁に面して設置して、バルコニーに設ける室外機との配管をできるだけ短くするよう考慮しています。また、窓面における外気の影響が大きいため、この位置に室内機を設けるのは、空調効率の面から考えても理にかなっていると思われます。
大規模な住戸でマルチタイプの空調設備を使う事になると、室内機と室外機の距離が離れるようになります。そうなると室外機からの配管ルートを考え、最も工事をしやすい位置に配置されます。

室外機の設置工事

空調室外機は、通常バルコニーに、或いは開放廊下の場合、廊下側にも設置されます。室内機の設置される窓面のすぐ裏側ということが多いです。
ごくたまに、室外機をバルコニーや外廊下に置けない場合、独立した室外機置場を設けることがあります。そうした場合でも、この室外機をメインテナンスするためのルートは考慮されています。窓から降りる様な処理が多いですね。

冷媒管工事

日本では、室外機と室内機を結ぶ冷媒管は室内機が窓の上に設置されることが多いので、最短距離で設置されることが多いです。正味上下の高低差+α、2m程度でしょうか。マルチタイプの場合、冷媒管が長くなることはあります。

排水工事

日本場合、室外機からの排水は通常バルコニーにそのまま排水されます。外廊下に設置する場合でもそうです。ただしその場合、廊下の排水側溝まで水が流れていくことになるので、水みちを設けて限られた範囲で排水が流れ、そこは掃除しやすい材料にしています。

台湾の設備配管工事

室内機の設置工事
台湾の空調室内機は窓の上に置かれることが少ないです。これは、室内機からの排水を日本の様に露出配管で処理せず、コンクリートや軽量鉄骨間仕切りの中に入れて処理するためと考えられます。
また、壁掛け式の室内機はそれほど好まれず、一般的に天井面内に収めて、ラインタイプの吹き出し口を設けることが多いです。そうなると室内機は必然的に部屋の中央あたりに配置され、そこからの排水経路を考えないといけません。

室外機の設置工事

台湾の室外機も、基本はバルコニーに配置する様考えます。
ただし、平面計画におけるバルコニー面積の要件があって、日本と比べるとはるかに小さなバルコニーしか設けることができません。そうした場合に、バルコニーに空調室外機を置けず、それに次ぐ場所として、露出した梁の上とか外壁面に設けることになります。
そのような配置になると、将来のメインテナンス時に不便になることを日本人は気にしますが、台湾の集合住宅設計では面積要件の方が優先順位が高く、メインテナンスの問題は、必要であればゴンドラで行うと不問に伏します。

冷媒管工事

先に述べたように台湾では、室内機が室内側の壁面、或いは天井内に設置されるので、冷媒管は日本の場合と比べると長く設けられることになります。

また、天井の仕上げ工事が通常ディベロッパーは行わず、住人側の工事になっているという習慣があります。これはこの空調室内機の設置を住人側が行うことと関係があるのかもしれません。

排水工事

先に述べたように、台湾の室内機からの排水工事は、壁面の中に組み込まれた排水管を使って行われます。これは台湾人の好む室内機の配置計画に理由があるのだと思われます。
そして壁面を使って外部まで持っていった排水を、バルコニーとは別の独立した縦配管で下階まで持っていきます。台湾ではバルコニーの水は雨水系統で、空調からの排水は雑排水系統で処理するというルールになっており、別々の排水系統を計画します。

空調設備の考え方の違い

日本の空調設備というのは世界でも特有のもので、アメリカやヨーロッパでは使われていないのだそうです。これは高温多湿の国に相応しい設備なので、それらの国や地方ではあまり必要性を感じないのかもしれません。一方、台湾や東南アジアでは日本の空調設備は気候風土にあったものとして多く採用されています。
そんな中でも、台湾ではダイキン・日立・三菱・パナソニックなどのメーカーが進出しており、台湾国内のメーカーも同様の製品を使っており、日本と同じような技術的背景を持っています。

しかし具体的な計画になると、上に述べたように、台湾人の好む配置計画や、法規的規制、技術的規制の違いにより微妙に異なる。それが面白いところです。

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