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日本のアニメとジャズ

日本でジャズを演奏していても、アニメの音楽が使われることはあまりありません。たまにルパン三世の曲を聞くくらいです。それが、台湾ではかえって日本のアニメ音楽を聴くことがしょっちゅうあります。そんなアニメ音楽、再発見の出来事です。

ポーランドのサックス奏者

2019年のことだったと思います。いつも遊びに行くJazz Spot Swingに、ポーランドのサックス奏者が一人で来ていました。英語で話していたのですが、僕が日本人だと知ると、"Cowboy Bebop"の音楽は弾けるかと言い出したのです。
僕は、子供から大学生の頃まではアニメをよく見ていましたが、社会人になってからはほとんど見ていないので、この作品の名前は聞いたことがありましたが、その内容も音楽も全く知りませんでした。それで、もちろんジャムセッションも出来なかったのですが、ポーランドの人から、日本のアニメ音楽の話を聞くなどとは想像もしていなかったので、とても驚きました。

このポーランド人が、Cowboy Bebopの作曲者、"菅野ようこ"は凄いと言っていたので、調べてみると、確かにそうでした。殆ど曲のジャンルを選ばない、どの様なスタイルでも作曲してしまう職人肌の作曲家だと知りました。東日本大震災の被災者のために作った、"花は咲く"と言う作品も有名です。
この作曲家のことも、ポーランド人に教わったわけです。

Cowboy Bebopのオープニングテーマ

"菅野ようこ"のWikipedia のスレッド

アメリカのサックス奏者、Erick Nelson

2022年10月にあった林華勁のTri-polar Syndrome Projectに、アメリカの若いサックス奏者が加わっていました。名をErick Nelsonと言います。林華勁がジャムセッションで意気投合して、彼を自らのライブに呼んでいました。なんでも、アメリカでは新世代のサックスプレイヤーとして、そこそこ有名な人物なのだそうです。

この彼が、この後2ヶ月ほど台北のあちこちのライブハウスで、ジャズの演奏に参加していたのですが、その際にたくさんの日本のアニメ音楽を取り上げていました。話をしたところでは、彼はこの後東京に移り早稲田大学に入学するということでした。日本のそういう音楽が好きなのが高じて、日本への留学を志したのですね。

Erick Nelson

Erick Nelsonのホームページ

下は、Rhythmscapeで行われたライブの案内です。案内で初音ミクのイメージを使っています。中文で"動漫"とあるのがアニメのことです。
 サックス:Erik Nelson
 ピアノ:詹宗霖
 ベース:陸荃
 ドラム:洪惟農

日本でどの様に活躍していたのかは把握していませんが、2024年2月に彼は台北に戻って来ていました。日本の大学の春休みを使って来ていたのでしょう。

Rhythmscapeで行われた
Erick Nelson Quartetのライブのポスター。

Nana Laiのプロジェクト

日本の歌を歌う台湾のヴォーカリストに、Nana Laiがいます。彼女がRhythmscapeで行ったライブが、全面的に日本のアニメをテーマにしたものでした。共演しているミュージシャンもみな20代の若者で、彼らは日本のアニメ音楽にとても親しんでいるのでしょう、全プログラムアニメ音楽をフィーチャーしていました。
台湾の若い世代のジャズミュージシャンは、子供の頃から日本のアニメ音楽に親しんでいて、好んでそれをジャズのライブで演奏しています。
 ヴォーカル:NaNa Lai​
 ピアノ:詹宗霖​
 ギター:趙阿蘭​
 ベース:莊平​
 ドラム:馬仕函​

Nans Lai
ここでは、萌アニメを取り上げていますね。

"どうぶつの森"プロジェクト

これは、アニメではなくてゲーム音楽ですが、"どうぶつの森"をテーマにしたクリスマスライブが2年連続して開かれました。プロジェクトのリーダーは藤井俊充、日本出身で台湾で活躍しているマルチジャズプレイヤーです。
彼は、このゲームで用いられている音楽にインスピレーションを得て、これをジャズに編曲してオクテットのコンボバンドで演奏しています。このゲームは台湾でも好評を博していて、このアイデアに賛同するミュージシャンがたくさんいるのだそうです。ツインヴォーカルというゴージャスなフォーマットで、とても優雅なクリスマスライブになっていました。

このライブの様子は、以前noteで紹介しています。

藤井俊充

この様な日本のアニメを愛好するミュージシャンのことを知ったので、FBなどで海外のミュージシャンが日本のアニメを演奏する動画が目に入ってくる様になりました。それは、とても多様なスタイルの音楽で、リズミカルなバップの曲からムーディーなもの、フォーマットもヴォーカルを主体にしたトリオから、ビッグバンドの演奏まで、色々な形があります。

日本のアニメ音楽って、世界では相当に市民権を持っているのですね。久石譲以外にもこんなに聴かれているって、台湾で生活して初めて知りました。

Anime Jazz

これは、コンボバンドで日本のアニメ曲をダイナミックに演奏しています。

Playing Jazz

これは、ヴォーカルをメインにフィーチャーしたしっとりとしたジャズですね。

もしかすると、僕が日本の事情に疎いだけで、日本でもたくさんのジャズバンドが、アニメソングを演奏しているのでしょうか?

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