【台湾のジャズライブ】洪紹桓クインテット
台湾には中国の伝統楽器笙を使ってジャズを演奏するミュージシャンがいます。名前だけであれば2人を確認しました。ここに紹介する洪紹桓はそのうち最も活躍している一人です。
洪紹桓
洪紹桓は笙という中国の伝統楽器でジャズを演奏するミュージシャンです。台北では、ヨーロッパに留学していたミュージシャンとのコラボを沢山やっていますが、自身もベルギーに留学してジャズを学んだそうです。留学する先の学校ではもちろんこんな楽器でジャズを教える先生はおらず、面接時に先生が笙を見て面食らったとのこと。
詳しくは確認できていないのですが、洪さんの演奏する笙は、雅楽でのものと音色が違うように思います。雅楽のものよりは金属色の強い、パイプオルガンのような音に感じます。竹で作ったパイプの先端に金属のキャップを付けているというような説明をしていました。
音も複数鳴るようで、アコーディオンのような響き方をしている印象もあります。何しろ不思議な楽器です。
演奏を生で聴いたことは一度だけあります。達粉俱樂部という陳穎達のオリジナル曲を演奏するというプロジェクトにゲストで加わっていました。音色が非常に東洋的に響く楽器なので、穎達の台湾の風土色のある曲に非常にマッチした色合いを加えていました。
中国の伝統楽器によるジャズというのは、試みはいくつもあるようですが、あまり本格的なものはありません。それに比べると、洪さんの笙によるジャズは本物であると感じます。これから笙によるジャズミュージシャンの草分けとして活躍していくと期待しています。
李哲安
李哲安の演奏は、2020年8月陳穎達へのトリビュートプロジェクト達粉俱樂部で初めて聴きました。達粉というのは穎達のファンの意味ですね。穎達はギタリストなのですがサックスの李哲安がリーダーとなって行ったプロジェクトだそうで、彼がMCをしながらライブを進めていました。その時のメンバーは錚々たるもので、彼が台湾のジャズ界でリーダー的な立場にいるのだろうと感じられました。
彼は台湾でジャズを学んだ後、バークレーで研鑽を重ねた経歴を持っています。それで様々な人脈を持っているんですね。
蕭育融
蕭さんのギターは、2020年6月に迪化街のカフェ、Modern Modeで初めて聴きました。Debby Wang Trioのメンバーとしての演奏でした。ピブラフォンDebby、ベース王群婷というレベルの高い2人に混じって、蕭さんは臆することなく、淡々とギターの演奏に集中している様子でした。
Debbyさんは、非常にハイテンポなアグレッシブなプログラムを選んでいたのですが、ギターも切れの良いバッキングとアドリブを奏でていました。
次に蕭さんを見たのは、達粉俱樂部というギタリスト陳穎達へのオマージュプロジェクトです。穎達の作品を、彼のファンが集まって演奏するというものです。この演奏は穎達本人を前にして行われました。蕭さんはこのライブにギタリストとして参加していました。ということは、ジャズミュージシャン仲間に穎達の後を継ぐギタリストだと信頼されているということなのでしょう。
演奏をした後に、蕭さんに作曲者本人を前にして緊張しませんでしたと聞きましたが、どうもそんなことはなかったようです。大好きなギターの先輩の曲をみんなで楽しく演奏したというような雰囲気でしたね。
2021年12月には羅妍婷カルテットで蕭さんの姿を見ました。彼女のプロジェクトは非常に実験的な試みをする難易度の高いものでしたが、このライブのパートナーとして彼は選ばれていました。そしてこの難しいプロジェクトを成功に導いていました。
今の台湾に、40代の著名なジャズギタリストは何人もいます。しかし、その次の30代になるとまだそれ程有名なギタリストはいません。その中で蕭さんは、沢山のジャズミュージシャンの信頼を得ている、頭一つ抜け出ている存在のようです。
王群婷
彼女の演奏はたくさんの組み合わせで聴いています。謝明諺のいくつかのプロジェクト、ビブラフォンのDebby Wangとも複数のプロジェクトがありました。ピアノの曾增譯やギターの劉雲平とのデュオ。小さなフォーマットのジャズが好きなので、この様な組み合わせも楽しく聞いています。
何回か女性ミュージシャンだけによる演奏がありました。それはまだ聞いていませんが、その際のベーシストはいつも彼女でした。
彼女のベースは、基礎がしっかりとしたニュートラルな演奏という感じがします。多くのジャズミュージシャンが、音楽を子供の時から学んでいるわけではなく、成人してから始めています。それに対して、彼女は小さなときから音楽の教育を受けているのだそうです。だから楽譜を読み込む基礎がしっかりしている。そんなことを"島嶼之火"のインタビューで言っていました。
それに加えて、共演者のリクエストに柔軟に応えるからなのでしょう。それで共演のオファーがひっきりなしにくるのではないでしょうか。
馬仕函
馬仕函の台湾ジャズ界での活躍は、枚挙にいとまがありません。何しろ月に20本を超えるというライブを毎月のように続けているのです。そしてそのどれもが、台湾の一流のミュージシャンとのコラボです。玉石混交ではなく、どれもが玉ばかりという演奏になっています。
なおかつ彼は台湾では最も熱いジャムセッションステージであるSapphoで、ホストをやっています。ここでまた若いミュージシャンを見出し、彼らに加わって新しいライブメンバーとなる。そんな具合で、台湾では圧倒的にその存在感を示しているドラマーが馬仕函です。
愛称は小馬。ギターの李世鈞が小李、ピアノの許郁瑛が小鬼と呼ばれているのと感じが似ているのは、3人とも気さくな性格で、偉ぶったところが全くないというところでしょうか。親しいお兄さんお姉さんと感じられるところが共通点ですね。それなので馬仕函にも沢山の演奏のオファーが来るのでしょう。
https://www.facebook.com/groups/576457089563845/user/100001255540581/
李毓庭 Yu-Ting Li
動画で紹介しているのは、上記のクインテットによる演奏ですが、実際に演奏を聴いたのは洪紹桓、王群婷とこの李毓庭によるトリオの演奏でした。
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