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半音音程の魔法

西洋音楽の作曲技法では、半音音程(短2度音程)は避けるべきものとされ、3度音程、5度音程を基本にしたハーモニーが好まれます。しかし、ポピュラーやジャズの演奏では、半音音程が頻繁に現れます。その場合のハーモニーとその根拠を説明してみます。

短2度音程

クラシックの作曲理論では、協和する音程を厳密に定義しており、次の様に考えています。
完全協和音程
・完全1度
・完全4度
・完全5度
・完全8度
不完全協和音程
・短3度
・長3度
・短6度
・長6度
クラシックの作曲ではこれらの音程を使って、和音やハーモニーを作っていくのが原則です。そして、これ以外の音程を不協和音と定義しています。

不協和音音程
・短2度
・長2度
・増4度/減5度
・短7度
・長7度

このうち長2度(長9度)と短7度は、ポピュラー音楽で多用される音程です。
ここでは、特に取り扱いの難しい短2度音程、半音音程を使うハーモニーと、その音楽的な根拠について説明してみます。

ⅠM7

メジャー7thのコードは、ルートの上に長3度、完全5度、長7度の音程を重ねて作ります。このハーモニーの特徴は、長3度音程に対し完全5度となる長7度音程を重ねることです。このハーモニーには2つの完全5度安定が含まれており、それが明るい音色の和音になる根拠だと考えています。
この和音は、基本形であれば短2度音程は出てこないのですが、展開形を用いると。ルートと長7度の間に短2度音程が現れます。例えば、完全5度/長7度/ルート/長3度、という弾き方ですね。
これがⅠM7に短2度音程が現れる根拠です。

ルートと長7度の間に短2度音程が現れます。

Ⅴ7♭9

♭9というテンションノートが現れると、この音はルートに対して短2度音程と同じ音になります。
この和音は、短調のスケールに対してⅡ-Ⅴを使う時に現れます。短調の場合のⅡ-Ⅴは、通常Ⅱm7♭5-Ⅴ7♭9となります。この2度音程に対する♭5と、5度音程に対する♭9は同じ音で、ルートに対する♭6になります。この音が、短調らしさを表す特徴音の一つです。

ですので、短調のメランコリックな雰囲気をドミナントに持たせたい場合に、Ⅱm7♭5-Ⅴ7♭9という進行を使っています。この場合、dominant 7thに♭9のテンションノートが用いられます。この音程をルートと離して使えば、短2度音程は現れませんが、特にクラスター的なハーモニーにしたい場合には、ルートと♭9thを隣り合わせて使うこともあります。

ルートと♭9thの間に短2度音程が現れます。

Lydian Scale

普通の長調の音階にも短2度音程は現れます。長3度と完全4度との間、長7度とルートの間です。
この長3度の音と完全4度の音は、通常両立しません。二者択一の音として使われます。それはsus4と呼ばれる和音がある様に、完全4度から長3度に半音下がるという音の動きが、ドミナント進行のキモであるからで、この2つの音が同時になることが不自然だからです。実際にアドリブをしている際に、メジャーコードを鳴らしている際に完全4度の音を使うと、とても違和感を感じます。間違った音という印象を強く感じます。

しかしこの完全4度の音を半音上げた音階、♯11thの音を使ったLydian Scaleでは、この♯11th、増4度の音をメジャーコードと同時に鳴らすことができます。これは♯11thの音が3度と全音関係になり、相対的なナチュラルテンションの音になり、許容されるからと考えています。
そして、この場合♯11thと完全5度の間は短2度音程となるのですが、これは許容されます。メジャーコードにとって♯11はナチュラルテンションであり、そのために完全5度と両立できるのだと考えています。

この様な理屈で、クラシックな演奏では不協和音とされる短2度音程ですが、ジャズのハーモニーの中では多用されると考えています。

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