
【台湾建築雑観】アメリカ式オフィスと,日本式オフィス
台湾では、いくつかの事務所建築で、日本ではあまり見ない形式の平面を見ることがあります。そのことについて考えた見解を書きます。
日本のオフィス平面
日本では、一般的に大規模オフィスは、大部屋として使用することを前提に計画します。エレベーターコアを中央に、四周にオフィスを配置し、外周部に配置されたオフィスが適切に分割して貸し出せる様、2室から8室位までに適切に分割できる様計画します。
中規模以下のオフィスでは、様々なバリエーションがあり、色々な解決方法が示されていますが、大規模なものでは、コスト合理性と貸し出す際のフレキシビリティーを考慮し、大体においてこの様な形式のオフィスになっています。

台湾でみるアトリウムのあるオフィス
この様な大部屋形式のオフィスが、僕のオフィス計画平面のデフォルトとしてあったので、台湾で全く異なる計画のオフィスを見た時には、とても違和感を感じました。
それは、中央に大きな吹き抜けのあるオフィスです。下の写真のように中央が大きな吹き抜け空間となっており、四方に廊下が巡らされ、事務室はその外側に配置されています。このような平面計画のオフィスは、日本では新宿のNSビルで見たことはありますが、他には寡聞にて知りません。
オフィスをこのように配置すると、部屋の奥行きをあまり深くすることはできません。ですので、日本の会社で好まれる大部屋形式の事務室を作ることができないのです。
しかし、欧米のオフィスの計画は、逆に大部屋による事務室の作り方を好みません。管理職一人一人に小部屋を設け、チーム毎に小さな事務室を設けるのが一般的です。そうすると奥行きのある面積の大きな部屋はかえって使いにくくなります。奥行きは浅い方が良い。
そのようなオフィス空間の違いがあるので、台湾でよく見られるこの様な大きな吹き抜けのある事務所は、アメリカ人が、ないしはアメリカ式のオフィスを是とした台湾人が建設したものだろうと推測しています。

日本ではNSビル以外にこの様な形式のオフィスを見かけないのは、事務所空間の使い方と共に、吹抜け空間自体のコストが関係しているのだろうと考えています。
この様な空間を作ると、この吹抜け部分の内装に余計なお金がかかるし、防火区画の関係でシャッターや防火扉なども計画しないといけません。コストパフォーマンスとしてはあまり良くありません。
ですので、台湾でも最近の建築計画にはこの様な平面はあまり見ませんね。あたらしく見るオフィスはだいたい日本と同じく大部屋形式のものが多いように思います。