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【台湾のジャズミュージシャン】ベーシスト(その一)

今回は、台湾のジャズミュージシャンの紹介、ベーシスト編です

謝宗翰:Han

2019年9月、林華勁のカルテットをMarsalis Home Taipeiに聴きに行った時に、ベースを担当していたのが謝宗翰でした。その時、彼はベルギーへの留学から帰ってきたばかりでした。その後、彼はいきなり台北のジャズシーンで、沢山の演奏活動を始めました。きっと留学前から台北でジャズの演奏活動をしていたのでしょう。
 ギター:林華勁
 ドラム:馬士函
 ピアノ:Julian Moreen

ベルギーから来たドラマーPierre Hurtyのライブ、簡詩敏とのトリオやデュオ、ドイツのギタリストSebastian Nolleとのライブなど。ミュージシャンの国内外を問わず、沢山のコラボレーションがありました。

カフェLe Zinc簡詩敏とのデュオで演奏していた時には、自分のウッドベースを持ってきていて、それをもう目の前で弾いていたので、直接体に響く低音に迫力がありました。その時、彼は自分の楽器のことを説明してくれました。この楽器はフランスのコントラバス奏者に勧められて、スペインまで視察に行って購入するに至った名器なのだそうです。140年のビンテージ物らしい。このウッドベースの低音と簡詩敏のヴォーカルによるデュオは、とても心地よいものでした。
 ヴォーカル:簡詩敏

台湾にはベルギーに留学したジャズミュージシャンがたくさんおり、彼はその仲間との演奏を沢山やっています。よく組んでいるのは、曾增譯謝明諺ら。ニューヨーク組の鄭皓文蘇郁涵などとも一緒に演奏しています。

ウッドベースに投資しているから、そちらばかりなのかと思っていたら、エレキベースも積極的に使っています。シンセサイザーなどの電子楽器の場合、それに合わせたエレキベースもキレの良いリズムでこなします。

ピアノの曾增譯が彼のことを評してこう言っていました。彼ら若い世代がヨーロッパから最新の新しいジャズを持ってきてくれる。台湾のジャズ界に新しい風を吹き込んでくれると。

沢山のジャズの方向性を積極的に試している。彼の音楽活動を、そんな風に感じています。

黃偉俊カルテットでの演奏。
坂本健志クインテットでの演奏。

Jamsession on Sappho

謝宗翰のFBホームページ

王群婷:Refa Wang

2019年12月に、日本の友人を連れてSapphoのジャムセッションに参加しました。友人は歌を歌って、僕はその後ピアノで参加しました。曲は枯葉をリクエストして、その後メンバーの選定を始めたので、指慣らしにピアソラのOblivionを弾き始めました。すると、何も言わないのにベースがついてきた。そして、デュオで一曲弾き切ってしまいました。この時のベーシストが王群婷でした。
とても嬉しくなって、演奏が終わったら話しかけました。この曲、良くご存知ですねと聞いたら、学校で演奏したことがありますとの返事。彼女はロンドンに留学してジャズを学んでいたそうです。

その後しばらくして、羅妍婷の新作アルバム発表会を聴きに行ったら、彼女も参加していました。顔を見かけてお久しぶりと挨拶しました。
 ヴォーカル:羅妍婷
 ギター:林華勁
 バイオリン:黃偉俊
 バイオリン:晴恩
 ビオラ:葉棣綺
 チェロ:葉俊麟

それ以降、彼女の演奏は怒涛の様に情報が入ってくる様になりました。何しろ多い時には月に20本ほども演奏があります。良くもこれほどいろいろな組み合わせで、異なった曲を演奏できるものだと感心しています。

彼女の演奏はたくさんの組み合わせで聴いています。謝明諺のいくつかのプロジェクト、ビブラフォンのDebby Wangとも複数のプロジェクトがありました。ピアノの曾增譯やギターの劉雲平とのデュオ。小さなフォーマットのジャズが好きなので、この様な組み合わせも楽しく聞いています。

彼女のベースは、基礎がしっかりとしたニュートラルな演奏という感じがします。多くのジャズミュージシャンが、音楽を子供の時から学んでいるわけではなく、成人してから始めています。それに対して、彼女は小さなときから音楽の教育を受けているのだそうです。だから楽譜を読み込む基礎がしっかりしている。そんなことを"島嶼之火"のインタビューで言っていました。

それに加えて、共演者のリクエストに柔軟に応えるからなのでしょう。それで共演のオファーがひっきりなしにくるのではないでしょうか。

2021年1月にはRhythm Alleyで彼女がリーダーとなったライブも開かれました。台湾ジャズシーンの代表的なベーシストになっていますね。

Nomad Factoryでの演奏。
Sappho Jamsessionでの演奏。
Debby Wang、Starとのトリオの演奏。

Brass Me Up on Nomads Factory

 王群婷のFBホームページ

徐崇育:Vincent Hsu

徐崇育はラテンアメリカ、特にキューバのジャズを台湾で演奏するという活動を続けています。"Soy La Ley"というラテンジャズバンドを、リーダーとして率いています。

残念ながら、ぼくはまだこのラテンジャズバンドでの演奏は聴いたことはないのですが、黃瑞豐許郁瑛とのトリオ演奏はライブに行ったことがあります。台湾ジャズドラムの大御所黃瑞豐を、若手2人のピアノとベースの第一人者が支えるといったフォーマットですね。テーマは台湾の古い音楽をジャズにアレンジするというものでした。これは台湾のジャズ界屈指のピアノトリオではないかと考えています。

ビブラフォンの蘇郁函のライブでも、徐崇育のベースを聴いたことがあります。ピアノ曾增譯とドラム黃瑞豐と3人のリズムセクションで、奔放な蘇郁函の演奏を支えていました。ここでも、非常に安定感のある演奏をしていました。単音を弾くだけでものすごくドライブ感を感じられるのは、単にリズムが正確なだけではなく、音楽をグループさせる力があるのでしょう。パワフルでノリの良い音楽の基礎を支えているという印象でした。

また、彼はラジオでジャズを紹介する番組を持っています。毎週火曜日の8時から1時間放送されている"Jazz Supreme 爵士無所不在"という番組です。番組リストを見ると、2018年の初めから始めていますね。台湾でのジャズの普及にも力を入れています。
ここでは、徐崇育は自分が海外で耳に入れて気に入ったアルバムを台湾のリスナーに積極的に紹介しています。

徐崇育のJazz Supreme 爵士無所不在

http://bravo913.com.tw/index.php?route=choice/program_detail&choice_program_id=155

黃瑞豐トリオでの演奏

Mazu Pilgrimage by Vincent Hsu & Soy La Ley Afro-Cuban Jazz Band

徐崇育のFBホームページ

許巽舜:Hsun Shun Hsu

Bluenoteで火曜日にプラスワントリオというライブが定期的に行われていました。これは、ベースの許巽舜とベースの林宏俊が、毎回異なったゲストを招いてトリオで演奏するというものです。ここでサックスの董舜文とのトリオで初めて許巽舜の演奏を聴きました。

この時、董舜文の演奏が非常に印象的でしたが、リズムセクションの2人も素晴らしく、3人の息がピッタリ合っていた。それでその後も何回もこのプラスワントリオを聴きに行っています。ピアノの蘇逸哲,サックスの李哲安などの演奏を聴きました。ここでは、常に新しいフロント奏者に出会えるので、新しいミュージシャンシャンと知り合うきっかけにもなっています。

その他Jazz Spot Swingでも許巽舜の演奏をよく聴いています。ピアノの唐寧とのトリオ、これは333トリオと名付けられて毎月のように演奏されています。

許巽舜のベースは、一音一音がハッキリと聞こえてくる、非常にタイトで力強い演奏です。リズムが演奏全体をドライブさせる様な、そんな印象があります。沢山のジャズミュージシャンの信頼を得ているベーシストでしょう。

唐寧の333トリオでの演奏
Skyline Jazz Bandでの演奏

董舜文カルテットでの演奏

劉育嘉:Yu Jia Liu

劉育嘉のベースは、最初はJulian Moreenのカルテットで映像で聞きました。このカルテットは固定したメンバーで長年演奏活動を続けており、台湾国内のジャズフェスティバルでは、何度も演奏をしているそうです。
その後、直接会うことがあり話を聞いたところ、彼らはアジア全域でツアーを行っていて、将来日本でも演奏する機会を持ちたいということでした。実際に日本に行く予定も立てていて、日本でのミュージシャンについて聞かれたこともあります。

このJulian Moreenが、2021年夏にコロナのためにドイツに戻ってしまいました。そのニュースが流れた時に、彼はどうするのかなと思ったのですが、全くの杞憂でした。今の彼は引く手数多の人気ベーシストです。僕の聞きに行く先のライブで、何度も彼の演奏に出会しています。

Michael Wang Quartet
トロンボーンのMichael Wangのカルテットです。ギター葉賀璞、ドラム黃子瑜を加えたメンバーは台湾でも屈指のメーバーです。この日はワクチンを打った後をおして参加したそうで、途中で腕が動かなくなっていました。一曲休んですぐ復帰していました。彼はタフでしたね。
 トロンボーン:Michael Wang
 ギター:葉賀璞
 ドラム:黃子瑜

邱立婷セクステット
ヨーロッパの留学から帰ってきた邱立婷の新作アルバムのためのライブでした。コロナ禍の中なかなか実現できなかったプロジェクトだったそうです。邱立婷のヨーロッパナイズされたジャズもきっちりとサポートしていました。
 ピアノ:邱立婷
 ドラム:黃子瑜
 サックス:楊曉恩、廖莊廷
 トランペット:鄭立偉

羅妍婷トリオ
羅妍婷がピアノの許郁瑛とのコラボレーションに手応えを得て、ベースを加えてのプロジェクトを始めました。そして白羽の矢が当たったのが劉育嘉です。女性二人の華やかな演奏に、彼がドッシリとベースを支えていたという印象です。ヴォーカルとの掛け合いで始めたSocial Codeが圧巻でした。
 ヴォーカル:羅妍婷
 ピアノ:許郁瑛

台湾の沢山のミュージシャンがアメリカかヨーロッパに留学して学んでいるのに対し、劉育嘉は台湾でのみ音楽を学んでいます。それにも関わらず、台湾の多くのミュージシャンに認められている実力の持ち主です。

自らのリーダートリオでの演奏。
林華勁カルテットでの演奏。
Michel Wang Quintetでの演奏。

Jose Garcíaとのデュオ演奏

劉育嘉のFBホームページ

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