九份が人気のわけ
台北に来る日本人が好んで行く観光地があります。九份。僕も日本の家族が子供連れで遊びに来る時に、この九份を観光ルートに入れて連れて行きました。十分のランタン上げ、十分瀑布と合わせてちょうど良い観光コースでした。
しかし、長い間台北に住んでいると、皆が皆九份に行きたがるので、少し不思議に思っています。例えば三峡老街であるとか、淡水と八里を一緒に回るとか、陽明山にハイキングに行くとか、台北の郊外にはたくさんの手頃な観光地があります。九份のほんの少し先には金瓜石という九份と同じように歴史のある面白い場所もあります。
しかし、日本人の観光客がこれらの場所に行くというのはあまり聞きません。あったとしても、リピーターで、ある程度台北に慣れた人が、個人で行くという例ばかりです。これは、何故なのか不思議に思っていることなので、その理由を考えてみました。
社員旅行で行った九份
今から10年ほど前に、日本で勤めていた建築設計事務所が社員旅行で、台湾ツアーをしたことがあります。その時、九份観光もコースの中に含まれていました。
全体で三泊四日のツアーの中で、九份観光は一日目に予定が組まれていました。午前中の便で成田空港を出ると、大体昼過ぎに桃園空港に到着します。入国手続きをして、空港を離れると2時ごろになります。そこから我々はバスに乗って直接九份を目指しました。ホテルには寄らず、真っ直ぐに九份に向かったので、到着したのは2時間後の4時頃、坂の街を自由観光にして、団体で食事をするのが6時過ぎ。このようなスケジュールで動くと、九份の夜景も楽しめ、食事をしたあとゆっくりバスで台北に戻ることができ、なるほどこれは色々な面でリーズナブルなコースだと思いました。
下に、このスケジューリングについて思いついた理由をいくつか書いてみます。
午前便で昼過ぎに台湾に着いたあと、移動・食事を組み合わせて適当な時間配分になり、九份の夜景も楽しむことができる。
九份の街にはレストランも大型バスの駐車場も用意してあり、団体ツアーに対応した設備が整っている。
単に夜景が綺麗なだけでなく、宮崎駿のアニメのモデルになった街並みや風景であるという都市伝説が流布していて、好奇心をかき立てられる。
実際に、非常に高低差のある場所から海の方を眺めるので、とても雄大な景色を楽しめる。夜景も綺麗。
恐らく、日本の旅行会社が企画した沢山のローカルツアーの中で、この九份のものがことさらに評判がよく、なおかつ旅行会社のツアースケジュールにも上手く乗るので、相互作用でこのコースが定番のルートになっている。そのようなことではないかと感じました。
台北郊外の観光コース
僕は昔から個人旅行が好きなので、何か特別な理由がある場合以外、ツアーに参加して旅行するということをしません。ですので、上記のような理由で、沢山の人が九份に押しかける様子を見ると、台北からアクセスしやすく、行って楽しい観光スポットが他にもたくさんあるのにと思ってしまいます。
そんな観光コースを、いくつか簡単に紹介しておきます。
【陽明山ハイキング】
台北の街は、四周を山に囲まれており、どの方向に行っても沢山のハイキングルートがあります。そんな中でも、北側の陽明山は標高1,120mの七星山を有しており、とても高い位置から台北市の全貌を見下ろせる、ダイナミックな景観スポットです。
また、七星山の麓にある擎天崗は、なだらかな高原になっていて、バスで直接アクセスできます。ここから風櫃翠に至る尾根沿いの路線は、標高差も少なくとても歩きやすいハイキングルートです。
【三峡・鶯歌】
これは、大漢渓の中流にある2つの観光スポットです。三峡は過去舟運の街として栄えたために、立派な祖師廟があったり、昔の商店街を修復した老街があったりします。毎日のように台湾の観光客で賑わっています。
因みに、僕は三峡から登る鳶山にもよく出かけます。2時間のハイキングの後、三峡で食事というのが定番のコースです。
鶯歌老街では陶器を売るお店がたくさんが連なっており、少し離れたところには陶器博物館もあります。最近は新北市美術館も整備され、MRTの駅も建設中。今とてもホットなエリアになっています。
【淡水・八里】
MRTの淡水線の終着駅になる淡水は、週末は沢山の台湾の観光客で賑わう観光スポットです。ここには、河岸に面した遊歩道と、一本内側に入った老街があり、ちょうど行って帰って両方を楽しめます。
海に出る淡水の最下流には、漁人碼頭"Fisherman’s Wharf"があり、ここから見る夜景は淡水の景観スポットとしてとても有名です。
また、漁人碼頭には直接MRTでアクセスできるようになりました。紅線MRTの紅樹林駅で乗り換えると軽軌道のMRTに乗って漁人碼頭に行けます。
また、淡水の対岸の八里にはフェリーで簡単に渡ることができます。僕はこのフェリーでのちょっとした船旅がとても好きです。行った先の八里にも観光屋台街がありますし、少し離れたところには十三行博物館という、原住民の歴史を紹介した施設もあります。
因みに、僕はその先の觀音山から八里に降りてくるルートも好きで、よく友達を連れて行っています。
【板橋・林家花園】
板橋は、新北市の行政センターとしてとても発展が進んでいる街です。何しろ、現在新北市は人口が400万人を超え、台北、高雄、台中、台南を抑えて最も多い自治体です。それだけではなく、土地が広いので、たくさんのMRT路線を建設中。従ってこの人口はさらに増えていくでしょう。
そのような新北市の中心地である板橋は、全ての新幹線が停まるコアステーションの一つとなっています。ですので、板橋駅を出ると高層ビルが林立しています。
板橋の隣の府中駅には、清の時代の名家、林家の建てた豪壮な邸宅と中国式庭園が保存されており、見学できるようになっています。
【基隆】
台湾鉄道に乗ると30分ほどで着く基隆の街は、今観光にとても力を入れて、整備を進めています。というのは、基隆の港の機能を観光に特化するよう、国の上位政策で決定がなされ、産業港の機能は八里の先の台北港に移されたからです。そのため、基隆に来る船は、観光客を乗せたフェリーばかりになっており、そのような政策を受けて基隆の街は、とても広い範囲で様々な整備を行っています。
台湾鉄道基隆駅の改修、駅前の埠頭周りの整備、基隆塔の建設、日本時代の木造宿舎の改築などです。少し離れたところにある、海洋博物館や和平島地質公園なども、面白い観光スポットです。
主なところだけでさえ、この様な沢山の観光地を思いつくことができます。九份に拘らず、この様な場所でも新しい台湾の息吹を感じることができると思います。