【台湾のジャズライブ】蘇郁涵カルテット
個人的な印象ですが、台湾にはたくさんのジャズビブラフォン奏者がいます。僕が面識のある奏者だけで王思雅Debby Wang、周嘉惠、黃奕翔 Jack Huang、莊彥宇、謝佳青がいます。アメリカにも魯千千がいて活躍しています。蘇郁涵はこれらビブラフォン奏者のグループの中で最も早くアメリカ留学し、アメリカ東海岸で演奏者として活躍した経歴を持つビブラフォン奏者です。
蘇郁涵の演奏は2020年2月に、雅痞書店でのカルテットの演奏で聞きました。ドラム黃瑞豐、ピアノ曾增譯、ベース徐崇育という台湾のトップジャズミュージシャンを従えて、彼女のオリジナルアルバムを発表するライブでした。
蘇郁涵の音楽はアメリカでの研鑽を積んだからでしょう、非常にモダンな響きとリズムをもった新しいジャズです。ビブラートを聞かせた長い音、短くビートを聞かせる演奏と、どちら音色もビブラフォンの特徴を十分に生かして作曲されています。それに加えてリズムの取り方が非常に変化に富んでいます。
この時は、ライブ会場にアメリカからTony Miceliというビブラフォン奏者も来ていて演奏をしていました。国際的に活躍している蘇郁涵なので、そんなことも起こるのですね。
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ここで紹介するカルテットの演奏は2020年11月6日に河岸留言で行われたカルテットのものです。共演者には、ギター:林華勁、ベース:JulianWittich、ドラム:黃子瑜を招いています。ここで蘇郁涵は、複雑なリズムを持つ自分の曲を、それを共に楽しんで演奏してくれるミュージシャンを選んだのだと思います。いずれもリズム感に優れた奏者で、変拍子の曲を好んで作曲したり演奏したりしています。
ミュージシャンの友達から聞いた話では、蘇郁涵の複雑なリズムへの偏愛は共演するミュージシャンにとっては、ほとんどきつい筋トレみたいなものなのだそうです。この共演者は、この筋トレを一緒に楽しめるパートナーなのだと思います。
【High-tech Pros and Cons】
MCでiPhoneへのオマージュだと言っていましたね。ハイテク機器のイメージを複雑なリズムで表現しています。
【Le Mythe de Sisyphe シジフォスの神話】
これは、ギタリスト林華勁のオリジナル曲です。変拍子の複雑なリズムを好むところが蘇郁涵の志向とよく似ているのでしょう。
【Flying Alone】
【Salt Peanuts】
河岸留言は台湾大学の近く、公館が最寄り駅になるライブハウスです。オーナーの林正如(Geddy Lin)がギタリストで、自らもジャムセッションのホストをしたりしています。演奏する曲目はロックやフォークミュージックの方が多いようですね。ジャムセッションもジャズとは限らず、若手のバンドがチームでステージに上がることも多いです。
このエリアには、女巫店、Bluenote、Oldie Goodie、沐月書店などたくさんのライブハウスがあります。これは台湾大学、師範大学という台湾の最高学府がここにあることと関係があるのでしょう。台湾では大学で音楽をやることは、それほど人気がないそうです。しかし、この二つの大学ではジャズをやるバンドもあり、実際にジャズミュージシャンも輩出しています。そのため、ここにはたくさんのライブハウスがあります。公館と台電大樓駅付近は、そんな音楽の伝統のある学生街です。
蘇郁涵は、コロナの起こったこの2年ほど、ずっと台湾で活動していました。外国と行き来することが困難なこの時期、台湾をベースに音楽活動をすることを選んだでしょう。しかし、2021年の秋に彼女はニューヨークに戻りました。生活の新たな伴侶を得て、二人でアメリカでのキャリアを積んでいくことを決めたようです。きっと二人で台湾のジャズを世界に広めてくれることでしょう。
台湾ジャズ指南
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