マンションの修繕積立金ガイドラインの追補版
修繕積立金ガイドラインについて
「マンションの修繕積立金に関するガイドライン 令和5年4月追補版」(以後、当ガイドラインという。)は、国土交通省が全国のマンションの長期修繕計画を収集して集計し、修繕に必要な金額を公開したもので、修繕積立金額の目安を知ることができます。
当ガイドラインは平成23年4月に初めて出され、5年程度ごとに見直しを検討することにしていましたので、令和3年9月に改訂されました。その改訂から2年しか経っていませんが、修繕費の高騰に対応するための1つとして「マンション長寿命化促進税制」について追補されました。
以下では追補分については触れず、ガイドラインに準拠して修繕積立金額の目安を算出し、現在の修繕積立金額をレビューするための資料にします。
ガイドラインの使いどころ
当ガイドラインには「修繕積立金の額は、将来見込まれる修繕工事の内容、おおよその時期、概算の費用等を盛り込んだ「長期修繕計画」に基づいて設定されます。」とあります。長期修繕計画に計上した年度(期)ごと修繕項目ごとの工事費用を計画期間全体について合計した全修繕費用を全戸の専有面積で割った金額が、適切な範囲内に入っているかを確認するために当ガイドラインを利用できます。
なお、区分所有者に請求する修繕積立金の額は、長期修繕計画を根拠にしていますから、長期修繕計画なしで修繕積立金を徴収する管理組合は、基本的な管理をしていませんので要注意です。長期修繕計画書は、新築時の建築確認申請書に含まれていますので、長期修繕計画が配布されていない場合には、各区分所有者が管理組合に長期修繕計画を請求して内容を確認し、総会議案としてその計画を承認するようにしてください。
計画期間全体における修繕積立金額
当ガイドラインによれば修繕積立金額の目安は、下表のパラメータで計算できます。徴収されている修繕積立金額が、下表の「事例の3分の2が包含される幅」の範囲に入っていれば、修繕金額としては妥当ではないでしょうか。修繕内容は、大規模修繕委員会等を立ち上げて、適切かを調べる必要があります。なお、駐車場使用料等を修繕積立金に繰り入れている管理組合では、徴収されている修繕積立金額が少なくなっていますので、注意してください。
例
地上階数:10階
全戸数:40戸(4戸 x 10階)
建築延べ床面積:2,800㎡(70㎡ x 4戸 x 10階)
修繕積立金額の目安:23,450円/月・戸(16,450~30,100円/月・戸)
12年間の修繕積立金額:135,072,000円(94,752,000~173,376,000円)
(1戸当たり:3,376,800円/戸(2,368,800~4,334,400円/戸))
懸念事項と対応
大規模修繕の費用は、10年前には100~120万円/戸程度と言われていました。東京オリンピックが近づくにつれて2割程度上昇しました。今は3倍程度高騰しているようです。一時的な高騰であればよいのですが、令和3年時点でこの金額であり、資源高に加えて円安も進んでいますので、少なくとも10年程度は高止まりすると考えた方が安全そうですね。
対応策としては、管理費収入を修繕積立金会計へより多く移管するために経費を切り詰める。その上で、修繕時期、修繕内容、修繕項目の見直しも避けられないと思います。
専門家のサポートがなく長期修繕計画も更新されていない小規模な自主管理マンションでは、三重苦で対応が難しくなると思われます。
参考1:平成23年4月版
上と同じ例で、「マンションの修繕積立金に関するガイドライン 平成23年4月」で計算してみました。
修繕積立金額:15,260円/月・戸(11,550~17,500円/月・戸)
12年間の修繕積立金額:87,897,600円(66,528,000~100,800,000円)
(1戸当たり:2,199,690円/戸(1,663,200~2,520,000円/戸))
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