エレベーター作法
エレベーターではしゃべらない。
そっと耳をすますのだ。
各階の声が、聞こえては去っていくのに耳をすますのだ。
「自分が移動してる」という実感を持つのだ。
忘れてはいけない。
エレベーターのワイヤに自分の命を預けていることを。
視線はエレベーターの階数表示に固定。
耳と視線を連動させて、ドアの向こうに思いを巡らせるのだ。
「5Fのドアの向こうは楽しげな空気」などと心にメモれ。
心せよ。
通過階のドアの外で、奇妙な老人がカマキリの卵を食べながら君たちの会話に耳をすましているかも知れない。
エレベーターの中では油断は禁物なのだ。
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