秘剣、おうむ返し

爪の先で。
俺は「そこ」を軽く、くじってみる。
「そんなんじゃ物足りないのぉっ! もっと強く! 奥を掻いてぇぇ!」
ん?何で掻いて欲しいのか、言ってごらん?
「長いの! その右手で持ってる『長いの』で奥まで掻き回してぇっ!」
どうも。
耳掻きをしながら、性的な興奮を覚えるキタナカです。
なんでも興奮、する。

「んもう!ヒロユってばお盆休みだってのに、ゲームばっか!!」
んあ?
「海に行ったり、自転車に乗ったりしないわけ!?」
無理!(キッパリ)
「どうして~」
気温が体温を超えてるじゃんか。
「でもでも、『海に行こう』って約束してたじゃん!」
それは「気温が体温を超えなかった場合」だ、ワイマール憲法にもそう書いてあった。
「ホントに?」
ははは、俺がウソをついたことがあるか?(モネモネと身をくねらせつつ、虚ろな笑顔で)

「じゃあ、気温が体温より低くなったら遊びに連れてってくれるの?」
いや。
「じゃあ、いつになったら連れてってくれるの?」
「リトバス」のエンディングを全部見たら…。
「…」
ん?
「……あのさ」
なんだいプリティガール?
「それって、気温関係なくない?」
まぁ、そうも言う。
「じゃ。今年の夏休み、ず~っと部屋で過ごしてたのは、ゲームがやりたかっただけ?」
こくこく。(ピュア過ぎる空色の瞳を、水面に反射する陽光が如くキラキラと輝かせながら)

「こ…」
『こ』?
「こんのたくらんげがぁっ!」
怒った? しかも「たくらんげ」て!
「ヒロユは、私と過ごす時間とゲームとどっちが大切なのっ?」
…むむむ。(キタナカ五段、長考の構え)
「うわぁぁん!ヒロユなんかギャルゲーと結婚すればいいんだっ!」
いや、それはちょっと…。しかし…ふふ、それも悪くない…。
「ちょ! 真面目に考えてる?」
ふむ。タマ姉が第一候補だが、元々メイド好きを気取ってる俺としては雪さんを外すわけには行かない。ときメモの片桐さんだって当然、俺を好きだし東鳩のマルチや委員長だってそうだ! いや、待てよ。そもそも俺を好きなギャルズはゲームに限定してしまったら漫画やアニメの女の子たちが可哀想過ぎる。十兵衛ちゃんも俺にホの字だし、うさだひかるだってみずほ先生だって悲しむに違いないよ。メディアは限定できないが、鉈を持ってイっちゃった目をしたレナにときめいた俺も否定できない。全部が全部、絶妙に古い辺りがナニではあるが…。
「ブツブツ言い始めた? しかも超高速で!」
ダメだっ! 俺はメディアのキャラと結婚することはできないよっ!
「え?」
失って初めて、大切なモノを思い出すこともあゆのら…。
「え?それって!」(期待に満ちた眼差しで)
一人を選んでしまったら、他のギャルズが悲しむじゃないか!!
「はぁぁぁぁぁぁ…」(口からエクトプラズムが出るような溜息)
なにさ? その「俺に期待した私がバカだったよ」的なリアクションは!
「はあぁぁ。私、どうしてヒロユなんか好きんなっちゃったんだろ?」

……ってな勢いでゲームしてた。

――エヘンプイ☆(ことさら可愛らしく振る舞います)

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喜多仲ひろゆ
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