知ってる仕事について【ODP印刷営業】
私が金を自在に、そして適当に使っていたのは印刷会社の営業マン時代。
金がかかる趣味がなかった(仕事に忙殺されていた)から、金が貯まった。
温泉に行きたくなったらチケットを4人分買って、飲み会で「行かない?」って言って温泉旅行をおごった。
「あれ? このアニメ気になってたけど、DVDが全巻セットある」と気付いたら即買いした。
それでも地味にお金は貯まるし、ボーナスの使い道が分からなかったので手を付けなかった。
ただし、印刷営業マン時代は地獄でもあった。
営業マンであるにもかかわらずデジタル印刷機のオペレーションもできたので、泊まり込みありの40連勤とかもした。
ほぼ24時間印刷機を回し続けたら、休日にシャフトが折れるような音がして印刷機が先に音を上げた。
その日は流石に、昼間のうちに家に帰った。
随分と久しぶりに、明るいうちに帰宅した。
吐血しても、喀血しても、血便が出ても会社を休まなかった。
大きな仕事が一段落つくたびに入院した。
どうですかね、幸せそうですかね?
架空の数字で、印刷会社経営の理屈を書いてみよう。
・全社員は100人で、営業マンは20人の会社があったとする
・給料を稼ぐためには、営業マンの肩に「同じ収入の社員が4人乗っている」と考えることが必要
・営業マンは、自分の給料5人分の粗利を稼がなければならない
・月給が30万円だと仮定すると、150万円の粗利を上げなければならない
・印刷業界の標準粗利は20%程度である
・計算すると、毎月750万円以上の売上をあげないといけない
※本来ならば、印刷機の減価償却や設備投資まで考えないといけない。だが複雑になるので、ここではあえて目をつぶる
新規開拓営業は、ルート営業の10倍のコストがかかると言われている。
正しい数値は忘れたが、下記のような法則だ。
1.飛び込み営業をすると、5件に1件は担当者と名刺交換ができる
2.そのうちの、5件に1件が仕事をくれる
3.そのうちの、5件に1件がリピーターになる
4.そのうちの、5件に1件はカスタマー(継続的に発注する顧客)になる
5.そのうちの、5件に1件はファン(率先して仕事を発注する顧客)になる
というものだ。
新規開拓の一人部署に回されて、延々セミナーを受けさせられたからイヤというほど聞かされた。
625件の会社を回れば「ファン」が1件できる、ということだ。
理屈で考えれば結構、簡単そうだ。
私のような「お豆腐メンタル」では無理だっただけだ。
この理屈で言えば、「1件の仕事を受注するためには、24人のネガティブな対応を受ける」ということになるのだ。
必死だった。
会社を訪問する前に、その会社が社会に提供するサービスを調べる。
自分が担当するデジタル印刷を、その会社で活かす方法を考える。
パワーポイントで提案書を作り、アポイントに臨む。
目も通さず提案書を床に投げられ、踏みにじられた経験もある。漫画か!
それでも頑張った。
仕事をくれる、優しい方にも出会えた。
しかし、デジタル印刷は単価が安すぎた。
ルートで成績を伸ばしていたころには、1本で数百万円の仕事があった。
大会社だと追刷がかかるので、伝票一式を書くだけで月間ノルマの半分まで達成する仕事もある。
しかし、デジタル印刷は1本で数万円だ。
追刷もかからない。
ルート営業時代は月に20本でノルマを達成していたが、新規開拓にまわってからは70本やってもノルマの半分以下だ。
※一回だけ。月に100本以上の仕事を受けたが、二度としたくない経験だ
念のため申し上げておく。
仕事1本にかかる手間は、100万円でも5万円でも変わらない。
問題が起きた時のリスクが少ないだけ。
手間は同じ、と考えてもらってもいいだろう。
オペレータ君が潰れてしまうのでは? と思って、泊まり込みや土日の出勤は自分が担当した。
製本機や断裁機も使える営業マンは少ないだろう。
これは、自慢してもいいだろう。
通常と見積形式が違うので、全営業マンから私に見積依頼が来た。
土日に印刷機をオペレートしながら、見積依頼をこなしていった。
それでも、結果は出せなかった。
会社全体の売上は伸びず、新規開拓の私は会社が望む結果を出すことはできなかった。
だから退社した。
経営者側に立ってみれば、俺を雇っているメリットがないのは分かっていたことだ。
そして。
次に就職したのは「R18DVD業界の販売促進プランナー」だった。
新規開拓営業マンだったころに「連続飲酒状態」に陥ったので、「内勤」で印刷スキルが活かせそうな職業を選んだ。
さて、どうなりますことやら?
――うん、結果は分かってる。
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