まったりホリデー

おっす! オラ、パンダ店長。おめえ強えぇな! オラ、もっと弱い奴と戦いてぇ!
「何を言ってるんですか! 店長。みんな困ってますよ?」
誰だ! お前?
「チケ子ですよう。忘れるなんてヒドイです! 店長。くすん……」
大丈夫だ、ノドカ! お前を忘れる訳ないだろっ?
「だから、チケ子ですってば! その『ノドカ』って誰なんですか?」
いや。読者を混乱させるためだけに言っただけだから、気にしないでいい。
「なんなんですか? もう!」

今日は、「脳」を休めようと思ってな。
「お店にも来てないじゃないですか! 毎日が日曜日じゃないですかっ!」
ちっちっち。(怪傑ズバット)
「?」
昨日はエンドレスでエロ動画を視聴したから疲れてるのっ! 今日は休み!
「誇らしげに言わないでくださいっ! バイトの私が、お店を一人で切り盛りしてたんですからねっ」
ありゃ、そりゃスマンかった。
「あれ? 今日は素直じゃないですか。なら許してあげます。むっふー」
いや。無い胸を張っても、読者は喜ばんぞ?
「んもう! 絶対に、絶対に許しませんからねっ! オシオキとして、捕まえてきた、このジャノメチョウを……って、怖っ!」
わはは。チケ子よ、まだお前は気付いていないのか?
「何をですか~? あ、窓開けてください! この『けいおん!』のクリアファイルで追い出しますから~」
チケ子と俺は、一心同体少女隊。苦手なものも同じ……ってか、俺の宝物をジャノメチョウを追い払うために使うなよっ!

「へ? このクリアファイルがですか?」
そうだよ! それを手に入れる為に「DIME」なんて普段は読まないシャレオツな雑誌を買ったんだからな!
「じー」
いや。ジト目で俺を見るのは分かるけど、声に出すのはどうかと思うぞ?
「『ジト目』が分からない人はイメージ検索してね☆」
カメラ目線でメタ発言! 育ったな、チケ子……。
「えへんぷい☆ 私だって、お店に置いてあるPCで勉強しましたからね!」
おい! まさか「ブックマーク」を……。
「ええ。全部見ました。そして、全部消しときました」
オーノー! アーユークレイジー?
「陳腐な英語で罵倒しても駄目ですっ! 私は強くなったんですよっ!」

いや。単に、キャラがブレてるだけなんじゃ?
「違います! PCが私を自信あふれる存在にしてくれたんですっ!」
ほほう。自信の根拠はそれか――。で、PCで何をやってるんだ?
「インスタですっ! インスタ映えする写真をUPすると、好反応が――」
べっけやろぅぃ!
「痛っ! 何するんですか、店長?」

よりによって、インスタときたか! どうせ、食費を切り詰めて代官山で食べたスイーツとか上げてるんだろ?
「う゛っ……。何故、店長がそれを――」
俺は……。俺は、お前を、そんな娘に育てた覚えはないっ!
「育てられた覚えもありませんっ! インスタの何が悪いんですかっ!」
うるへー! チケ子は自分の肛門を「どアップ」で自撮りして、色調反転させて「新種のイソギンチャクの口」って写真をインスタに上げろ!
「なんで……。私がそこまで言われなきゃイケナイんですかぁ。グスン……」

まあ、うん。言い過ぎた。スマン……。
「うう~、店長はヒド過ぎますよう。普通の女の子だったら、二回はショック死するレベルですよ? ズビーッ!」
女の子って、そんなに脆いの? 「カブトクラゲ(小学館の図鑑『水の生物』での説明文が、『触ると崩れる』の7文字だけだった)」レベル?
「そういう問題じゃありません! よりにもよって、お……おし――」
いや。スルーしたかったけど結構、鼻をかむ音が豪快だな。俺もスッキリしたわ。
「もう!」
いや、本っ当に申し訳ない。

「大体ですよ? レディに向かって、失礼だと思わないんですか?」
チケ子、レディ違う。「永遠の十七歳(←設定)」。
「え! そうなんですか? 道理で肌もツヤツヤ――」
いや。十七歳は「R18DVD店」でバイト出来ないから、設定を「十八歳」に変更。「確定」ボタンをポチッとな☆
「それじゃ胸も! って、あれ? 全然、育ってない……」
しようがない、自然の摂理。
「ええ~? 架空世界なんだから胸が大きくなっても、そして十七歳でもいいじゃないですかー?」
さりげなく、年齢設定変更もアピールか……。やるじゃな~い?

「じゃあ、十七歳の巨乳に設定――」
し直すことはできない。設定は、一ヶ月に一回しか弄れない。
「はぁぁぁぁ――」
まあメゲるな。しばらく会わない内に、打たれ強さが半端なく強くなってるな、チケ子は。ビックリした。
「そりゃあね。R18DVD店で、一人で働いてたらお客さんからのセクハラにも慣れますよ、ふっ――」
遠い目で溜め息混じりの軽い笑い! まさかチケ子、貞操を?
「ンな訳ありますかっ! R18DVDじゃないんだから!」
おふぅっ! いいの持ってんな姉ちゃん。俺と世界を目指さねぇか?
「目指しません!」

そんで、なんの用なんだ? 実際のところ。
「ちゃんと、お店にも来てください」
お嬢ちゃん。それは、ちょっと難しい相談だ――。
「なんで、いきなりシリアス絵柄になってるんですか! パンダなのに?」

俺は、しばらく旅に出る。
「ええ! お店は?」
チケ子、お前に任せる。これは金庫の鍵だ……。
「き……金庫に何が?」
俺のお気に入りのエロ本が入っている。付箋が付いている写真が俺のお気に入りだ……。
「店長の、男どアホウ甲子園~!」
痛っ! 鍵を投げつけるな……。って、物凄い足が速いなチケ子の奴。もう殆ど見えない――。

まあ、しようがないか。
これからは、「R18DVD」と「喫茶店」の二足の草鞋(わらじ)だ。
チケ子には悪いが、喫茶店の立ち上げの方が急務だからな。
しばらくは、我慢してもらうか。

――はー、既存キャラは楽だわ。スイスイ動く。結構、逞しくなっててビックリしたけどね☆

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喜多仲ひろゆ
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