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超VOCASTAR参加報告

8/24〜8/25 ソウル貿易展示コンベンションセンター(略称: SETEC/세텍)での即売会イベント「超VOCASTAR」のサークル参加報告です。

超VOCASTARについて

韓国では2020年からピアプロキャラクター(主に初音ミクを始めとする、クリプトン・フューチャーメディアの合成音声キャラクター)をテーマにした即売会「piapro stars」という即売会を行なっていたようです。

その後継イベントとして、総合同人イベントである「ILLUSTAR FES」内のボカロオンリーイベントとして2023年から「VOCASTAR」が始まっています。

今年は日本からの参加サークルも募り、ボカDJイベントの「VOCANARU」も併催されるなど、韓国のボーカロイドシーンを盛り上げるためのイベントとして「超VOCASTAR」が位置付けられたようです。日本からは36のサークルが参加しました。

規模としてはILLUSTAR FES全体で約400サークル、超VOCASTAR単体では70〜80サークルとなっています。

参加にあたり

Youはなぜ海外の即売会へ?(3ヶ月ぶり2回目)

VOCASTARは昨年の開催告知ツイート等で、存在を知っていました。台湾のVOCAWORLDへの参加を検討していた時期だったので、気にしていた感じです。その上で今年春の日本からのサークル参加募集を見て、応募に踏み切りました。

今年5月のVOCAWORLDの参加報告でも書きましたが、「ニコニコやボーマス以外の選択肢・可能性」を模索している最中です。絶対的な正解はあり得ないのが世の中です。そのため、一つ一つ可能性を確かめに海外も含めた各地の即売会に参加しています。

みるくかふぇ作品の認知に努める

サークル参加そのものの告知は、VOCASTAR主催団体の方で行なってくれています。

そこから先、「どういう作品を頒布するのか」「何を目当てにブースに来て欲しいのか」は、自分でアピールしないとなりません。

今回の参加にあたり、メインであるv_flowerの作品がないのも片手落ちなため、秋にリリースするつもりだったv_flower新譜を前倒しでVOCASTARでリリースすることにしました。昨年夏にリリースしたv_flowerアルバム「Wish and Endings」は、在庫がVOCASTARのタイミングで残っているかどうか怪しかったというのもありますし。

韓国の即売会に参加するという話は折に触れてツイートしていましたが、開催週に当たる8月中旬より本格化させています。

新譜「24時」を含めた頒布物の告知

2024/8/19に、v_flower歌唱の新譜「24時」のXFD動画をニコニコとYouTubeに投稿しました。韓国の新しいボカロファンはYouTubeが視聴の中心らしいですが、古くからのボカロファンはやはりニコニコ動画を見ているそうです。8/5よりニコニコ動画がサービス再開していたのが何よりです。

毎回v_flower系のアルバムのジャケットイラストを担当してくれている、絵師のEMUさんも告知に努めてくれました。v_flower好きの間では、韓国を含めたワールドワイドでファンのいる絵師さんです。

続く2024/8/20にお品書きの投稿。主催側のスタッフから「お品書きは'부스 인포'と書いたほうが伝わるよ」とアドバイスをいただいていたので、その通りにさせていただきました。こちらは開催日まで毎日リツイートを繰り返しています。

また2024/8/23に、頒布する3つのアルバムの140秒XFD動画をTwitter/Xに投稿。現在のSNSはリッチコンテンツでないと詳細が伝わららない・見てもらえないこともあり、音楽系クリエイターとしては作品の魅力を映像でダイレクトに訴える必要があるだろうとの判断です。

なお、旧譜としてはGUMIがメインボーカルだった時代の作品や紲星あかりのアルバムも在庫が残っているのですが、「みるくかふぇの訴求ポイント」がわかりにくくなることと、単純に海外へ持っていく荷物量を考えて今回は持っていっていません。

会場向け無料配布のリーフレット

また、会場で無料配布するリーフレットの作成も行いました。これはボカロPとしてのみるくかふぇの認知向上と、最新アルバムの「24時」の見どころの説明を兼ねたものです。リーフレット裏面の下部にYouTubeやTwitter/Xアカウントの案内もしており、今後も情報や新曲を追いかけて欲しいという願いも込めています。

絵師のEMUさんの描くv_flowerは非常に顔面が強いため、いつものサークル通信ではなくアーティストのプロモーション用マテリアルとしての位置付けを想定しています。韓国という「完璧な完成されたアーティスト」を求める地域に対して、これ単体でも欲しくなるようなマテリアルにしたかったというのがあります(僕がその狙いをどの程度達成できたかは、皆さんの評価に委ねます)。

当日の状況

ブースの準備

前日設営も可能だったのですが、宿泊先の街で散々迷子になったため前日設営は諦めて、移動と休息に徹しました。

当日1日目は遠征組一団で一緒に会場入り。会場のSETECは江南エリアの端っこの住宅街にあり、ソウル地下鉄3号線のハンニョウル駅が隣接しています。

ボカロの他に、ブルアカやスターレールといったゲーム系やホロライブなどのvTuber/ライバーなどの2次創作の即売会、DJ/声優/コスプレイヤー/vTuber/独立系アイドルのステージ公演など、色々なサブカルイベントが一手に行われます。そういったこともあり、会場前はサークル参加者、一般参加者、コスプレイヤー等でごった返していました。

入場前の待機列
会場入り口
3つあるホールのVOCASTAR側の入り口

各イベントの様子はこんな感じです。。。

ブース設営を終えて、一般入場を待ちます。今回もv_flower/GUMI & ついなちゃんの2点推し。A3で印刷したお品書きを吊るし、同じくA3で印刷したサークルメインヴィジュアルをブースの前に構える構成にしました。

Voc32、超VOCASTARのちょうど中央部にブースを構えました。
1日目のブース設営。

写真にも写っていますが、韓国語ができないため、来場者からこちらにお願いがある時用にいくつかカードを用意しました。

「会計をお願いします」「サインをください」「試聴を希望します」の3点です。

「会計」についてはスタッフから「一応通じなくはないけど、あまり使わない言葉だね。'計算'のほうがいいよ」という提案をもらったり、また来場者から「何をして欲しいカードかわからないのがすごく気になる。目的が伝わるように書き直していいかな?」と言われたり、逆にこちらが色々教えてもらってしまった感じです。

VOCASTAR 1日目の状況

午前10時の開場直後から、隣のブースに行列ができました。あまりにも膨大な行列になったため、30分もしないうちに運営によってブースごと壁側に連れ去られました。行列の整理用にベルトパーテーションが設置されていたりと、何かと大変だったようです。

チラ見したところ、コスメを連想させるようなファンシーなボカログッズが多かったため、来場者から相当目を惹いていたんだと思います。「行列は自分たちのサークルでなんとかするように」と運営から事前のお達しはありましたが、サークル側の想定を超える状況だったのでしょう。

余談ですが7〜8年即売会をやっていると、隣にとんでもないレベルの行列ができたなんてことは1度や2度じゃないです。そういうサークルと隣り合わせになりやすい星の下に生まれたのかもしれません🌟

騒ぎが収まり、こちらものんびりと頒布を再開しました。事前に僕の作品をチェックしていて「どうしても欲しかった」といった方達が午前中から昼過ぎにかけて次々に立ち寄ってくれました。割と余裕のない状況でのワンオペでしたが、どうにかなった感じです。ジャケットにサインを求められるのも台湾で経験済みだったため、こちらも問題なくこなせました。

下記に引用したサインに関するツイートは、僕のブースに立ち寄ってくれたエルウィンさんのもの。「ボカロP本人から購入した」という記念でもあるため、しっかりとサインさせていただきました。

残り10部を切っていた昨年夏リリースの「Wish and Endings」は1日目分と2日目分を分けていましたが、1日目分はなくなりました。

それよりも持参したリーフレットが思ったよりも配れていないのが気がかりでした。ブース来訪者への対応に追われて、認知のための配布が疎かになっていた点は否めません。この辺がワンオペの限界かもしれませんね。もう少し人気があるサークルになったら、以前のようにどなたかに手伝っていただくことも検討する必要がありそうです。

VOCASTAR 2日目の状況

2日目のブース設営。

再度気合を入れて2日目に臨みました。1日目と大きく違うのは、「僕の作品目当てで会場に来る方は、もういないだろう」という点です。そのため、即売会のルール(大きな声を出さない、通路で客引きをしない、人が滞留するような妙な企画を始めない)を守った上で積極的なアピールをこなさないといけないのが課題でした。

そこで1日目にあまり配布できなかったリーフレットの出番です。うちのサークルに興味のない人はこちらに目線も投げずに、まるで存在を認識していないかのように通り過ぎていきます。こちらに目線を投げて頒布物を目に入れたあと、通り過ぎる速度が少しでもゆっくりになる方、ブースを見ようかどうか迷う姿勢を見せた方にリーフレットをお渡ししていきました。

アレです。アマチュアバンドのライブチケットが売れ残って、当日開演前にライブハウスの前で通りがかる人にライブチケット購入をアピールするアレみたいな奴です。

元々、リーフレット単体でも欲しくなるようなレベルで制作したこともあり、受け取ってくれる方は多かったです。昼過ぎには持ってきた100部が全て捌けました。

そこから試聴に繋がったのが感覚としては5〜10%、その結果購入してくれた方はその半分くらいです。単価10円のリーフレットなので、効果としてはそこそこかなという気もします。受け取った方が手元に残しておいてくれれば、後日Twitter/XかYouTubeのフォローをしてくれるかもしれませんし。

ただ、一方で日本では試聴から購入のリードが80〜90%だったのが、VOCASTARでは50%前後まで落ちているのが印象的でした。試聴の結果興味なさそうな顔をした人と、「これはとても良い音楽です」と言ってくれた人と反応が極端に分かれました。

「K-POPの国」侮りがたし。最近ソウルで開催されたロックフェスでも日本のバンドの出演が多かったようですし、地元のロックバンドはそれほど多くなさそうです。ちょうど僕らが洋楽を見るような目でロックを見ているのかもしれません。韓国のロックが最後に盛り上がったのはX Japanが人気を博した頃までで、その後の韓国独自のV系の時代を経て終息していったと聞いています。

結果的に2日目は1日目ほどの成果は出ませんでしたが、こうした現地アピールで最悪の事態は回避できたといった感じです。昨年夏のv_flowerアルバム「Wish and Endings」は売り切れとなり、これにて在庫を売り切りました。僕のアルバムの中でも、一番多くの方に買っていただいたタイトルでもありますし、皆様に深く感謝します。

なお、2日間で遠征費用をペイできたかどうかについては、ボカロPさんによってできた方とできなかった方がいます。僕はペイできる所までは手が届きませんでした。

その一方で、この4週間のYouTubeの新規登録者数は普段の月の倍となりました。ほとんど未開拓だった韓国のリスナーがついてくれたということなんだと思います。ここからまた韓国の即売会に来る時までにこのリスナー層を増やし、「みるくかふぇの作品を買いたい」と思ってイベントに来てくれる人を増やしておくことが、次へ向けての課題と言えるでしょう。

兎にも角にも、貴重な機会を用意してくれた主催の方々、我々遠征組との間に入ってくれたスタッフや協力者の方々、ともにイベントを楽しんだ遠征組や韓国のサークル参加者と一般参加者の皆さん、お疲れ様でした!

日本の即売会と異なると感じた点

見ていて感じたのは来場者の年齢層ですね。ILLUSTAR FES全体を見ても上限が30歳代初めくらいまで。来場者さんの多くが、学生さんや女性の場合新社会人だったり。日本の同人イベント(例えばコミケなど)で、'80年代'90年代から参加していそうな超古参がブースを構えたり一般参加しているのとは、かなり雰囲気が違います。日本では、一生涯を通じてサブカル趣味に生きる人が多いのかも知れません。

韓国のサブカル文化が日本に比べてスタートが遅かったというのもあるのでしょうが、男性の場合は兵役等の関係で年齢によってライフスタイルが大幅に変わってしまうという事情もあるのかも知れません。「いい大人がサブカルとは」みたいな世間の目があるのかどうかは知りません。とにかく若い方ばかりです。

また、キャッシュレス社会というもの割と異なる点かもしれませんね。中学生か高校生くらいの子達が「現金の手持ちがなくて、キャッシュレスで買えませんか」と尋ねてきました。大人の方でも何人かに尋ねられています。そうであればLINE PayかKakao Payで国際送金が可能かどうか調べておいても良かったかもしれませんね。来年以降の課題です。

結局その子達は諦めて立ち去っていきましたが、1〜2時間経った頃に年長者を連れて現れ、その方が「この子があなたの大ファンらしくて、どうしてこのアルバムを欲しいと言って」と買ってくれました。もちろんサインもしました。

その他、「この後日本に行くのですが、マジミラにもブースを出しますか?」と尋ねられたり(当然、マジミラにブースを出せるようなボカロPではありません)、「あなたの作品の大ファンです!」と何人もの人から声をかけられたり。そんな、「もしかして自分は人気のボカロPなんじゃないか?」と勘違いしてしまいそうな出来事もたくさんありました。なろう系のラノベによくある、未知の場所で英雄になっちゃうアレですねw(違う)。そんな勘違いをしてしまいそうな出来事は活動のモチベーションにつながるので、大変にありがたかったです。

韓国のボカロ文化とサブカル文化に対して

韓国独自のボカロキャラクターは、今はもう販売していないSeeU(シユ)と、2017年に登場したUNI(ユニ)の2つ。SeeUは会場でもグッズを出しているサークルや持ち歩いている一般参加者、そしてSeeUのコスプレ参加者も見かけ、10年経った今も存在を待ち望まれているのを感じます。

下記引用は、2021年にあった10周年記念のぬいぐるみ制作のクラファンのお知らせ。

日本の有名ボカロキャラや人気ボカロPは韓国でも人気のようでしたが、ボカロという文化が韓国全体でどの程度根付いているのかは今回だけではあまり見えなかった気がします。僕のアンテナ感度が悪いだけかも知れませんが、韓国のボカロ曲の情報もあまり僕は見かけませんし。

そういえばVOCASTAR会場では、「夢ノ結唱 BanG Dream! AI Singing Synthesizer」がブースを構えていました。新キャラクター2体も合成音声化が発表されています。ステージでのイベントも行われました。バンドリキャラの合成音声化はどんな需要を見込んでいるのかイマイチ掴みかねるところがありますが、バンドリのコンテンツを総合的にアジアへ展開していく意気込みは感じました。

一方でサブカル全体を見ると韓国発の作品の日本への流入は増えていると思います。深夜アニメや異世界もの、ドラマなどは韓国産の作品の比重も増しています。また、メジャーの音楽市場は「アジア」という括りが育っている過程にあります。リアルアイドルが主体の韓国に対して、日本のvTuberはアジアに対するキラーコンテンツになるかも知れません。

アジア全体で文化の協調と競争は今後増えていくし、国を超えてファン層が被っていくのだろうと想像しています。ボカロ文化にその影響がどの程度押し寄せるのかは、今後注視したいところです。

まとめ

長々と書いてしまいました。

イベント自体2日間という長丁場だったため、色々ありました。日本やニコニコといった狭い世界だけで活動していると見えないこともたくさんあります。その思考や認識の限界を打ち破るべく、今後もあちこちに出かけて、いろいろな世界に触れてこようと思っています。

そこで吸収できた何かを今後の活動や作品作りにフィードバックできたら素敵だな、と思っていますよ!

みるくかふぇについて

メタル&ロック系ボカロ曲制作者。人の内なる成長や希望を、メタルやロックをベースとした音楽で表現することを目指しています。
2013年活動開始、年10回前後の合成音声系即売会へ参加、12枚のアルバムをリリース。


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