即売会頒布用のCD制作について
今年最初の投稿です。
今、週末の即売会で頒布するCD-Rをセコセコ手焼きしている最中です。CD書き込みを待っている間、暇なのでこの原稿を書いています。今日はせっかくなので、小規模音楽サークルに向けた即売会頒布用のCD制作についての話題を。
なお、ソフトの使い方については質問されても困ります(メーカーのサポートに質問するべきだと思います)のでお控えください。
アルバム用CDの制作
1年で完売できる枚数を計算
僕だけの特例的な事情かもしれませんが、旧譜が全く売れません。年に数枚売れればいい方です。そのため次のアルバムリリースまでに完売できるよう、即売会の参加回数などを計画の上、制作部数を決めます。
僕の場合、今まで毎年1〜2枚のペースで新譜を出していたので、1年で完売できる枚数を基準にしています。即売会1回辺りの販売枚数は、他のボカロPサークルに遠く及ばないほど(他のサークルさんに驚かれるほど)少ないです。
一方で年間の即売会参加回数はボカロPの中でも飛び抜けて多い方なので、年間トータルではCD-Rの手焼きでは中々大変な枚数になります。かといって今までプレスが必要になる程売れたことはありませんので、配布メディアはマスターからコピーしたCD-Rになります。
なお、プレスは多くの業者さんで最低ロット数が200からになります。その枚数では発注時の価格もそれなりになるので、数百枚単位で売れるようになってから考えないと、財布の痛みと共に在庫ダンボールに頭を抱えるダブルパンチに見舞われます。
マスターCDの制作
僕はCD頒布とは別にサブスク配信も並行して行っているため、マスター音源は24bit/96KHzで作成しています。CDへの書き込み前に16bit/44.1KHzのWAVファイルに変換して、CD-Rに書き込んでいます。
16bit音源を用意する際には、ディザー処理が必要とも言われています。ですが僕の音源は、そこまでシビアに結果が変わるわけではないので、特にCD専用の書き出し処理はしていません。ラウドネスレベルもサブスク配信用とCD用で共通です。
CD-Rへの書き込みソフトは、今はXLDを使っています。Macの場合、標準のミュージックAppにもCD-R書き込み機能があるのですが、僕のBlue-rayドライブと相性が悪いようです。
そうして用意したマスターCDをCDコピー業者や出力センターに送付して、複製してもらっています。なお、CDマスターのオンライン納品が可能な業者さんは少ないです。
CDマスターの送付の際は、宅配便の往復の日程と製造にかかる日数を考慮の上で入稿日を決める必要があります。宅配便の費用もバカにならないので、ヤマト運輸の宅急便コンパクトなど安めの配送が可能なものを利用すると良いです。専用の箱の購入と専用の伝票が必要なので、コンビニ等で間違いのないように気をつけましょう
包装の問題
アルバムの場合は、一緒にジャケットのオンデマンド印刷とCDケースへの梱包をお願いしています。慣れた方だど、全て別々に納品してもらって自分で梱包するようですが、僕の場合は(梱包のための)時間をお金で買っている形です。
包装は初期のアルバムはキャラメル包装してもらっていました。ただ近年は即売会への海外からの来場者が増えるに連れ、ジャケットやケースへ購入記念のサインを求められる回数が増えてきました。包装を破いた状態でお渡しするのも気が引けるので、CD用のOPP袋に入れた状態で会場に持っていっています。
ジャケット作成
ジャケットは自分でDTP作業で制作しています。Adobe Illustratorを使うかWordなどでレイアウトするのが定番だと思いますが、僕はAffinity Designerを使っています。
出力センターへの納品フォーマットとして定番の「.ai」方式で書き出すことができないので、PDF入稿が可能な業者さんを選ぶのがポイントです。
PDFも内部バージョンが存在します。Adobe Acrobatのバージョン幾つ相当かもしくはPDF-Xなどで書き出すのが良いかなどの情報は、営業の方に質問して確認することとなります。先方でもよく分からない場合は、古い形式に合わせるのがセオリーです。
PDFへのフォント埋め込みには対応していないフォントや業者さんがほとんどだと思います。文字レイヤーはアウトライン化してからPDFに書き出すのが必須となる場合が多いです。
CDマスターとは異なり、こちらはマスターデータのオンライン入稿が可能な場合が殆どです。
注意としては、MacでZIP圧縮する際は念の為WindowsフォーマットのZipで圧縮できるツールを使うこと(でないと、ファイル名の文字化けや使用不可のファイルが先方での伸長時に出現することになります)。先方での作業サンプルとしてPNG形式等で書き出した見本を同梱しておくこと。そのほか、DTPで一般的な注意点は、守るように気をつけることですね。
あと最近は、頒布物に発行者の名義と連絡先を入れるよう、即売会主催から求めらることが多いと思います(理由は言わずもがなです)。ジャケットやバックインレイなどどこかしらに、これらの情報を入れておくのを忘れないようにしましょう。
記載する名義はサークル名やアーティスト名で構わないと思います。連絡先はメールアドレスが理想ですが、Twitter/𝕏アカウントでも差し障りないと思います。
CD納品後
オンラインのCDデータベース(CDBD)への登録は、できる限り頒布開始までに済ませるようにしましょう。
ただ、再生ソフトによって登録先データベースが異なります。そのため、ミュージックApp(Gracenote)で登録しても他の再生ソフトでは読み込まれないなど完璧な対策ではありません。できる限りで構いません。
もしくは、ジャケットもしくはYouTube等のクロスフェード動画ページに、頒布物のタイトルと曲名の情報くらいは載せるようにしましょう。
音楽再生ソフト向けにジャケット画像を公開したい方は、特設サイトやGoogle Driveに置いてURLを公開する形になると思います。あまり小さい画像だとプレイヤーでの表示時にジャギーになります。最低でも500 × 500 pxくらいのサイズは必要です。MacのミュージックAppだと1600 × 1600 pxが読み込み可能な上限だった気がしています。
サブスク配信する場合、ディストリビューターからジャケット画像サイズを3000 × 3000 pxでアップロードするように指定されるケースがそれなりにあります。CDとサブスク配信を併用する場合、まずは最大サイズで書き出しておいて、CD購入者向けの配布用にリサイズするのが一番楽だと思います。
あと、トラブル防止のため納品書もしくは請求書はきちんと保管しておいた方が良いでしょう。
シングル用CDの制作
即売会用の一時的な頒布品として制作することがあります。長期頒布を意図したものではなく、1〜2回の即売会で売り切ることが目的の頒布物です。今ちょうど制作しているのも、このタイプのCDです。
頒布単価が安いため、原価込みで制作費用はあまりかけられないのが前提です。この場合は、バルクで購入したブランクCD-Rに自宅のドライブで一枚一枚手焼きする形で製造します。
マスターCDの制作は不要で、全てのCD-Rメディアに同じ内容でXLDで書き込みをします。プリンターで盤面印刷をする方もいると思いますが、僕はプリンターを持っていないので、盤面には特に何もしません。
ジャケットのみ、出力センターへ印刷を依頼しています。裁断のことを考えると、出力センターで出力してもらった方が早いので。
予算が限られていますので、2P印刷でイラストの発注はなし。素材サイトから素材写真もしくはイラストを購入し、利用規約に沿う形でジャケットデザインをすることが多いです。最近は自分でジャケットイラストを描くことも増えてきました。長期頒布する品ではないので、収録音源以外のクオリティは割り切っています。
包装は以前はスリムケースにOPP袋にしていましたが、コストを考えて不織布ケース+OPP袋への移行を試しています。OPP袋に入れるのは、運搬時のメディアへの傷対策を考えてのことです(強度的にはやや不安が残りますが)。この不織布にジャケットを差し込む形になります。
以上が、僕のCD制作の流れです。何かの参考にしてもらえれば幸いです。
執筆者プロフィール
メタル&ロック系ボカロ曲制作者。人の内なる成長や希望を、メタルやロックをベースとした音楽で表現することを目指しています。
2013年活動開始、みるくかふぇ名義で約80曲を発表している。