パリのPOPスター ギョーム・アポリネール
ポップスター アポリネールについての考察
詩友、加藤英俊くんによると、パリでは、ランボーもヴェルレーヌも古臭い。アポリネールが文学関係者に今でも人気らしい。その理由を考えてみたい。
彼は、フランスの詩人、小説家、美術・文芸評論家だが、イタリア生まれ、ポーランド貴族の母の子供として育てられるが、私生児である。決して豊かではないが、当時のパリは芸術の才能があれば、街がその才能を育ててくれた。
新しい現象に、新しい言葉を命名する才能があった。驚くことに「シユルリアリスム」や「オルフイスム」「カリグラム」はアポリネールの造語である。。
代表作「ミラボー橋」は自由律の詩集である。マリー・ローランサンとの悲恋も彼を伝説化する要素。アポリネールは今でいうところのポップスターだと思う。
本名ギヨーム・アルベール・ウラジミール・アレクサンドル・アポリネール・コストロウィツキー。少年時代をモナコ 、カンヌ、ニースで過ごし、19歳のときパリに出てくる。前衛的な若い詩人や画家とつきあう。タイミングが良かった。
1913年、詩集『アルコール』と美術論集『立体派の画家たち』で時代の寵児となる。全体的に、怪しい雰囲気で登場し、悲恋と戦争で怪我をして人気者になる。1917年にバレエ『パラード 』のプログラムではじめて
シュル・レアリスムSur-réalisme
を用いる。全盛期に、妻を残して若く死ぬ。38才。ドラマチックだ。
アポリネールの新しさは、未来派の新しさに似ていた。トレンディでやんちゃなんだね。「エスプリ・ヌーヴォー(新しい精神)」という言葉があるが、それを体現していた。
アポリネールの仕事は現代アートにおけるピカソの「アヴィニョンの娘たち」に相当するだろう。
詩集『アルコール(Alcools)』(1913)の冒頭に置いた詩「ゾーン」は
・韻を踏まない
・句読点を打たない
・12音節の詩句と散文のような詩句が混在している
・テーマも新しい時代の事物が取り上げられている。少し未来派に近い。
結局 お前はあの古い世界に
疲れている羊飼いの娘よ
ああ エッフェル塔よ
橋たちの群がメーメー鳴いている
今朝お前は 生きるのに
うんざりしている
ギリシアとローマの古代に
さらに革新的といえる詩は「月曜日 クリスティーヌ通り(Lundi rue Christine)」である。
様々な言葉の断片が「同時」に「並列」して配置されている。それは詩の世界の中だけで生まれる新しい抒情である。
「会話詩(Poème-conversation)」は会話の断片から成り立っている。パリの6区にあった酒場で交わされた会話、飛び交う言葉を次々に書き留め繋げていく。
死の直前に出版した『カリグラム(Calligrammes)』は文字がデッサンのように配置されている。『カリグラム』の中表紙にはピカソによるアポリネールの肖像画が掲げられている。様々な言葉の断片が「同時」に「並列」して配置されている。それは詩の世界の中で生まれる新しい抒情である。
「会話詩(Poème-conversation)」は会話の断片から成り立っている。パリの6区にあった酒場で交わされた会話、飛び交う言葉を次々に書き留め繋げていく。
死の直前に出版した『カリグラム(Calligrammes)』は文字がデッサンのように配置されている。『カリグラム』の中表紙にはピカソによるアポリネールの肖像画が掲げられている。
マリー・ローランサンとの悲恋を題材にした「ミラボー橋」は、ベルクソンの影響で、人間の時間を持続(la durée)という考えで表した。現実も非現実もなく過ぎ去りながら反復し、とどまる時間。
20世紀初頭の「生」の流れを捉え、美を生み出した。アポリネールが、現代でも好まれる理由は、彼が悲劇のポップスターだからである。
アメリカのケルアック、ロンドンのワイルド、日本の中原中也のように 今も輝いている。悲惨さを感じさせないこの強さが、テロや社会の混乱で文化のコアを失ったフランスに生きるパリの若者に求められている。
彼らはまたキュビズムやシュルレアリスムのような、フランス発の文化の潮流を作りたいと願っているのだろう。
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