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【実験詩】アホウの最期あたり

ビーフステーキの上に 
オランダ芹があるぜ
丈の高い柏の木が 
玄武岩の広場の中央に生えていて
蝶の星が一つ 
夜空に輝いているのさ
砂浜の向こうの蜃気楼は憂鬱に曇って
水葬した死骸の十字架を見つけて
拍子抜けをして笑い出したよ

すでに生活に興味を失っていたんだ
「生きているのに飽きているのです」
なーんて 女と心中を約束した
「ダブルプラトニックスーサイド」
女は うっとりと呟いたね
銀色に澄んだ空に
薔薇色の人生が登っていった
俺は女に青酸カリのカプセルを渡し 
ニコッと微笑んだ 
とてつもない心の平穏を感じたんだ

先週 不謹慎なことに 大地震の後の
子供の死体を羨ましく思ったんだ
熟し切った杏のような
皮の下から綺麗な黄色の脂肪が見えていた
潮風の中のアスファルトの匂いに夢心地
半馬神が歩み寄って
その女の頬の膨らみにキスをした
俺は嫉妬したのかな
俺はきっと狂っているのだろう

四谷の背の低いロシア人によれば
雄鶏は後悔しないらしい
東インドで70年に1回
人工の翼の台風が吹き荒れるってニュース
石塔の向こうから神々の笑い声が聞こえた
狂人の娘の憎悪ならば
決して後悔しないだろうし
ハゲタカの翼の生えた靴を履いてね
神々の警察が捕まえにくるのだから

月の光にいるアラビアの道化師は
コクトーに謝罪しなくてはならないぜ
夜がもう一度迫り出しら
か細い黒犬は 薄暗く閃くよ
耳を切ったオランダ人が見た
架空線の火花はなお光り輝く
椰子の花よ おやすみなさいまし
いずれにせよ 窓格子の向こうは
真っ黒だった


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