森の散歩 ボサノヴァ 僕の不安
朝起きてすぐ、ブラジルの音楽家、アントニオ・カルロス・ジョビンの十一番目のアルバム「テラ・ブラジリス」を聴きながら森を歩いた。不安に支配された僕をジョビンが救ってくれた。「(夢見人)Dreamer」から始まり「(幸福な熱狂)This Happy Madness」で終る20曲、まさに僕が今聞くべき音楽だと思った。哀愁と洗練とリズムの絶妙な調和。ジョビンの音楽には魂の救済がある。いつかブラジルに行ってみたいと思う。
僕は何に不安になっているのだろう。一人で詩を書くことこそ天国とわかったはずなのに、まだ何か世俗的なものを求めている。勝ち負けを考えている。目標を決めてそこに到達しようとしている。周囲の声が気になる。自由なのにそれを狭めようとしている。別に何も怖いものはないのに、怖いものを見つけようとしている。
公園の出口の木の階段で「Desafinadoデ(ジ)サフィナード」が流れる。1964年にスタン・ゲッツとジョアン・ジルベルトの共演「ゲッツ/ジルベルト」で有名になった曲だ。本物は60年の時を超えて確かな情感を運んでくれる。色褪せない詩を書きたいと願う。僕には今、書いた詩を読んでくれる人がいる。そういう環境を作れたのにそれ以上何を求める?「三月の水」が僕の『ピルグリム』の未来を暗示したように 今「テラ・ブラジリス」が僕の未来を暗示している。
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詩「テラ・ブラジリス」
何一つ確かはない
全ては不確かのまとまり
名前だけが風に揺れる
知ることも感じることも
思うことも全ては便宜
変化の断面
始まりも終わりもない
世界は勝手に動いている
他者の中にいて他者を見ている
テラ・ブラジリス!
真実は平等にある
あらゆる人に共通している