失敗しないインサイドセールス(コール)代行会社の選び方 成果を最大化するコミュニケーション方法とPDCA【電話トークスクリプト付き】
こんにちは。山梨(@device0462)です。
インサイドセールス機能の一部を外注する「インサイドセールス代行サービス」を一度は検討したことのある企業様は多いと思います。一方、いざサービスを契約してみたものの、「依頼しているインサイドセールス代行会社のアポの精度が低い(あるいはアポが取れない)」「発注後は丸投げ状態になっているので、成果を出すためのマネジメント手法を教えて欲しい」といったような悩みをよく聞きます。
リスト作成、トークスクリプト作成、コール業務を一気通貫でサポートしてくれるインサイドセールス代行会社に依頼したものの、費用対効果が合わずに辞めてしまった経験をお持ちの方も多いかと思います。
一方、インサイドセールス代行が「失敗」と判断される場合、前提となる提供環境や期待値のすり合わせができていないなどのコミュニケーション不足による認識齟齬が大きな要因になっているケースが多いです。実は、私も過去に完全丸投げ委託の状態からプロジェクトをスタートし、最初は全く成果に繋がらず、焦ってPDCAを回し始めたことをよく覚えてます。
本記事では、インサイドセールス代行*のプロジェクトを好転する方法について、私の経験・実績を含めて解説します。
コール代行以外のインサイドセールス業務におけるアウトソース(外部委託)に関する内容は別記事に整理しています。
コール代行のよくある失敗
「高いお金を払って専門家に依頼をしているのだから細かい指示は不要で成果だけ出して欲しい」
という期待値を持っている方は少なからずいらっしゃると思います。一方、丸投げ委託で成果を返してくれるコール代行会社は本当に極稀なため、このような期待値だと、スタート地点からプロジェクトのゴール・方向性がズレる結果になります。
あくまで個人的な考え方ですが、日常的に触れている情報量や過去の経験値に差がある以上、コール代行会社に自社の社員と同等以上のパフォーマンスを期待するのは見当違いだと思います。
例えば、特定セグメントに手紙を送付したあと、フォローアップのコールを外部の会社に委託していました。結果、リスト対比のアポイント取得率は約3割、つまり、委託したことで取得したアポイント件数を3割引き上げることができました。
別の見方をすると、電話以外のチャネルで7割以上のアポイントを取得していることになるため、いかに「コール」チャネルだけに依存することがリスクか、ということも理解できます。
当然ですが、利用するチャネル、価値が伝わるメッセージ、アプローチ頻度など、戦術部分を洗練するほど実行部分の価値が高まります。成果を出すための戦術を設計するのは自社、戦術を確実に実行するのはコール代行会社、という棲み分けが良いパートナーシップを築く役割分担だと思います。
コールチャネルを含めたアウトバウンド戦略・戦術については以下のnoteに詳細を解説しています。
コール代行が有効に機能する3つのタイミング
コール代行が有効に機能するタイミングは大きく分けて以下の3つです。
(1)組織状況に合わせてリソース調節したい
少数精鋭体制で商談を創出する必要があり、新規リードの獲得数や商談進捗に合わせて必要なリソースが変動する状況に柔軟に対応したい場合です。外部のリソースを確保することで、活動量を担保することができます。
(2)競合より先行して重要市場を開拓したい
「競合他社より先に業界のヘッドピンになり得る企業ロゴを獲得する」など、営業戦略上、アウトバウンド施策を強化するにあたって、突発的に必要な活動量が増えるケースへの対応です。当然ですが、一人あたりの活動件数には物理的な限界があるため、短期で活動量を増やすためには、外部委託か人材採用が必要です。
ただし、採用市場から優秀な人材をすぐに採用することは難しく、採用後のオンボーディング期間が必要であったり、キャリア・評価制度に合わせた業務設計が必要になったりするため、「コール業務」に特化した短期リソースの確保が目的であれば、有効な選択肢の1つです。
(3)勝ち筋を見つけたあとの起爆剤 & 営業仮説を早期検証
ターゲットとなる市場のニーズ・課題が自社のソリューション(プロダクト)と合致している、つまり勝ち筋が見えたタイミングにおける販路拡大において有効です。あるいは勝ち筋を見つけたあとではなく、見つけるための仮説検証を目的にしたリソース確保を目的として、コール代行を活用することも有効に機能します。
業界や役職別のターゲットリスト・トークスクリプト作成、リスト別の受付突破率・アポイント率の検証しながら最適なトーク、アプローチ手法を確立するなど、営業の仮説検証を繰り返しながら新しい武器を磨く時間を外部リソースで担保できます。
ご興味がある方は、以前公開したインサイドセールスにおけるアウトソースの考え方に関する記事もご一読ください。
失敗しないコール代行会社の選び方
コール代行会社の選び方について説明していきます。まず、大きな観点は3つあります。
(1)実行機能として信頼できるパートナーか
1つ目は、「実行力」です。ここでの実行力=活動量です。戦術=仮説、実行=検証の位置づけであり、検証に足る活動量を担保できる会社でないと外部委託する価値が希薄化します。
前述したように、戦術は自社、実行はコール代行会社という棲み分けをした際、実行機能として、役割を全うすることができるパートナーである必要があります。実行機能を高品質で担保できれば、例えば、精度の高いリストの整備や担当者接続・アポイント許諾率が高い手法を自社で確立できていれば、生産性の高い状態を維持したまま成果の最大値を引き上げることができます。
また、当然ですが営業力やコミュニケーション能力など、基本的なスキルは当然、一定水準を担保する必要があります。例えば、棒読みであったり、製品の理解が浅い状態では、どれだけ戦術を練っても、実行部分でつまずきます。
判断基準としては、過去の実績が参考になります。私の場合は、類似企業や競合他社との取引実績、類似のターゲットを開拓した経験があるかどうかを確認するだけではなく、実際に電話をする担当者・ディレクターの方と事前にお話をさせていただきました。他プロジェクトでの成功体験の解像度、PDCAの深さなど、納得できる回答をもらえたのが発注の決め手になりました。
(2)オーナーシップを持って高速PDCAを回せるか
2つ目は、実行過程で高速にPDCAサイクルを回せるかどうかです。こちらは戦術機能をコール代行会社に求めるわけではなく、戦術を洗練するために必要な情報を高頻度で提供してくれるか、という観点です。
例えば、弊社でコール代行会社を選定する際の基準(一部)は以下で設定していました。
また、事前に判断するのが難しいかもしれませんが、フィードバックを素直に受け入れ、改善アクションに反映する姿勢も重要です。例えば、代行会社からの提案フェーズでケース面接のように、「受付突破に苦労する方がいた際に、課題整理と改善策の考案をするためにどのようなアプローチをされますか?」「弊社からコール録音を確認したフィードバックを差し上げた場合、貴社のコール担当の方には、どのようなアクションプランの変化が期待できますか?」といった質問に対する回答で見極めることはできると思います。
弊社が以前にご依頼させていただいたパートナーは、フィードバックを受けた後に、単に「わかりました」と言うだけでなく、具体的な改善計画まで掲示をしていただき、あらためてオーナーシップの高さを認識できたため、安心してコール代行をお任せすることができました。(こちらは、発注後に気づいた良いギャップです)
(3)一次情報(顧客との会話録音)を取得できるか
最後の3つ目として、「コールの録音を共有いただけるか」は、地味な視点ですが非常に重要です。
週次の定例で、コール担当の方より課題感をヒアリングすることはできますが、感情的なバイアスが入っていたり、スキル・経験不足により適切に課題を捉えることができない場合があるため、核となる課題に対する打ち手を議論することが難しいです。
また、課題の深堀り・特定のヒアリング、改善案を明確に指示する頻度が週に1回になってしまうと、機会損失に気づくことが遅れ、時間が経てば経つほど取りこぼしが増加します。
実際のお客様の反応やコール担当者の方の話し方など、文字やまた聞きでは伝わらない一次情報をリアルタイム(デイリー)で取得・確認にすることで、より精度・鮮度の高い改善サイクルに繋げます。
コール代行会社の成果を最大化するコミュニケーション方法とPDCA
以下では、私がコール代行会社に依頼した経験をもとに回したPDCAのサンプルをご紹介します。
PDCA①リストを人物単位に洗練
PDCAを回す上でまずは「リストの精緻化」が重要です。
依頼当初、業界単位での架電を依頼していましたが、「とりあえず代表受付に電話して氏名が不明の担当者様を呼び出すが接続しない」、「キーパーソンの方ではなく、アポイントが取りやすい部署の方とのアポイントが量産される」などの結果となり、活動の生産性やアポイントの精度が低いことが課題となりました。
そこから方針を変えて「具体的な企業名・人物名が記載された人物単位のリスト」を作成するようになりました。リストを「人物単位(企業名+部署名+役職名)」にすることで、代表番号宛コールで受付の方に着電した際、呼び出しを依頼する担当者氏名・部署名を明確に伝えることができ、担当者接続率を高めることができました。
人物単位のリスト作成については、以下記事に詳細なステップを書いています。
また、人物単位のリストが作成できると、相手の部署や役割が明確になります。これにより、「なぜ"あなた"に連絡したのか」という”Why You”のコミュニケーションが格段にしやすくなるため、単純な受付での呼び出し依頼よりも担当者接続率が2倍以上に引き上がりました。
PDCA②共有する情報の量と質
コール代行会社に対して「共有する情報の量と質」にもこだわりました。
社内の新入社員が行うものとほぼ同等水準の研修を実施してからコール業務を開始いただいたり、シーン別のコールスクリプトの作成をしたりしています。
以下、受付突破時や担当者の方とのコンタクト時、ヒアリング、顧客からのオブジェクション(反論)に対応する内容を記載したものです。一方的にスクリプトを伝えるだけではなく、スクリプトを変更してみた結果・気づきを記入することを重要視していました。反論への回避についても「なぜあなたに連絡したのか(Why You)」が重要な要素となりました。
例えば、「Web上に掲載されている他社プラットフォームの導入事例を拝見し、記事内の☓☓☓というコメントから私の○○社との取り組み事例が参考になると思いご連絡した」など、コールする相手方の企業様が発信している情報を用いたトークにより、格段に受付の方の不信を突破しやすくなりました。
PDCA③ゴールを細分化した”諦めない”姿勢づくり
例えば、目標を「アポイントの許諾を取得する」という一つに設定すると、お断りを受けた際の切り返しが難しかったり、無理やり粘ってしまい電話口の方の心象を悪くする可能性があります。
目標を細分化して段階的に設定することで、優先度1のゴールが達成できずとも、優先度2のゴールに切り替えるなど、最優先のゴールが難しい場合でも次のチャレンジがしやすくなります。また、ゴールを段階的に設定することで成功・失敗の2択評価ではなく、小さい成功か、大きい成功かというポジティブな思考に転換できるため、成功体験を積み重ねることがしやすく前向きにPDCAを回すことができました。
以下に、コール担当者の方とすり合わせした段階的なゴールのサンプルを記載します。
人物単位のリストを作成しているとはいえ、ピックアップした方が自社商材・サービスの提案対象となる人物・部署ではない場合も少なからずあります。その場合、提案対象となる担当者の方のお名前を確認できると理想ですが、部署や役職情報だけでも、キーパーソンに近づく非常に重要な情報となります。
例えば、「○○部の統括部長様はいらっしゃいますでしょうか。」といった呼び出し方や、「▲▲部の☓☓様よりご紹介いただいたのですが、○○部で〜〜を担当されている方はいらっしゃいますでしょうか」といった次に繋げるトークがしやすくなります。
PDCA④デイリーフィードバックの実施
最も工数的な負荷が高いですが、最も効果的だった施策です。コールの録音を毎日聞き、その録音に対してフィードバックを提供することを意味します。
フィードバックは、「Highlight(良かった点)」と「Need To Improve(改善できる点)」の両方をテキストベースで提供していました。フィードバックを元に、コールする際のスクリプト変更したり、伝える順番・情報量の調整などの伝え方のPDCAを回します。
結果として、電話が掛けやすくなったか、アポイントを取りやすくなったかなどの担当者の方の所感を週次ミーティングでヒアリングしたり、しっかりとフィードバックが反映されたトークになっているかなどを同じく録音を聞いて確認しながら、施策の効果検証を行っていました。
また、フィードバックを口頭ではなくテキストで残すことで、必然的に自分のノウハウが言語化され、社内チームに還元できたり、他(フィードバックを伝えた方以外)のコール担当者の方にも共有できたりと、フィードバックをその場限りではなく、ストック型の資産として蓄積することができました。
デイリーのフィードバックは工数的な負荷は高いですが、コール代行の取り組みを成功させる要素として非常に重要だと実感しました。
コール代行で不信・不要・不適を突破するために検証した電話トークスクリプト
アポイント許諾率を上げるために、不信・不要・不適の突破に向けて様々なトークスクリプトを検証しました。その一部を記載します。
*前提、アパレルブランドを運営する企業のマーケティング本部長の山田様宛にお手紙を送付、株式会社Maroo(自社)担当役員の山下との打ち合わせを設定するためのコールを想定したスクリプトです。
不信突破
人物単位のリストで氏名、部署名が把握できているため、シンプルに呼び出しをお願いします。単純な氏名なしの「マーケティング担当の方をお願いします」より接続率が2倍以上改善されます。
「グローバルNo.1の評価」、「(同業他社である)A社様・B社様で導入されている」というキーワードを入れることで不信を突破し、担当の方に興味を持ってもらいやすくなります。一方、あまり長く話しすぎず端的に伝えて、手紙の内容について認識のすり合わせをしていきます。
不要突破
「インタビュー記事や貴社IR資料を拝見」していることを伝え、手当たり次第の闇雲な連絡ではなく、しっかりと意図を持って連絡していることを伝えます。「山田様が管掌されているマーケティングDXやオムニチャネル戦略の領域」など、役割を理解した上でご参考になる情報をお持ちしたいと"Why You"を明確に伝えることで不要突破に繋がりました。
不適突破
「アパレル業界ですでに導入されている実績が多数あり、マーケティングのDX推進を実現する基盤として評価」など、相手方の関心あるテーマで実績・評価を積み上げていることを強調し、同業界ではかなり推進が進んでいる示唆して不適を突破します。
実際の商談にお手紙の差出人である役員・代表が同席できるようなら「執行役員の山下もぜひ山田様と直接お話してご意見をお伺いしたいと申しております」といった熱量が伝わる表現を追加しても良いと思います。
(番外編)秘書様宛
役員・本部長クラスの方は当然忙しく、受付から呼び出ししても接続しないケースが大半です。その際は、秘書様宛にメールで「面会したい背景」を送信するステップでご連絡をしました。
「面会の件で」と言うことで既に設定されている面談のように話したり、役員同士の大事な案件であると思っていただくことが重要です。また、全体的に「アポイントを取りたい」とは言わないことで「新規の営業色」を可能な限りなくしてます。また、よく受付の方から以下のような質問を受けます。その場合は、嘘はつかず誠実に、敬意を持ってお話してます。
また、細かいですができる限り「No(ノー)」とは言わないことも心がけています。「無い」系のキーワードは、そのままお断りの流れになりやすいため、別の言い回しをします。
秘書様宛の場合は、直接、山田様(手紙宛先の方)とお話をしているわけではないので、いきなりの日程調整ではなく「面談可否の判断するためのメールを転送」をご依頼します。
可否を判断するのは山田様、秘書様は「メールの転送」という依頼であればご負担が少なく、必要な情報を山田様に届けることができるため、会話もスムーズに展開しやすいです。
コールは目に見えない間接的な影響で成果貢献
前述した通り、コールチャネルだけで実現できることには限界があります。社内のCRMシステムにログインできない、社内の営業会議に参加していないなど、日常的に触れている情報の鮮度・頻度が異なるなかで、内製社員と同じパフォーマンスを求めたり、”専門家だから”と成果のみを期待すると現実との乖離が生まれます。
弊社の場合は、ターゲット企業のリストに対して手紙・SNSでのアプローチを同時並行で行い、電話はリマインドの役割、もしくはメールアドレスを取得する役割に振り切っていました。電話で直接的・間接的にリマインドすることで相手方の記憶に強く残り、その場で接続しなかったとしても、ふとした瞬間に思い出したタイミングでアポイント承諾の返信を貰えることも多いです。
さいごに 成果を出す責任は自社で持つ
コール代行サービスで成果を出せるかどうかは「どれだけ成果を出す環境を整備できるか」によります。
前提となるスタンスやスキルセットは必須要件にすることは前提ですが、
「リストの精度を上げる」
「丸投げではなく成果を出すための支援を最大限行う」
「期待値を明確にすり合わせて実行部分(活動量・品質)にオーナーシップを持ってもらう」
この3つの要素を満たすことができれば、コール代行会社は、アウトバウンドの取り組みを成功導く強力なパートナーとなります。
本記事に関する意見交換を希望の方
色々な会社の方と情報交換させてもらってます!たくさんの人とお会いしたいため、記事内容で気になったことがある方はぜひ山梨のTwitterからご連絡いただくか、以下のPittaから面談設定いただけますと幸いです!
また「参考になった!」と思っていただいた方はいいね、シェア(感想付き)をぜひお願いします!とても励みになります!
皆さんからいただいた本記事の感想
机上の空論ではない実践にもとづいた本質的で役立つ情報発信を心がけてます! サポートいただけましたらメディアやコミュニティ運営に投資していきます。 気に入っていただけましたら、オススメ・サポートをよろしくお願いいたします!