インサイドセールスが「LinkedIn Sales Navigator(セールスナビゲーター)」を活用してアポイント率2倍以上を実現したユースケース4選
こんにちは。山梨(@device0462)です。
最近、LinkedInに関して色々な方から相談を受けます。「LinkedInってそもそも何ができるのか?」「LinkedInは日本だと登録率が低いから活用余地が少ないのでは?」といったことを疑問に思われるインサイドセールスの方は多いと思います。
私のチームでは、LinkedInの有償プランである「LinkedIn Sales Navigator(セールスナビゲーター)」を活用することでチームの生産性を引き上げることができました。反応率向上だけではなくターゲット企業に所属するキーパーソンの抽出・精査、ABM戦略の施策実行・効果検証の加速など、様々な部分で貢献しています。
本記事では、「LinkedIn Sales Navigator」を導入後に即実践で活用するためのユースケースやベストプラクティス、インサイドセールス組織の生産性や業務効率を向上させた実績についてご紹介します。
「LinkedIn」と「LinkedIn Sales Navigator」の違い
「LinkedIn」はビジネスに特化したプロフェッショナルソーシャルネットワーキングサイト(SNS)で、自分の過去の経歴や仕事の実績、取得した資格を公開したり、同僚や業界の仲間と繋がることを目的に開発されています。基本的な機能はFacebookと同様ですべて無償で使用できます。
一方、「LinkedIn Sales Navigator」は、LinkedInの有償プランで、営業の新規開拓に特化して機能設計・開発されています。例えば、高度なリードおよびアカウント検索、各社に最適化されたリードおよびアカウントのサジェスト、繋がりがないLinkedInユーザーのプロフィール詳細閲覧・メッセージ送信、CRM統合などBtoBセールスにおける様々な要素が備わっています。
「LinkedIn Sales Navigator」機能の詳細は以下の記事にも記載していますので参考にしてください。
使用できる機能は「LinkedIn Sales Navigator」のなかでもいくつかプランが別れています。CRM統合が必須な場合は、「Advanced Plus」のみです。
「LinkedIn Sales Navigator」とBDR業務の関連性
インサイドセールスチームの業務は、「誰に(Who)」、「何を(What)」、「どうやって(How)」の3要素を検証しながらPDCAを回すことが多いと思いますが、「LinkedIn Sales Navigator」は様々な用途でインサイドセールス組織を高い水準を引き上げます。
例えば、自社ICP(Ideal Customer Profile|理想の顧客プロフィール)の対象条件に合致した企業(以下、ターゲット企業)の抽出だけではなく、企業に所属するコンタクト情報(姓名、部署、役職)を抽出することができます。また、マーケティングチームがメールアドレスを取得前の人物であっても1to1で最適化したメッセージを受信BOXに届けることを可能にします。
「ターゲット企業リストを渡されたが、キーパーソンになり得る人物を特定することに時間がかかる」「とりあえず代表取締役宛に手紙を送っているが反応率が悪く、時間とコストをかけたが採算が合わない」などの課題を抱えているインサイドセールス組織について、貢献領域が大きいツールになります。
「LinkedIn Sales Navigator」を利用する3つのビジネス価値
以下ではLinkedIn Sales Navigatoを利用する3つのビジネス価値を紹介します。
価値1 |鮮度・精度が高い人物情報をもとにABM(Account Based Marketing)戦略の加速
ABMを実践されている組織の場合、アウトバウンド活動に利用するターゲット企業リストが整備されていて、そのターゲット企業リストに対してアプローチを行う際、まずは人物単位のリストに落とし込みを考える方は多いと思います。
人物単位でリスト作成する際、大概はWebからインタビュー・事例記事に掲載されている人物や、イベント・セミナー登壇者を手動で検索したり、無料で使える人物データベースから抽出するなどの方法を取ると思いますが、「マニュアル作業の負荷が高く少量しかリストアップできない」、「人事異動情報をもとにしているため精度が悪く意図したターゲティングができない」などの課題が多いと思います。
「LinkedIn Sales Navigator」を活用することで、自社の理想的な顧客企業プロフィール(ICP)に一致する企業を検索条件に登録することができ、その企業に所属するキーパーソンとなり得る人物を瞬時に抽出できます。
体外的なプレスリリースや人事異動情報ではなく、LinkedInのプラットフォームには実際にユーザーが登録している一次情報が蓄積されているため、精度・鮮度が高いデータベースをもとに戦略的なアプローチを計画することができます。
価値2|顧客起点にWhy You / Nowの訴求を明確にした1to1アプローチ
LinkedInは、プライベートで利用するSNSと違って、ビジネス上の利活用を目的とした性質が強いです。採用のスカウトや営業の新規開拓で利用する目的で登録する方々が多く、自身の信頼性を向上させるために経歴を詳細に記載したり、仕事の同僚・上司・取引先と繋がっていることが多いです。
つまり、担当されている商品・サービスや所属する部署情報はもちろん、過去の経歴・共通の繋がり、直近の関心ごと(投稿内容)からメッセージを1to1で最適化して、アプローチを行うことができます。
白地開拓(CRMにコンタクト情報がないリスト)のアウトバウンドアプローチは、「はじめまして」からスタートすることが多く、不信、不要、不敵などのお断り理由を明確に回避する必要があります。その際、相手が発信している情報、関心ごとに合わせてWhy You, Why Nowを訴求することで反応率を高めることができます。
加えて、「LinkedIn Sales Navigator」は「Outreach」のようなSales Engagement とも連携することができます。Outreachにはメッセージをテンプレート化する機能があり、そのテンプレートを即座に呼び出し、顧客の姓名や部署名、役職といった情報を含む文面を素早く作成できます。それをLinkedInと連携させて、メッセージ機能で送ることが可能です。
価値3|テクノロジー連携したマルチチャネル施策による反応率の向上
3つ目がマルチチャネルを利用した反応率の向上です。LinkedInの「Inmail」機能を活用することでLinkedIn上のリードに対して直接メッセージを送ることができます。
通常のLinkedIn(SNS)は、基本的に互いに繋がっている人にしかメッセージの送受信ができませんが、Inmail機能を活用することで、まだ繋がっていない人にも直接1to1でメッセージを送ることが可能です。
さらに送ったメッセージは、LinkedInの受信ボックスだけでなく、GmailやOutlookなど、顧客がビジネスでよく使う受信ボックスでも受信されます。そのため、まだ会ったことがない方へでも、普段使いのメーラーと同様の存在感あるメッセージを送ることが可能です。
*ただし、受信者側の設定で受信ボックス連携がONになっている必要があります。
例えば、私の受信ボックスに届いたInmailをサンプルで掲載します。LinkedInのアイコン、ボタンなどでInmail経由だと判断できますが、それ以外は通常のメールと全く同じ見え方になります。
さらに、前述したようなSales Engagementと連携することで単発のメッセージ送信だけでなく、反応の有無に応じて、次のメッセージを自動で送付するワークフローを組むことができます。例えば、最初のメッセージに対して返信がなかったら、3営業日後に再度別のメッセージを送付するなど、追客方法の工夫により返信率が大幅に改善された実績があります。
Sales Engagement Platform「Outreach」に関する記事は以下をご覧ください。
「LinkedIn Sales Navigator」のユースケース4選と成果
ここからは、実際にチーム内で実行している4つのユースケースと、成果について詳細を記載していきます。
ユースケース1|ターゲット企業に所属するキーパーソンのリスト作成
【ユースケース】
ABM戦略の実現に必要なターゲット企業のリスト整備後、ターゲット企業に所属するキーパーソンを「LinkedIn Sales Navigator」で抽出する場合のユースケースです。
【成果】
例えば、弊社の場合、対象となるのは顧客とのマーケティング・コミュニケーション戦略を管轄する役職者・CXOレイヤーの方、またはプロダクトマネジメントやシステム・IT開発・運用を行う人物です。
高度なリード検索では、バイネームの企業名の他、部署・役職などの人物属性を検索条件に追加できます。そのため、自社でリーチしたいターゲットペルソナの部署・役職に合わせて、ピンポイントでLinkedInに登録されているデータベースを検索、瞬時に人物単位のリストとして抽出できます。
また、スポットライト機能を活用すると、特定条件に基づいて抽出した人物を絞り込むことが可能です。直近で転職した人やLinkedInのタイムラインに特定のキーワードを含む投稿を行った人の特定ができます。
さらに自社CRMに登録されている人物や「LinkedIn Sales Navigator」内で保存したリストに存在する人物なども抽出対象となります。特定の役職や部署名を持つ人物を除外するといったフィルタリングも可能でより精度の高いリスト作成が可能です。
LinkedInのチームリンク機能を用いると、自社チームが既に繋がりを持つ人物に限定してアプローチをすることが可能です。紹介を依頼する対象者を効率的に特定することができます。
ユースケース2|キーパーソン宛の手紙発送後のフォローアップ
【ユースケース】
ターゲット企業に手紙を送った後、代表番号宛に架電するだけではなく、直接的にリーチできるチャネル「Inmail」を活用してアポイント率を高めたい。また、相手が手紙内容を確認しているかどうかを把握した上で優先度や2通目のメッセージ内容を調整したい場合のユースケースです。
【成果】
アウトバウンド施策として手紙を送付した後にフォロー架電を行うケースが多いと思いますが、決して接続率が高いチャネルではありません。手紙発送後のフォロー施策としてLinkedInなどのSNSチャネルを活用することで、反応率を大幅に向上させることが可能です。
手紙発送後のマルチチャネルでのフォローアップ詳細は、以下の記事で解説してますのでご感心ある方はご一読ください。
特に「LinkedIn Sales Navigator」では、送信したメッセージがクリックされたかどうかを計測できるスマートリンク機能を提供しています。これを利用して、郵送した手紙のPDFデータを差し込むことができ、リンクがクリックされた際には通知を鳴らしたり、CRM上にデータを同期させることで効果的なタイミングで再度架電をしたり、リマインドのInmailを送信ことが可能になります。
また、Inmailは無制限に送信できるわけではなく、毎月付与されるCredit(月50件)に応じて送信の上限が変わるため、使い所は検討が必要です。弊社では、ターゲット企業のなかでもTier1(最優先に開拓したい企業)やクリック履歴があった方を優先してInmailを送信しています。
ユースケース3|【Outreach連携】マルチチャネルを活用した追客プロセスの半自動化
【ユースケース】
展示会で獲得したリードを効率的にフォローしたい、また展示会のROIを最大化させるために獲得したリードからの商談化率を高めたい場合のユースケースです。
【成果】
一般的には展示会などで獲得したリードの場合、電話・メールでフォローすることが一般的です。一方、展示会終了後は、出展企業が集中して架電・メールを行い提案アプローチをするため「営業目的のチャネル」と認識される傾向にあり存在感が薄くなりがちです。
特に、多忙な役職や事業部の方々は、電話に出られなかったり、メールも最低限のものしか確認できなかったりする場合が多いですが、営業目的に使われる頻度が少ないSNSでのメッセージは、気軽にメッセージを確認・返信できるという利点もあり返信率が高い傾向にあります。
日本で普及し始めているとはいえ、LinkedInを営業の提案チャネルとして認識されている方はまだ少ないため、顧客のマインドシェアに変化を生じさせ、電話・メールで何度アプローチしても反応がなかった顧客に対して、LinkedIn(Inmail)から連絡したらすぐに返信を得られたといったケースも少なくないです。
特に、急成長するスタートアップ企業では、顧客獲得コスト(CAC)をいかに下げるかが営業組織の生産性改善において重要指標となります。リード獲得の単価(CPA)を下げることはもちろん、マルチチャネルで顧客接点を持つことによるCVRを上げることでもCACの削減効果に寄与します。
LinkedIn(Inmail)で送信している文面は、以下記事の考え方で作成してます。サンプルを知りたい方は、ぜひTwitter DM(@device0462)からご連絡ください。
ユースケース4|社内人脈を可視化したリファラル(紹介営業)の促進
【ユースケース】
キーパーソンのリストを作成した後、電話・手紙などのアウトバウンド活動と並行して社内メンバーからの紹介の可能性を探る場合のユースケースです。
【成果】
チーム管理を行うことで「キーパーソンと社内の方との繋がり」が可視化されて一目瞭然で把握できます。その情報を活用して、社内のメンバーに直接メッセージで紹介の打診をすることができます。
前述したように、LinkedInはビジネスでの利用が主な目的になるため、信頼性を担保させる意図で、過去の経歴や同僚や上司、取引先と積極的に繋がる人が多いです。特に、経験が長い社内のシニア・エクゼクティブレイヤーは、他社のハイクラス(本部長、役員クラス)層の方との繋がりがある可能性が高いです。
そのため、「LinkedIn Sales Navigator」ではリードの詳細な経歴を把握したり、社内・社外の繋がりを考慮した上で、社内の人脈にリーチすることができます。社内メンバーとはいえ、大事な人脈をご紹介いただく依頼をするため、目的・背景の情報を明確に揃えた状態で相談するコミュニケーションが可能になります。
「LinkedIn Sales Navigator」の効果を最大化するためにBDRで大事にしていること
弊社のインサイドセールスチームが「LinkedIn Sales Navigator」で成果を出すために重視している3つのポイントをご紹介します
1. ポテンシャルの高い領域を見極めたリソースを集中
人数が限られるスタートアップの営業組織において高い売上目標を達成するためには、無闇にアプローチをするのではなく、売上が一番高い、あるいは受注率が高いといったポテンシャルの高い領域を見極め、戦略的なリソース投入が重要になります。
この状況下で重要となる考え方が、「ICP(Ideal Customer Profile)」の見極めです。B2Bにおける企業版ペルソナの設計のことで、ICPを明確にすることで、戦略的にアウトバウンド活動を実施、少ない人数でも短期的な売上成長実現可能となります。
2. アカウントベースド(Account Based)からパーソンベースド(Person Based)
多くの企業が「ABM(Account Based Marketing)」の考え方を用いると思います。ICPに基づくターゲット企業のリストを作成し、リソースを集中させるという方法ですが、ターゲット企業名だけではアプローチが難しい場合が多いのも実態です。
そこで企業単位ではなく、その企業に所属する個々の人物、具体的には、ターゲットとなる部署やその部署に所属する人、意思決定権を持つ役職者などに焦点を当てるアプローチです。
作成リストをもとに特定の人物・部署・サービスに対して、最適化した文章やシステムのワークフローを活用して自動的・効率的にメッセージ送信を図ることができます。
3. タスクの標準化とアウトソース
組織の業務効率化や生産性向上という観点から重要となります。特にインサイドセールスでは、標準化されたタスクで再現性が見込めるケースが多く、外部に委託することで営業担当者の時間を有効に活用することができます。
例えば、打ち合わせの日程調整やメール送信(文面作成ではなく送信するだけ)の業務は誰がやっても同じです。
弊社では、文面作成、送信タイミング、送信の宛先はすべてインサイドセールスチームで意思決定、指示を出してますが、実際のInmail機能を使った送信作業はアウトソースしてます。タスクを標準化し、外部リソースに委託することで、より時間価値の高い作業を行うことができます。
さいごに
「LinkedIn Sales Navigator」は業務効率化を実現し、生産性を飛躍的に向上させる強力なツールです。
組織の拡大フェーズにおいては、CAC(顧客獲得コスト)が高騰する傾向にありますが、CACの高騰をおさえ、かつ社内顧客資産を有効活用するという観点で、直接的なリーチにより短期的に有効商談を増やすことが重要です。
伝統的な方法である手紙や電話、Web広告だけに依存するとCVRが改善されずに活動量に依存したKPI設計になりがちですが、「LinkedIn Sales Navigator」のようなツールを活用することで生産性を大きく引き上げることが可能です。
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