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フィヨルドの岸で焚き火。 シンプルで贅沢なもの。
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2012年夏。
3ヶ月間、自転車でキャンプをしながら旅をした。
旅を始めて約1ヶ月。
デンマークからフェリーでノルウェーへ渡り、山道、雪道を越えここはRingøyという街の小さなキャンプ場。
ここは、山側から私達が入ったフィヨルドと、海側からのフィヨルドのちょうどぶつかった所にあるキャンプ場。目の前には神々しい光が差すフィヨルドがあり、キャンプをしながらノルウェーを巡る醍醐味を味わい尽くせるキャンプ場なのだ。
焚き火の窯(石を積み上げたもの)がいくつか並んでいて、そのそばにテントを張れば焚き火の窯をひとり占めできるという、‘’焚き火男子‘’っぽいキャンプ場なのだ。
‘’焚き火男子‘’キャンプ場のその名の通り(勝手に名付けたが)、焚き火の火の安否を確認するために各テントから男性が定期的に出てくるのである。
雨が降ればテントへ入り、少し止んでくると、ジーッというテントのチャックの音がして男性陣が出てくる。
そして火の確認をする。
これがクスッと笑えるのだ。
それも当然だろう。
こんな素敵なキャンプ場はなかなか無い。
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日が長い北欧の夏。
まだまだ明るい夜7時頃だろうか。
フィヨルドの遠くの方にキラキラと明るい光が見え、こちらへゆっくり近づいてくる。
客船だ。
それも結構豪華。
フィヨルドを巡るツアーか何かだろう。
キャンプ場の前で曲がって右方向へ進んで行った。
そしてまた戻ってきて、もと来た方へ帰って行った。
快適な豪華客船で体験するもよし、フィヨルドを見ながら焚き火をして過ごすもよし。
どんな楽しみ方でも十分に感動を与えてくれる大自然、フィヨルド。
船を見送りながら私はとても誇らしかった。
雨に濡れ、ボロボロの雨具を着て火に当たる自分をなぜか不憫にも思わなかった。
私が思ったこと、それは‘’こちら側の経験が出来て幸せ‘’だった。
豪華客船を否定しているのではないし、いつかそういう旅もしたい。
でも、あの明るい船の中にいたら見えない物がたくさんあるような気がした。
薄暗いフィヨルドでキラキラと光る水面や、雲の隙間から差す神々しい太陽。
炭の匂い、木がはぜる音、雨がテントに当たる音。
それを感じながらここに居られて嬉しいと心から思った。
フィヨルドという、長い年月をかけて出来た大自然の中の一部になることを許されたような気さえしていた。
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私達がなぜこの旅に出たのかは別の記事で書いたが、実は私の‘’いつか絶対行ってみたい所‘’がフィヨルドだったのだ。
海外へ行きたいと子供の頃から漠然とは思っていた。
ハイジを観てスイスに住みたいと思ったり、赤毛のアンを観て、ああいう外国に住みたいと思ったり。
でも、いつか絶対行ってみたい所と聞かれて具体的に名前が出てくるのはフィヨルドだけだった。
あの、怖いくらいの大自然を目の前にしてみたかった。
確かめたかった。
それは、深い谷の田舎に生まれた自分でさえも想像を絶するものだろうことが分かっていたから。
そして本当に辿り着けた。
北欧の地を、自分の足で自転車を漕ぎ、雨に打たれたりなぜか雪山に行ってしまったり、キャンプ場も野宿する場所も無くて途方に暮れたり、そんなこんなしながら、やっと辿り着いた。
‘’この目でフィヨルドを‘’どころか、長い長いフィヨルドに沿って自転車で風を切っていく自分、はたまたフィヨルドでキャンプをする自分。
その感動は想像以上だった。
その感動をさらに深く深く味わわせてくれたのがこのキャンプ場だったのだ。
あの時もし他の道を行っていたらきっと出会うことのなかった場所。
こういう一つ一つの出会いが奇跡的だから、成り行きの旅は最高におもしろい。
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下に見える細ーい道まで、くねくね道を一気に下ります!
この高低差、ミニチュア感、たまりません笑
旅の‘’高低差‘’も醍醐味です。
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