ひろぴょん

言葉って何?

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最近の記事

〈雑記〉病は気から、気は病から

持病が進行している。不如意。毎日が病みとの闘いだ。治る見込があるならまだ希望はあるが、それがない。ただ、今すぐ生命が奪われるような病ではないので、そこは救われているが、やはり辛い。 辛いながらも、末期がんで今実際に緩和ケア病棟にいる友人を思う。モルヒネと強い痛み止めのシールを鎖骨の下に二枚貼り付け、足がパンパンに腫れている彼女の苦しさから比べると、私はまだまだ甘いのだ、と自分に言い聞かせる。 「昭和33年生まれはだめだねえ、もう」 見舞いに行った病室で、私と同い年の彼女が

    • 〈エッセイ〉戦時

      昭和33年生まれの僕が、両親や周りの大人たちから戦争の話を聞いたのはおそらく7歳くらいの頃だったと思う。その時は自分が生まれる20年以上も前の出来事で、随分と遠い過去の出来事のように感じたものだった。 しかし30代、40代、そして60代後半まで生きて来て、恋愛、結婚、子育て、仕事、社会との繋がりの蓄積の上で眺めると、数十年などというのはあっという間なのだと実感するし、それが大人の肌感覚なのだと思う。 南の島々で日本軍が戦死したり餓死したりしたのも、ひめゆりの女学生が崖から

      • 9月いっぱいで仕事を退く 慰留する言葉の数々 「あなたみたいな講師は二度と現れない」 「今の教室があるのはあなたの功績」 「必ずまた私たちと仕事をしてほしい」 丁寧なおだての言葉たち 慇懃無礼とはまさにこのこと だったら講師の待遇を上げろよ 107人目の講師のつぶやき

        • 人類の恥

          イスラエル軍がパレスチナの子供を轢き殺したのだという。パレスチナ人は殲滅せよと、どこまで残酷になれるのだ。腐敗臭を放つシオニズム。選民思想。アウシュビッツに並ぶジェノサイド。ひとつだけちがうのは、奴らは反省などしないということ。神が選んだ神の民だから。 神とはなんだ。 誰が作った? 世界中の分厚い旧約聖書から今、黒い影のような揺らぎが立ち上っているのが見える。

        〈雑記〉病は気から、気は病から

        • 〈エッセイ〉戦時

        • 9月いっぱいで仕事を退く 慰留する言葉の数々 「あなたみたいな講師は二度と現れない」 「今の教室があるのはあなたの功績」 「必ずまた私たちと仕事をしてほしい」 丁寧なおだての言葉たち 慇懃無礼とはまさにこのこと だったら講師の待遇を上げろよ 107人目の講師のつぶやき

          <短編小説> 慟哭のチェロ

          九十二歳になるチェロ奏者、松平清二は夏の饒舌さが苦手であった。豊満な光を放つ積乱雲とその上に見える紺碧の空が目に痛い。密度濃く生い茂る草木と羽虫の群れ。高湿度の空気を裂くかのようにいきなり降り始める雨。再びじりじりと照り付ける太陽と大地からの蒸散、そして陽炎。まるで自然界に行き渡る水の循環が加速度を帯びたようだ。地表から空の高みまですべてにエネルギーが満ちている。清二はそんな夏が嫌いなのだ。 夏は若者の為にある。その身体の中にほとばしる生殖能力と柔軟な骨肉を持ち、夜の街で、

          <短編小説> 慟哭のチェロ

          命拾い

           4月19日の未明、二度目の心筋梗塞で救急搬送された。傘の先端で力強く心臓を押さえつけられているような痛みで、脂汗が出て救急車の中でも唸り続けた。普段毎分八十ほどある心拍数が四十まで落ち、意識はあるものの酸素飽和度も危険域まで下がった。  運ばれたH病院で全裸にされ、陰毛をバリカンで剃られ、鼠蹊部からの緊急カテーテル手術を受けた。そして一時間後には体中に管とセンサーを付けられてICUのベッドに貼り付けられたのだった。 決して上半身を起こしてはならず、バカでかいオムツを履か

          私の趣味

          モールス符号でビートルズのLet it beを表現してみました。

          三島由紀夫に浸る

          三島は「金閣寺」以外、名前を忘れた短編集を1冊読んだことしかなかったので、今回は文庫本を新たに3冊購入した。 件の短編集でかなり印象深く思ったのは、三島由紀夫はある意味、性の求道者でもあったのだという事だったが、写真右上の「音楽」を読み始め、改めてその想いを強くした。 三島由紀夫は楯の会や阿佐ヶ谷での自決など、極右としてのイメージが先に立ち、食指が及ぶことはなかったのだが、この歳になると、右も左も関係なく、激烈な生き方をした人物が何故そのような生のあり様を持つに至ったのか

          三島由紀夫に浸る

          やばい。 持病のせいで倦怠感がものすごく、仕事以外は寝てばかりいる。まるで棺桶に片足を突っ込んだヨレヨレの老人みたいだ。そのうち仕事もままならなくなっちまうのではないだろうか…と不安が過ぎる。おまけに精神状態も万全とは言えず、綱渡りをしているみたいだ。 危ねえなあ…自分。

          やばい。 持病のせいで倦怠感がものすごく、仕事以外は寝てばかりいる。まるで棺桶に片足を突っ込んだヨレヨレの老人みたいだ。そのうち仕事もままならなくなっちまうのではないだろうか…と不安が過ぎる。おまけに精神状態も万全とは言えず、綱渡りをしているみたいだ。 危ねえなあ…自分。

          〈詩〉夜想曲20番を聴きながら

          若かりしころの恋愛たち 思い返すたび 心のひだの深いところ 絶対零度の冷たさが 瘡蓋を剥ぐ 好きだよ 愛しているよ ひらひらとした言葉を吐きながら 好きだったのはその人の顔 愛していたのはその人の身体 決して その人自身ではなかった なぜそんな軽い恋愛をした? なぜ全身全霊でその人の全てを 愛せなかった? ごめん、みんな ほんとにごめんね ほんとに情けないちっぽけな僕でした この痛みを 償いだと思いながら あともう少し生きてみます

          〈詩〉夜想曲20番を聴きながら

          <短編小説> ゲッセマネ

          柳井貢が飼っていた二匹の猫、クシロとメグロを他の猫と一緒に大きな籠に入れ、川に沈めて流したのは高校一年生の佐々木正巳だった。 四十年ほど前、私が中学二年生の秋の出来事だ。人には生きている間にどうしようもなく瞼に焼き付いて離れない光景や思い出がひとつやふたつはあると思うが、あの時の貢の苦しくそして悲しみに歪んだ顔を、私はずっと忘れることができずに今まで生きてきた。 私と貢の家は共に乳牛を三十頭ほど飼育する酪農家で、佐々木正巳の家はその頃すでに百五十頭余の牛を飼う、村では一番

          <短編小説> ゲッセマネ

          〈雑記〉ちょっとだけちょうだいお化け

          まわりを見渡すと 必ずいるんだよな 例えばデートで入ったレストランで 各自にメニューを決め 注文したのが来て食べはじめると 相手が食べてるものを見て 「ひとくちだけ味見させて」と スプーンやフォークでつまんで行く アイスクリームを食べている時も 違うフレーバーのを食べている 僕のアイスクリームを 「そっちのも食べさせて」と プラスチックのスプーンで すくって行く  そんな ちょっとだけちょうだいお化けが わが家にもいる 30年間連れ添ったワイフだ 笑っているから 悪気はな

          〈雑記〉ちょっとだけちょうだいお化け

          Oblivion

          きみの記憶の残渣が 未だにぼくをえぐる その声と眼差しが ふとしたことで 網膜と鼓膜の内によみがえる 忘れようしても ぼくはいつもきみを ひきずっている 忘却は罪でもあり そして救いでもある いずれぼくも 忘れられた星屑のひとつとなり この静寂の天蓋の下で きみを忘れ きみに忘れられる そんな時がくる でもきっと この冷たい痛みは 数千光年離れたところでも 酵母のように降り積り 沈殿した多くの証の中から きっと泡のようによみがえる そう。痛みと悲しみは 永遠なのだよ 永遠

          「愚直」という言葉に憧れる。 何故か。それは今まで自分が愚直に物事に対峙したことがなかったからだ。 どこかいつも醒めていて、人生を舐めてきたような気がするのだ。物事に対しても、人に対しても。眠れずに灯りをつけ、じっとそんなことを考える午前零時過ぎ。なんだか辛いな…

          「愚直」という言葉に憧れる。 何故か。それは今まで自分が愚直に物事に対峙したことがなかったからだ。 どこかいつも醒めていて、人生を舐めてきたような気がするのだ。物事に対しても、人に対しても。眠れずに灯りをつけ、じっとそんなことを考える午前零時過ぎ。なんだか辛いな…

          (エッセイ)空飛ぶ音楽

          飛行機でアメリカへ向かうと、西海岸の主要都市に着くまでにおよそ10時間と少しかかる。飛行機によっては11時間以上かかる時もあるのだが、それは気流や飛行コースの違いによるのかもしれない。   今まで何度かアメリカへ行き、この北太平洋上空での10時間という時の長さと、そのうんざりするほどの退屈さを身体で覚えてしまっている僕にとっては、ひとくちに海外旅行といっても、その長時間の機内での辛い滞在がどうも二の足を踏ませ、わくわくした気持ちは遠のいてしまう事が多い。 ヨーロッパへ飛ぶ場

          (エッセイ)空飛ぶ音楽

          〈エッセイ〉説得力のある話し方をする政治家はやはり信じない方が良い。

          最近はある政党の党首と言われる人たちの話を鵜呑みにして、にわか国粋主義あるいは大和民族主義に傾倒し、嫌中・嫌韓に走る人が多いようだ。それらの党首たちはとても良いことも言っているが、「?」と思うことも言っていることに気が付かない人が多い。 例えばあの太平洋戦争は「欧米列強の支配下におかれたアジア諸国を解放するために日本が動いたのだから、日本は悪くない。日本こそ崇高な国なのだ」という話。あんなのは笠原十九司の「日本軍の治安戦ー日中戦争の実相」を読めば一目瞭然で異なった話だとわか

          〈エッセイ〉説得力のある話し方をする政治家はやはり信じない方が良い。