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1年間の在宅生活を総括してみました

 昨春の緊急事態宣言発令以降、ずっと体調が良くない。いわゆる更年期症状で、今まで月経痛や月経前症候群の辛さとは無縁だったというのに、ここへきてかなりしんどい目に遭っている。とはいえ痛みの度合いは他人様と比べようもないので、もしかすると自分は大げさなのかもしれない。元来痛みというものと無縁だったために、大したことのない辛さも、余計に感じてしまうのか。

 最初の一撃は梅雨に入った頃、右足付け根の関節痛。4月におよそひと月かけて大引越しをやり、重たい荷物も相当運んだから、その影響が出たのだ、筋肉痛に近いものだろうと高を括っていた。がしかし、痛みは日に日に増して、とうとう足を引きずり歩くほどになってしまった。

 不自由を感じだしてからひと月ほど経ち、ようやく整形外科を受診した。腰から下のレントゲン撮影に加えて、年齢的にもそろそろ必要ということなので、初めて骨密度検査も受けた。結果は案の定、問題なし。原因らしい原因も見つからず。ひざ関節の軟骨が減っているものの今のところ異常値ではなく、まあ人並み、治療が必要なレベルではないらしい。ただ、運動をまったくしていないので、有酸素運動や、筋肉強化をしたほうが良いということだった。クリニックに併設のリハビリ施設を勧められ、後日予約を取ったのだが、利用したのは初回の一度きり。ストレッチとスクワットなら自分でできると素人判断した。このコロナ禍で、わざわざトレーナーと体を密着させてまで教わる重要性を感じなかったのだ。

 そして更年期症状を経験された先輩方の言葉通り、ある日気づくと、右脚付け根の関節痛は嘘のように消えていた。やった!これで解放された!と喜んだのもつかの間、次なる試練はその一月後、今度は左足小指の付け根に、これまたある日突然、激痛が走った。ぶつけたとか転んだとか、何か物を落としたわけでもなく、ある朝起きてベッドから脚を降ろした瞬間から痛かった。これが右脚付け根の関節痛よりもむしろ厄介で、なにしろ地面を踏みしめることができないため、本当に歩行が困難なのだ。よく見ると小指の付け根の骨が出っ張って、爪の先が親指側に向かってカーブしている。え? 昔からこんな感じだったっけ? 親指側は長年、両足とも外反母趾だから、親指の付け根の骨が出っ張っているのは見慣れていたが、小指側はノーチェックだった。

 調べてみると、外反母趾に対してこれを内反小趾(ないはんしょうし)という。おもな原因は長年の歩き方の癖によるもので、歩行時の足運び、重心のかけ方が適切でないために、少しずつ骨格を歪めたらしい。まるで海底のプレートに蓄積された重力がある日限界値を迎えて地盤を決壊させるように、劇痛をもたらしたというわけだ。

 思い返せばここ数年、植物療法士・池田明子先生のスクールや、他クライアントの情報誌の取材で、足をケアすることの重要性について知る機会があった。中高年が患いがちな足のトラブルと原因、対策など、調べに調べ、専門家から学び、鼻を膨らませて原稿にした。

 人は結局のところ自分が痛い思いをして初めて、本当の意味でものを知るのだ。私は身をもって知った。日頃から一歩一歩を丁寧にしっかりと、足裏全体で意識的に地面を捕えて歩くことの大切さを。見目麗しい履物は眺めるには良いが、決して長く付き合うものじゃない。百害あって一利なしだ。その場しのぎで地に足のつかない浮ついた歩き方は、後に何も残しやしない。痛みと後悔以外は。

 なんだ結局のところ、歩くことと人生は同じじゃないか。以上が緊急事態なこの1年の総括だ。


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