見出し画像

#50 しるこサンドinココア

拘置所は法務省の管轄、留置場は警察の管轄。
同じような二つの施設ですが、多くの点で異なっていました。
留置場があまりに過酷だったためか、多少の自由度の広がりに喜ぶのも束の間。
よく考えれば、推定無罪の状態。
今までいかに行動が制限され、与えられた自由がいかにわずかであるかを痛感しました。

>>>>>>>>>>

留置場と比較して、いくつか自由になった点がありました。
まずは、書籍や机の環境。
本は棚に乗る分だけ部屋の中に入れることができ、机を使って物を書くことができました。
(本は3冊、机は無しの留置場とは比較にならならない快適さではないか!)
と内心喜んだ自分がいました。

そして服装。
私は母の差し入れのジャージを着ていましたが、ここでは自分を傷つけるような可能性のあるものを除けば、自由な服装ができました。
気になる食事は、給食のように温かい食事。ご飯(麦飯)、主菜、副菜、汁物等です。大味でしたがとても美味しく感じる食事でした。

ここの食事は刑務所受刑者の人たちが作り、配膳をしているとのこと。時にはアイスクリームなどのデザートが提供されるような日もあり、食事は圧倒的に改善されました。なんせ、以前は朝昼晩と冷えた弁当だったわけですから。

そのほか注文メニューも、全てにおいて選択肢が広がり、少し自由を手に入れた気になりました。特に食べ物は、数種類のパンの他にもカップラーメン、生のフルーツや缶詰フルーツがパウチとなったもの、お菓子の種類も多数。和菓子、スナック、クッキー、飴やキャラメルまで色々と購入できました。誰が買うのだろうと思うほどのメニューがびっしりと書かれたA4の購入用紙が、部屋に用意されていました。

私は普段から間食をしませんし、食欲も回復していませんでしたが、40日ぶりに食べる物に少しだけ自由が与えられたので、物は試しだと色々購入してみました。
中でも印象的だったのは、しるこサンドとフルーツ。
フルーツはフルーツミックスも選択肢にありましたが普通のフルーツを頼みました。てっきりカットフルーツをイメージしていましたが、ここは拘置所、まるごとのフルーツが届きました。ナイフもない中、切ったり皮をむいたりするのは一苦労でした。
しるこサンドは意外な用法で定番になりました。

注文メニューでは、コーヒーや紅茶、ココアなどのインスタント飲料が購入出来ました。そして、1日2回、希望者にはお湯が与えられ、自分で作って飲みます。
試しにココアを飲んでみると、砂糖の入っていないタイプ。何とか甘さを手に入れようとして試しにしるこサンドを浸して食べるメニューを開発しました。
次第に私の唯一の楽しみが、この”しるこサンド in ココア”となりました。少し浸して食べるのも美味しいのですが、溶けてしまうくらい我慢してから飲むようにして食べると、尚、美味しいのです。
こんなことが唯一の楽しみになるくらい、自由は制限されていました。

さて、ここでも運動の時間があります。狭い閉ざされた場所でしたが、名古屋を象徴する景色を見ることができました。せっかくなので体を動かそうと思い、腕立てやスクワット、体感トレーニングなど、筋トレを行うようにしました。

2点だけ、留置場の方がマシだと思えたものもありました。
まずは、お風呂。
お風呂の時間は週に2回だったと記憶しています。唯一この時だけ、他の人と空間を共にしました。ただ、言葉を交わすことはなく、留置場と同じように制限時間内に身体を洗い、浴槽に入りました。浴槽は大風呂ではなく、一人用の浴槽がいくつも置いてあり、一人ずつ足をかがめてお湯に浸かるという方法で、お風呂の環境は留置場のほうが良かった気がします。

次に面会。
留置場では、曜日の違いを感じることはほとんどありませんでしたが、拘置所の土日は静かでした。拘置所では面会の時間が、原則として平日の9時から17時。弁護士との面会だけは、特別に必要な場合には土日でも対応してもらえるようでしたが、弁護士との面会も原則としては平日の日中でした。
ちなみに留置場では、弁護士であれば24時間どの時間でも面会は可能です。

留置場とのあまりの違いに自由を手に入れた錯覚を持ちかけましたが、最悪な状況は何ら変わっていません。自由の無い勾留と接見禁止は続きます。繰り返しですが、本来は裁判で有罪が確定するまでは"推定無罪の原則"です。他人の自由を奪いうという権力の濫用は決して許されるべきではありません。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?