エッセイ 川土手の生き物たち 2024年9月9日
利根川の支流、渡良瀬川、そのの支流である思川のキャンプ場で数泊過ごしているが、その主な目的は天気の回復待ちである。なので、日中はすることもなくブラブラ散歩したり、暑いのでテントサイトでじっとしている。
テントサイトでぼんやりしていると、いくつかの生き物たちと親しくなった。
ハグロトンボ
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%82%B0%E3%83%AD%E3%83%88%E3%83%B3%E3%83%9C
羽化後、若い個体は水辺を離れて林の中で生活するようだが、私がテントを張っていた場所もハリエンジュ、コナラ、シラカシなどが生える河畔林であった。
8時頃から姿を現し始め、林床にまんべんなく止まっている。はじめは何をしているのかわからなかったが、よく観察していると小さな飛ぶ昆虫を捕まえては着地することの繰り返しである。はじめは縄張りを持っているのかと思ったが、エサの性質上、縄張りの持ちようがないようだ。ただ、あちこちに散在して止まっている。
飛び立ってはすぐに着地し、ゆっくりと羽を広げては閉じる。しばらくすると飛び立ってまた同じことの繰り返しである。たまに小さな昆虫を捕まえている。ゆっくりとした羽根の開閉は枯葉に見立てて鳥に対しての擬態なのか、またはメタリック色をしているので小昆虫の餌に見立てているのかもしれない。私はどちらにも思えないが。
成熟すると再び水辺に戻ってメス獲得のためにオスは縄張りを持つようだ。
東京都では絶滅危惧種に指定されているようだ。
ヌマガエル
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8C%E3%83%9E%E3%82%AC%E3%82%A8%E3%83%AB
早朝から日暮れまでずっと見かける、体長3〜4cmほどの小さなカエルである。保護色でわざと土色をしていると思ったが、そうではないようだ。かなり乾いたキャンプサイトの木陰の地面をあちこちで跳んでいる。3ジャンプほどしてはしばらくじっとしている。
後ろから近づくと逃げていくのだけれど、向こうから近づいてきた個体に正面から私の手を伸ばすと逃げない。そのまま顔まで触らせてくれる。もしかしたら腕を蛇と勘違いしているのかもしれない。ある個体は私が顔を触ったあと、しきりに手で顔を拭っていた。
ヤブ蚊のせいでカエルが生息するような環境ではゆっくりすることができないが、こうやってよく見ると愛嬌がある生き物である。置物などで親しまれている理由もわかるような気がする。
オオケンモン
https://www.imokatsu.com/imo-ookenmon.htm
ヤガ科のガであるが、私が見かけたのは多分終齢幼虫である。体長は5〜6cmある大きな毛虫である。毒はないようだが、触る気にはなれない。
マメ科も食草なので、ハリエンジュにいたのだと思う。この大きな毛虫が日中、地面をよく歩いているのである。繭を作るために移動しているのだと思うが、それにしても数が多いのだ。そして人を全く気にしない。テントに登ったり、私の足から登ろうとするのである。オオケンモンの天敵は鳥であって、大型動物ではないのだろう。だから人間を避けるようにプログラムされていない。もう全く怖がらない。
しかも移動速度が早いのである。テントを登っているなと思っていると、気がつけば反対側の地面をもう歩いているのである。この黄色と黒の毛は毒々しくて触る気になれない。これも擬態なのであろう。
以前、擬態という題のブログを書いて人間の擬態を揶揄したが、こうやって見てみると多くの生き物は擬態を利用しているのかもしれない。捕食者から食べられないように、または捕食するために。
自然界でいくらでも食料があるという状況はない。もし余分な食料があればすぐに個体数が増えて、食料が限界に達してしまう。そして仲間よりもより生き残った方が、仲間よりたくさん食べた方が、より遺伝子を残せるのだから、擬態は非常に有効な手段でなのだ。ただ人の擬態は、対象が捕食者や獲物ではなく、同じ人間だということである。捕食者や 獲物が人間だという可能性もあるが。
以上なわけで、このキャンプ場では楽しく過ごすことができた。