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Contest(闘)〜スピード違反でアメリカの裁判所に出廷した②

有罪。
いろいろな下調べ、相談、逡巡もむなしく、私の異議申し立てはあっけなく退けられてしまった。違反切符を切られた時ほどでは無かったが、ダメ元だとしてもやはり落ち込んだ。業者を使用したのが適切だったかはわからない。これがビジネスとして成り立っていることを鑑みると、違反が取り消されるケースもあるのだろう。私が自分で書面を作成していても結果は同じだったか。

ここから先は二つに一つ。支払った保釈金を罰金として納め、10年間この違反レコードと共に生きる。あるいは裁判所に出廷し、Contestする(無罪を勝ち取るために闘う)。

裁判では、警察官本人も法廷で主張し、裁判官が双方の言い分や証拠を吟味し判決を下す。切符を切られた時の状況を細かくメモしていたのと違反内容に納得がいっていなかったため、私はContestすることにした。判決が覆らなくとも私に切符を切った警官から直接証拠を提示された上での判決なら納得できると思った。出廷する意思を書面で裁判所に伝え、裁判所からの出廷の指示を待った。

1カ月後に裁判所から呼び出し状を受け取った。しかし、指定の出廷日時は私が参加できない日程だった。その場合は裁判を延期できるという選択肢があった。厳しいのか優しいのかわからないが、立場の弱いマイノリティが異議申し立てを行う権利が保障されていることに有り難みを実感した。

「出張が決まっており、ホテルを予約済だから」。裁判所のHPに書いてあった書面作成手引きの例文をほぼそのまま使った。裁判出廷よりホテル予約を優先できるんだ。軽いカルチャーショックを受けた。あっさり出廷延期は認められ、7月末に出廷が決まった。今度は予定も無く、出廷可能だった。

出廷にあたっての注意書きも同封されていた。サンダル不可、キャップ着用不可などなど。とにかく礼儀正しく振舞ってくださいとのお達しだった。私の住む街ではラフな服装が多くの場所で標準的で、私もそに慣れきっている。流石にそうだよな。ちょっと可笑しくなり、裁判への緊張が少し和らいだ。

そして当日。街の裁判所へ向かう。普通に暮らしている分には用が無い場所だが、まさか自分が行くことになるとは。裁判所からのお達し通り、かなり久々にちゃんとした格好をした。かなりカジュアルな環境で仕事をしているせいなのか、アメリカの食事で太ったせいなのか、服装が窮屈で場違いに感じた。

出廷時間の30分前に裁判所へ到着。金属探知機とボディチェックを済ませ館内へ。法廷の前のフロアで待つように指示され、自分の番が呼ばれるのを待つ。私以外に待っている人はいなさそうだ。朝一だったので職員の人たちが出勤してくる。職員っぽくない人も入館してくる。私を捕まえたっぽい警察らしき人はまだ見当たらない。

観察していたら”This is My Tank Top”と大きくプリントされたタンクトップを着たおじいさんが入り口でボディチェックを受けているのが見えた。短パンだった。サンダルでは無かったと思う。おー、これで入れるのか?法廷を侮辱することにならないのだろうか?色んな人がいるなあ。私の緊張はまた少し緩んだ。

そのおじいさんがセキュリティを通過できたかを見届ける直前、係官が法廷に入るよう私を呼んだ。人生初の法廷では別の人の裁判が進行中だった。一気に緊張が増した。

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