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「#折田楓」を「#折れた小枝」に…してはならない
兵庫県知事への返り咲きを果たした斎藤元彦さんのことをどうにも好きになれない。それは、例えば、良くも悪くも時間だけは長い記者会見の場での彼が、一瞬でも破顔の笑顔を見せたり、反対に、どうしようもない怒りに任せて声を荒げたりすることがまあない、ということもある。一言でいえば、煮ても焼いても食えないというか、とりつく島がないというか……すなわち、人間味のかけらも感じられないのである。
もっとも、ソーシャルメディア(SNS)を駆使した現地・兵庫でのプロ斎藤のうねりは尋常ならざるものがあったのも事実。投票箱が開いてみれば、(NHK以外)テレビ各局は、かなり早い段階で斎藤さんに「当確」を次々と点けたのだった。
「あー、なんかむしゃくしゃするう」
と腐っていた頃合いで、西宮市のPR会社社長・折田楓さんのnoteへの書き込み(「兵庫県知事選挙における戦略的広報:「#さいとう元知事がんばれ」を「#さいとう元彦知事がんばれ」に」)に端を発した、斎藤さん・折田さん双方の公職選挙法違反疑惑騒動が勃発。その後、元検察官の郷原信郎弁護士と神戸学院大学の上脇博之教授によって刑事告訴されるに至り、個人的には大いに溜飲を下げた。
ただ、少し時間が経ち、僕自身も冷静さを取り戻してみると、今回の一連の騒動で、まだ30代前半の、起業家精神溢れる折田楓さんが(結果として)提起した問題の社会的意味は小さくなかった。
ご本人も件のnoteで、いつか映画にならないかな、と無邪気に書いておられるが、実際、「#折田楓」という現象は、今後、ネトフリを通じて世界配信され得る可能性を大いに秘めていると見る。
もちろん、そのタイミングはいまではない。今回の騒動を起点として、彼女が一枚も二枚も脱皮して、ぐうの音も出ないほど世間が彼女の才能に太鼓判を押す云十年先のこととなるだろう。
それでも、今回の一連の騒動で、彼女はすでに少なくとも圧倒的な知名度を得た。「悪名は無名に勝る」というあれである。しかも、その「悪名」とて、今後の展開如何によっては、最終的には、自浄作用の発露というか、内部告発者的な評価を得るところとなり、「選挙とソーシャルメディア」の関係性の転換点を自ら演出もし、体現もした当事者として、論壇の寵児的な歓迎を受けないとも限らない(こちらは、「ネトフリ世界配信」よりずっと早期に実現し得る)。
当のnoteの書き込みは、たびたびの「推敲」(世に言う「改竄」)を経て、いまも検索可能な状態にあるが、そのオリジナルは、あれだけの分量、僅かな時間で一気呵成に書かれもし、アップロードもされたことを考えると、筆力というか、発信力というか……そのスキルは頭抜けている。その若さと相まって、いずれメディアは彼女を放ってはおかないだろう。
ただし、折田楓さんがその持てる能力を如何なく発揮するためには、先に精算すべきことが大きくは2つある。
ひとつは、斎藤元彦さんとの共依存関係の精算。そして、いまひとつは、今回の県知事選で折田さん、ないしは、折田さんの会社が果たした役務に対する——先払い金70万余以外の——「残金」の精算に他ならない。
こうなったからには、もちろん、斎藤さんの側にも折田さんの側にも買収・被買収の関係を認めたくないという共依存の関係にあることは容易に理解する。
ただ、折田楓にしてみれば、今回のことはもっぱら法律的な知識の欠如に起因するものであり、確信犯というよりは「うっかり犯」なのである。法律を知らなかった、はなんら言い訳にはならないが、それにしても不起訴や情状酌量の余地は大いにあると踏む。
対する斎藤元彦は、初めての選挙でもなく、しかも選挙全般を所管する総務省のキャリア官僚だったのだ。仮に告訴が受理されたならば、法廷の場で、あるいはマスコミに対しても、折田楓さんはしっかりとここまでの自身の役割の主体性や裁量権について詳らかにして欲しい。
そのためには、まずは斎藤さん自身や彼の代理人弁護士、あるいはチンピラ級の取り巻き地方議員らとのホットラインを断ち切ることから始めよう。繋がるべきは、県警や検察の担当者であり、マスコミであり、ひいては折田楓さんの行く末を固唾を飲んで注視する市民一人ひとりである。
そんな状況の中で、強く推奨したいのは、noteの記事の更新。あ、いや、直近の記事の再々「推敲」、すなわち再々「改竄」ではない。新たなタイトルの下、今回の事の顛末に係る新たな記事を「書き下ろす」ということ。あなたの文章力をもってすれば、構想1日、脱稿1日、さらにアップロード5秒仕事ではなかろうか。それこそが、問題発覚以降、向こう(=斎藤元彦氏およびその代理人弁護士)が勝手に抱きついてきたのを、完膚なきまでに突き放すこと、すなわち、身に覚えない共依存関係からの精算なのである。
加えて、このままではタダ働きも同然。ソーシャルメディア戦略を「仕事」として請け負った以上、「着手金70万円余」ではとてもとても割に合わないではないか。残債を堂々と請求し、きっちり払い込みを迫ろう。
「金の切れ目は縁の切れ目」
とは折田楓さんと斎藤元彦さんのためにある言葉と心得る。
「#折田楓」を「#折れた小枝」に、はダメダメ。「#折田楓」が「#オレだ! 楓だ!」と胸を張れる日が来ることを心から待ち侘びる。