懸案の地下室の改修工事がやっと決着をみた。 8月末の超ノロノロ台風(台風10号)で被害に遭った家々の応急対応に人手を取られ、職人衆がなかなか我が家の「地下室」にはもぐってくれなかったのである。結果、着工から完成まで優に2ヶ月を要した計算だ。 そもそもは前の持ち主が、山の斜面にこの家を建てるに際して、建物の基礎部分の一部にワインセラーをしつらえたのが事の発端。 傾斜地ゆえに、正面の壁からはむき出しの岩盤がせり出しているわ、その両側の壁も堅牢な鉄筋コンクリートの「基礎」その
YouTubeのニュースチャンネル「アークタイムズ」にゲスト出演した時事通信社の山田惠資さんが、今回の衆院選の選挙結果で苦境に立たされている石破茂首相のことで興味深いエピソードを紹介しておられた。 「勉強家の石破さん、スピーチ原稿は自分の手できっちりと書くタイプ。なので(原稿書きに時間をとられて)どうしても人付き合いの方が疎かになりがち」 というのである。立候補者の当落が刻一刻と伝えられ、自民党の単独過半数はおろか、与党全体での過半数の確保も厳しいことが段々に明らかになる
自身、英語ネイティブではないからかもしれないが、婉曲な言い回しという点では、英語は日本語と同じか、それ以上に洗練された言語だな、と感じ入ることが多い。 例えば、JALの搭乗ゲートで聞こえて来る「事前改札(最優先搭乗)」を呼びかける英語版のアナウンス。「最優先」の対象者のなかに、expecting mothers も含まれている。直訳すれば「母親になることを期待している人々」、あるいは、「母親になることを楽しみにしている人々」のことで、すなわち「妊婦さん」。これ、日本語版だと
結婚式の来賓挨拶の定番フレーズには、コテコテのオヤジギャグが少なくないのですが、なかにはグッと来るのもあるにはあるわけで。例えば、「コツコツが勝つコツ」なんかが僕のお気に入りです。年若い大学院生や、還暦も近い社会人院生に、 「どうすれば大学教授になれますか?」 と真顔で訊かれたようなときに、しかし、僕は、 「コツコツが勝つコツ!」 とは決して言いません。なんとなれば、そもそも質問して来る学生の多くが日々コツコツやっていることは百も承知ですし、でもその先に「研究者」にな
先の自民党総裁選で、「選択的夫婦別姓制度」を真っ先に議論の俎上に載せたのは、小泉進次郎元環境相でした。今回の選挙ではネット民からけちょんけちょんに叩かれた挙句、決戦投票にも残れずじまいだったいいとこなしの進次郎候補にとって、この問題提起は数少ないクリーンヒットでありました。結婚後も希望に応じて夫婦それぞれが旧姓を継続使用することに法的根拠を与えよう、というものです。 もっとも、本テーマの「大学教員による旧姓使用」などがその最たるものですが、ここ日本では通称名使用はずっと以前
午後、初めてお会いする出版社の編集者とJR御茶ノ水駅近くの喫茶店で待ち合わせ。 先方から予め提示されたお店の候補は、 ①喫茶穂高 ②星乃珈琲店 の二択だったのだが、僕は脊髄反射的に、 「では、喫茶穂高でお会いしましょう」 と即メールにお返事した。星乃珈琲店は同じ系列の別の店なら何度か客となったことがあるし、何より「喫茶穂高」の語感が醸し出す、えも言えない懐古趣味に強く惹かれたのだった。 しかして、喫茶穂高は懐古趣味……ならぬ山岳趣味? 創業者が根っからの山好き、(
他人様の家屋を勝手に撮影した上に、その写真を無断で載せるのはさすがに僕も気が引けるが、そこを押しても今日はそうしたい気分の理由が2つある。 ひとつには、もはやそのお宅がこの世に存在しないこと。やっと散歩に気持ちの良い季節になって、何ヶ月ぶりかに井の頭公園のその一画を歩いてみれば、その家はものの見事に取り壊された後で、跡地は黒々とした防草シートで覆われているではないか。あまりにも突然の出来事で、正直、いまもまだ戸惑っている。 また、ひとつには、井の頭公園の敷地に突き出した、
えーと……今日は男もすなる「香水」の話をば少々。 実は、今日こそはロクシタン記念日。27、8の頃から、四捨五入すれば40年使い続けて来たエルメスのオーデコロン「オードランジュ・ヴェルト」に別れを告げ、吉祥寺の東急百貨店でロクシタンの「セドラ」なるオードトワレを初めて買った。こうして、noteする最中も、未だ慣れない自分の匂いに……というか、セドラな香りに包まれている。 そもそもは、この先何十年生きるか分からないが、一生エルメスと添い遂げるつもりでいた。 初めの1本は、結
おめでたい話ではあるのですが、耳に届くとなんかモヤモヤすることのひとつに、同僚教員や他大学の先生の「元ゼミ生との結婚」があります。 決して多くはないのですが、何年かに一度、そんな話を直接、間接に聞くたび、結果オーライと言えばそれまでですが、下手すると訴訟沙汰にもなりかねない、かなり際どい恋愛であり、危うい結婚であるなあ、と思うのです。 そもそも、「大学教授の結婚」は大きくは3種類、というのが僕の見立てです。すなわち、 ①論壇の恋……からの結婚 ②縁談の恋……からの結婚
もうずいぶんと昔の話になりますが、ほぼ趣味で通っていた大学院の先生(すでに鬼籍に入られた政治学者の新藤宗幸先生)から、ある日突然ケータイにお電話をいただきました。 「島根と札幌の2つの大学からあんたに興味があると言ってきてるけど、もちろん、問題ないよな?」 この「問題ないよな?」が、いずれの大学かで採用が本決まりとなったようなときも、東京を離れることに(家族も含めて)異存はないよな、の意であること、僕にもすぐ理解できました。なので、「ええ、もちろん」とだけ答えれば良いもの
夏はすっかり過去の遠い記憶となったここ札幌の昼下がり、もうだいぶ昔のゼミ生たちと久しぶりに六花亭のカフェに集う。 うち1人は大学を卒業とほぼ同時に、親の家業(不動産業やレンタカー事業)を継いだ女性。その後、大学で僕が主催した市民向けのセミナーなどにもちょくちょく顔を出してくれていたので、何年かに一度、会ってはいたのだ。が、プライベートな生活を尋ねることもなく、ただ単に、見るからに羽振り良さそうだな、と勝手に思い込んでいた。 それが、訊けば、目下、先代の社長、すなわち彼女の
自民党総裁選の立候補者9名による公開討論の場で、小泉進次郎候補は、拉致問題に係る北朝鮮対応を問われ、概略、 「(金正恩とは)お互い同世代ですし。親同士も会ってますので」 と予想の斜め上をいく回答をして、方々で失笑を買っている。 進次郎が総理大臣なら日本オワタ、を心から憂う者の一人として僕は、いかにも進次郎らしい痛快な返し! とむしろ喜んでいるくらいだが、果たして当の本人は(痛快ならぬ)痛恨のミスとの理解でいてくれるだろうか。考えれば考えるほど暗澹たる気持ちになる。 こ
ルクセンブルグに住む知人のフランス人から写真付きでLINEが届く。なんでもクラシックカー・レースに参加(参戦?)したとのこと。年齢は彼の方が10歳近く上かと思う。完走したクルマをバックに撮った破顔の笑顔が眩しい。 翻って、僕はといえば、緑内障を悪くして、運転免許をみすみす失効させたのが3年前? 4年前? 妻とクルマで出かけるたびに助手席側に周り込むこともすっかり板についた。あれほど機械音痴だった妻は妻で、いまではナビもすいすい独りでセットできている。必要は発明の母……ならぬ
もう半世紀近くも前の話になるが、大学進学で上京してから2年や3年は郷里の博多に帰らずにいた。お盆や正月の帰省ラッシュが苦手で……というか怖くて、東京にとどまり続けたということもあるが、正直、「物語を次の章に進めたい」と強く願った。高校までの18年で、「第1章 博多篇」は十分堪能したし、筋書きもだいぶ冗漫になっていた。 それが、ちょっとした出来心で博多に帰省してしまったのが運の尽き。天神を一人ほっつき歩いていたら、遠くから僕に向かって突進してくる一人の男がいる。男が十分に近づ
自民党総裁選にラスボス風にイキって出馬表明した小泉進次郎が、またとんでもないことを言い出した。解雇規制の見直し? 撤廃? すなわち、企業側の一方的な事情、裁量で従業員をばんばんクビにできるようにしようというもの。小泉パパに始まる、悪夢の新自由主義劇場の第二幕かよ……である、まったく。 アメリカ映画——とりわけコメディ——でお馴染みの、ある朝出社したら、上司に開口一番、 "You’re fired. " (「お前はクビだ」) と切り出され、抗議するでもなく、そそくさと私物
例えば、40年近く前の20代後半、アメリカに留学した僕が、当時の感覚のまま、いままたアメリカ留学を思い立ったとしよう。現下の円安、アメリカの極端なインフレ、日米の賃金格差などなど、今回ばかりは留学に二の足を踏むネガティブ材料が揃い過ぎていてとても決断できそうにない。 要は、「プラザ合意」(1985年)後、円がみるみる強くなり、かつ世の中もバブル経済の絶頂に向かおうかというアゲアゲなときに留学適齢期を迎えた僕はラッキーで、かたやそんな好機をすっかり逃したかのみなさん、残念でし