『感謝を伝えたい人への手紙』〜妻への手紙📩〜
人気noterのとらねこさん主催
『文豪へのいざない』の参加作品です。
テーマは『感謝を伝えたい人への手紙』✉️
それでは、さっそくいってみましょー
『妻への手紙📩』
〜君のおかげで人間になれた〜
白状するけど、僕は薄情なヤツでした。
″薄情″とはよく言ったもんで、
僕は感情というものが″薄っぺら″で、
泣いたり、怒ったりしている人を見ても、
雲を眺めるような冷めた目で見ていた。
言い訳になるけど、幼い頃はひょうきん者で、
皆を笑わせることが好きな子だったらしい。
それが暗転したのは、小学生の後半
きっかけは、クラス紹介みたいな、
学校内の放送部が主催の撮影で、
何か面白いことしようと、僕が何か、
目立とうとするあまり、それが反感を買い。
絵に描いたようなイジメが始まった。
最初は靴を隠された。
椅子に画鋲を置かれた。
無視されて、からかわれ、
クラスの運動会では、
僕が走るだけで、ヤジがとんだ。
それから、中学生、高校と、進学したけど
小学生の頃のイジメから学び、
目立たないように生きてきた。
あの優しそうな人も、ある日とつぜん
手のひらをかえしたようにイジメる。
すべての人が疑わしく、
周りの人すべてが演者のように、
作り物の世界に見えた。
社会人になり、大人になってもその延長で、
どんなに仲良くなってもどこか冷めていた。
そうして、二十代、三十代、四十代、
44歳のある夏の日
このまま一人で生きて行こうかと思った。
でも、四捨五入すると五十代になる前に、
ジタバタしたくなり、結婚相談所に登録した。
とにかく、3ヶ月だけ活動して、ダメならあきらめようと決めて、6月と7月の週末は、毎週お見合いみたいなことをしていた。
多い時は土日に、二人会うくらいの勢いで、
土曜日に一人、日曜日に一人、
会ってはすぐに、相談所経由で、
お断りの連絡をもらった。
僕のほうからお願いし、断られると、
さすがにだんだんと自信が無くなった。
そりゃそうだ、
こんな機械的に、会ってたら、
相手にもそれは伝わるだろうな‥
そして、七人目に断られた時、
こりゃダメだなと思い、7月末に退会するつもりで、最後の最後7月30日に、君に会った。
そして、結婚に至ったわけだけど、それからが大変だった。
取り繕っていたけど、すぐに薄情な性格は表に出てしまった。
それでも、君は僕を叱り、真っ正面から対峙してくれた。
君ってこういうところ、おかしいよ
こういうふうに見られるよ
こうしたら、いいんじゃない?
結婚して、一年、二年、三年‥
辛いことも、悲しいことも、
たくさん乗り越えて、
六年目の夏が過ぎて、秋になった。
今は、3歳の息子を間に挟んで、君と手を繋ぎ、心の底から笑える日々を過ごしている。
もう、感謝しかない。
このキモチをどう言葉にしていいのかわからない。
とにかく、心の底から感謝のキモチを伝えたい。
本当にありがとう。
君のおかげで人間になれた。
(おわり)